75%の女性が、母親になってから「自分が見えなくなったように感じた」調査で明らかに

母親同士のSNSアプリ調査から、多くの女性が妊娠や出産を経験後に「見えなくなっている」「評価されていない」と感じていることがわかりました
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イギリス発のママ友アプリ「ピーナッツ」が実施した調査で、母親経験者の75%が親になってから自分が見えない存在になったように感じたことがある、と回答した。

また、母親の役割について「評価されていない、認識されていない、見られていない」と感じた割合は94%にものぼった。

多くの母親にとって、これは驚きではないかもしれない。周りの友人や家族は、善意から子どもの成長について尋ねるものの、母親自身に関心を示されることはほとんどない。育児への気遣いから、誘いもなくなる。

女性が育児のほぼ全般を担っている場合は、精神的な負担はさらに大きくなる。

家庭での労働には、洗濯や料理、掃除、生活管理に加え、買い物リストの作成や赤ちゃんの予防接種スケジュール管理、家族それぞれにあわせた献立作り、車検のスケジュール管理、子どもの病気や発達について調べることなど、多岐にわたる見えない労働も含まれる。

1日中手が離せない子育てとフルタイムの家事で、母親が自分のことを後回しにせざるをえない場合も多い。

見えない存在だと感じることで受ける影響

「見えない存在だ」という感覚がもたらす影響は、広範囲に及ぶ。中でも、メンタルヘルスとウェルビーイングの面で受ける影響は大きい。

調査に回答した3600人の女性のうち、「見えない存在だ」と感じた結果、不安を経験したことのある母親は86%、ストレスや燃え尽きを経験した人は82%、孤独や孤立を感じたのは80%、うつ病経験者は55%だった。

ある母親は「赤ちゃん同伴だと思われているので、社交的なイベントには呼ばれません。もしくは、夫だけが招待されて、私は赤ちゃんの面倒を見なければいけないだろうから来なくもいいよ言われます」と明かしている。

また、「専業主婦は楽」という思い込みが、自分の存在を見えなくさせていると感じている人もいた。

「一日中子どもの面倒を見ながら、昼寝や用事、食事、家事を管理しなければなりません。肉体的、精神的にも圧倒されるような負担なのに、誰も真剣に受け止めてくれないのです」

見えない存在と感じさせる要因

母親たちを「見えない存在」と感じさせる要因は何なのだろうか。調査に答えた女性たちが挙げた理由の一部を紹介しよう。

・家庭内での不公平な役割分担
・キャリアと子育て両立の難しさ
・家族、同僚、他人からの共感や理解の欠如
・医療やメンタルヘルス面での支援不足
・アイデンティティや自立を主張することの難しさ
・流産の痛みを隠さなければならないこと
・医療や教育機関、メディアなどから受けるプレッシャー

出産後に自分のアイデンティティが母親だけに絞られたと感じた女性は93%。また94%が、家族やパートナー、仕事、その他のことのために、自分を後回しにするよう期待されていると感じたと答えている。

パートナーや家族からのサポート不足に加えて、出産後に医療制度からのサポートが不足していると感じたのは46%で、社会でサポートする制度が今より必要と答えたのは70%だった。

見えない存在になるとはどのような感覚か

見えない存在になるとはどのような感覚なのだろうか。調査参加者は次のような気持ちをシェアしている。

・産後12週間、透明人間になったように感じていました。それまでは自分の世話をしていたのに、急に赤ちゃんを見なければならなくなるというのは、とんでもない変化です。不安との闘いで地獄でした

・「母親をする時には仕事がないように、働く時には子どもがいないかのようにやらねばならない」と感じています。「自分は十分やれていない」という気持ちと常に向き合っています

・生後3カ月の子どもを抱いていると「次の子はいつ?」と聞かれます。私は赤ちゃんを産む機械ではなく、一人の人間だと知ってますよね?と聞きたい

・昇進した時に妊娠を秘密にしなければなりませんでした。職場にバレた後は、チームミーティングから外され、仕事ができないかのような扱いを受けました。上司からは辞めたほうがいいとまで言われました

私たちにできることは?

女性がこのように感じるのは、家族や友人、医療機関などからのサポート不足に加えて、ジェンダー不平等が大きな役割を果たしているようだ。

女性たちは、この問題に対処するために「柔軟で家族が働きやすい職場」「すべての親が長期の育休を平等に取れるようにすること」「子育ての平等な分担」「すべてのトイレへのおむつ交換代設置」などが必要だとしている。

心理学者のレイチェル・ゴールドマン氏は、自分が見えなくなったかのように感じる問題について「多くの人が直面する厳しい現実です。親になるという長い旅路は医療機関に頻繁に通うことから始まりますが、子どもが生まれた後に生じるギャップから、重要な時期に見捨てられたような感覚に陥ります」と話す。

「大きな疲労感とストレスに悩まされているにも関わらず、医療機関を訪れても診察は慌ただしく、女性たちが抱えている問題に十分に対処する時間はありません。医療だけの問題ではなく、社会が変わる必要があります」

ゴールドマン氏は、変化を起こすために周りの人たちは「大袈裟な意思表示をする必要はない」とも述べている。

「『元気ですか』とか『あなたのことを気にかけています』 と心を込めて伝えることで、相手が重要な存在なんだという認識を示せます」

「思いやりのある会話のような小さな変化や行動が、大きな影響を与えることもあります。この問題を認識し対処することで、母親を真に支援するための社会基盤を再構築できます」

ハフポストUK版の記事を翻訳・編集しました。