私の壁見えてますか
2019年12月10日 15時12分 JST | 更新 2019年12月10日 16時05分 JST

恋する10代LGBTに向けたアニメ動画が“世界公開”へ 「あんな辛い思い、ない方が良かった。けど、あって良かった」

世界人権デーの12月10日に「やる気あり美」が伝えたいこと。そして、世界に投げかけたい問い。

もし自分がLGBTQ当事者だったら、クラスルームでの「恋愛成就率」はやっぱり落ちてしまうだろうか。

一方で、「好きになったあの人が、自分のことを好きじゃなかもしれない…」という不安やガッカリ感は、同性愛であれ異性愛であれ、LGBTQであれストレートであれ、共通する部分もあるだろう。

LGBTにまつわる動画や記事などを制作するクリエイティブ集団「やる気あり美」が、世界人権デーの12月10日に合わせて、「恋する10代LGBT」の切なさを描いたアニメーション動画『確信』に、英語字幕をつけて再発表した。

法律で同性婚が認められるように求めるアクションが本格的に始まったり、多くの企業や学校で、性的マイノリティが過ごしやすいような制度改革などが進む中、「日本は、当事者の首を真綿でしめるようなムードがまだ根強い」と語るのは「やる気あり美」代表の太田尚樹さんだ。

「日本の、特に若い世代のLGBTのモヤモヤを肯定したいし、日本以外の人にも現状を伝えてみて、どんな風に受け止めてもらえるのか見てみたいと思った」

太田さんは動画に英語字幕をつけて再リリースした理由をこう語った。

『確信』、どんな動画?

動画「[恋する10代LGBTへ] 『確信』」は、2016年3月にYouTubeで公開された。

同級生に恋心を寄せるゲイの10代男子学生の揺れ動く心情を描いたこの動画は多くの共感を呼び、現在までに98万5000回以上再生されている。

 

物語は、主人公が神様から「クラスに君と同じゲイがいるよ」と囁かれるところから始まる。

これまで何も感じなかった男子クラスメートたちがどんどん恋愛対象に見えて、その一挙手一投足が「思わせぶり」に見せてしまう主人公。

しかし彼が本当に好きなのは、たった一人だった。

意中の相手との恋は実るのか、それともーー。

 

主人公の切ない気持ちを歌とアニメーションで伝えるこの動画には、「涙腺崩壊した」「一刻も早く差別と偏見がなくなってほしい」「この歌を聞いて思い切って同性の子に告白したらOKされた」などの声が相次ぎ、YouTubeでのコメントは1000件以上にのぼる。

「日本的な10代LGBTの孤独」と向き合う

最初に動画を公開して3年以上が経過した今、なぜ“世界公開”しようと思ったのか? リーダーの太田尚樹さんに話を聞いた。

 

ーー胸に迫ってくるストーリーでした。これは太田さんの実体験なんですか?

直接的にこれと全く同じ経験をしたわけではないですが、僕と(やる気あり美のメンバーであり、この動画を作った)アーティストの井上涼の中高時代の片思いの経験を抽出して作った物語です。 

ーー正直、泣けました。

嬉しいです。動画も頑張って作ったので是非見て欲しいんですが、(元動画の)コメント欄がマジで熱くて…。是非読んで欲しいです。

ーー主人公を“翻弄”する男子学生たちはみんな美少年テイストで描かれているのに、主人公だけがのっぺりした顔をしているのは何か理由があるんでしょうか。

き、気づきましたか?(笑)

今まであまり指摘されたことがないのですが、もちろん理由はあります。

この動画を見た恋する10代LGBTたちが自分を投影しやすいように、誰か特定の人に似せたり、極端にかっこよく描いたりしたくなかったんです。

ーーなるほど。3年以上経って今、動画を日本以外の国に向けて再発表しようと思ったのはなぜでしょう。

実は以前、この動画に韓国語の字幕を付けてアップロードしていた方がいたんですが、その動画が67万回も再生されていて。日本以外の人にも刺さるんだ、と思ったんです。

僕たちの元動画の方にも英語で「何を言ってるのか気になる!」というコメントをちょこちょこいただいていたこともあり、海外の方たちにももっと届けたいな、と思うようになりました。

そして何よりも、このアニメで描いた「日本的な10代LGBTの孤独」に、海外からどんな反応があるか気になったんです。

ーー日本的な10代LGBTの孤独、とは?

やっぱり日本ではまだまだセーフティネットが十分でないと感じます。

今年、ニューヨークで50周年を迎えた「プライド・パレード」(LGBTの祭典)に参加したんですね。

街頭で若いLGBT当事者にインタビューしてまわっていて、あるティーンのレズビアンの子に「これからどんな社会になってほしい?」と聞いたんです。すると彼女は「わからないです。今とても楽しいから」と答えました。

僕はその言葉の裏に、彼女を支えるLGBTアライ(支援者)の存在を感じました。実際、彼女はストレートの友人たちと参加していましたし。

アメリカは、いまだにLGBTへのヘイトクライムが存在してはいるものの、セーフティネットも分厚い。

LGBTの存在に対してポジティブだということを表明している人が身の回りにたくさんいて、ある意味いつでもカミングアウトしやすいと感じられるような環境があるような気がします。

でも残念ながら日本は違います。

具体的なヘイトクライムはないかもしれないけれど、一方で、当事者の首を真綿でしめるような、例えば「ホモ、ウケるwww」みたいなムードが根強いんです。

ーーここ数年は随分日本の状況も変わってきている印象がありましたが… 

そうなんです。僕も最近の子はちょっとずつ変わってきているもんだと思っていたんですが…。

昨年「やる気あり美」の企画で、10代の当事者たちに話を聞く機会がありました。

「りゅうちぇるさんみたいな存在も出てきて、学校の雰囲気って変わった?」と聞いてみると「あれはテレビの中だけ。友達は今も”ホモネタ””レズネタ”で笑ったりしています」と教えてくれました。

僕らの時代から全然変わってないんだなと感じましたね。

世の中良くなってきている側面もある一方で、やっぱり多くの子たちはレインボープライドにも参加できない。これが現実なんだなぁって。

ーー「日本的10代LGBTの孤独」を世界に発信することで、どんなことを期待していますか。

正直なところを言うと、「こんなことを期待しています!」とはっきり言えるほど、英語圏のティーンの気持ちが想像つききっていない、というのが本音です。 

まずは、外国の当事者からどれだけ、どういったコメントがつくか、とにかく楽しみ、というのが大きいです。

日本の僕たちときっと違うところもあるし、同じところもあると思う。そういうのを少しずつ集めていって、続編を作るなり、別の表現を考えるなり、何か新しいコンテンツを作る上でのアイデアの種にできればと思っています。

いつか、グローバルに共感できたり、対話が生まれる瞬間を作れればと夢みています。 

ーー最後に一つ教えてください。この動画のタイトルが、「確信」なのはなぜですか?ちょっと意外なタイトルでした。

このタイトルは、僕たちアラサーLGBTから10代LGBTに伝えたいことそのものなんです。

今、苦しいかもしれないけど、その恋は決して無駄じゃないよというメッセージであり、「確信」。

「あんな辛い思い、ない方が良かったけど、あって良かったよね」って。

それが僕たちが青春を振り返った時の結論だったから。

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