頼りにされる子育て支援拠点 宮崎県延岡市の保育所が共同運営

かかわる子どもや保護者は月1000人を超えている。

ごはんを食べたりして自由に過ごす

宮崎県延岡市には、市内の保育園が共同で運営に関わる子育て支援の拠点がある。親子で自由に過ごせる場を提供するだけでなく、独自に有償ボランティアのサポーターも養成。さまざまな困難を抱える家庭を訪問して支援する機能も持つ。行政とも連携するなど、地域の安全網となっている。

自由な雰囲気

取材日の午前中。おやこの森では3人の子どもと4組の親子が過ごしていた。

3人の子どもがいるという30代女性は7年前から利用。結婚を機に大阪から宮崎に来たため、最初は友達づくりに軽い気持ちで訪れた。女性は「小学校1年生の長男の時は、子育ての悩みから街の情報までいろんなことを教えてもらいました。自由な雰囲気なのが魅力です」と話した。

おやこの森は、保護者同伴なら無料で遊べる居場所。親がいなくても、小学校低学年までの子どもを1時間500円で預かるファミリーサポートセンターの機能も持つ。また、電話での育児相談や病後児保育事業も実施。かかわる子どもや保護者は月1000人を超えている。

困難ケースも

一方、子育て支援が施設内にとどまらないのも特徴だ。地域には精神疾患や虐待など困難を抱える人もいる。そんな人を、おやこの森が養成した「サポーター」が支援する。「相談者の状況に応じ、サポーターが2重、3重に支援する体制です。特にベテランの子育てサポーターは深夜に駆けつけることもあります」と小澤のり子・おやこの森主任は解説する。

虐待など困難なケースは、市につなぐことも。山本雅浩・同市健康福祉部長は「行政の手が届かない制度のはざまにある人へ柔軟に対応して頂いている」と評価する。

サポーターは、おやこの森の利用経験者がほとんどだ。「支えられた人が支える側になるという循環に支えられています」と小澤主任は話す。

おやこの森の源流は、市内の保育園が地域の子育て相談を始めた1985年までさかのぼる。その後、保育園が連携してショッピングセンターで子育て相談を行うなど輪が広がった。98年に元児童館だった場所を譲渡され、現在の建物を建設した。2001年にNPO法人格を取得。10年には、保育園を閉園する社会福祉法人「北方福祉会」から法人格も譲り受けた。現在、同会の理事長は、市内で保育所を運営する木本宗雄・杉の子福祉会理事長が務め、8人の役員はすべて市内の保育園の園長が名を連ねている。

地域の力で

ただ、運営上の課題も少なくない。

さまざまな子育て支援の取り組みは、ほとんどが行政からの補助金で運営されている。年間の補助は、遊び場の提供やサークル活動などに800万円、病後児保育に650万円、ファミリーサポートセンターの運営に320万円などだ。

これらは、原則として1年ごとに予算を消化しなければならないため、職員の処遇改善に充てられないのが現実だという。事業ごとにしなければならない会計処理も負担が大きい。

主な支援の流れ

一方で、木本理事長はさらに支援の質を高めることも必要だと考えている。具体的にはサポーターの保育士資格の取得や研修の充実を行いたいといい、「地域の課題は地域の力でカバーするという社会福祉法人の責任を果たしていければ」と話している。

(2016年05月27日「福祉新聞」より転載)

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