車内に流れるサザンの曲を聴きながら、窓に打ちつける雨粒をぼんやりと眺めていた。行きに聴いたときはあんなに楽しげだったのに、今はなんとなく切なさが漂い、まるで別の曲みたいだ。
hanako

車内に流れるサザンの曲を聴きながら、窓に打ちつける雨粒をぼんやりと眺めていた。

行きに聴いたときはあんなに楽しげだったのに、今はなんとなく切なさが漂い、まるで別の曲みたいだ。

楽しい時間はあっという間に終わる。

だけど、今はまだ夢の中にいるような気分。

運転席には父、助手席に母、私と弟は後部座席。

弟はすでに眠りについてしまったようだ。

今日は家族でワイルドブルーヨコハマ*1に行ってきたのだ。

あそこは夜まで遊べるのがいい。

室内だから雨も関係ない。

朝から晩までたくさん遊んで、それでもまだまだ遊びたりなさを感じていた。

明日も明後日も、ずーっと遊んでいたいよ!

窓についた雨粒が、高速道路のオレンジ色の外灯に照らされてキラキラと輝く。

一つの雨粒が他の雨粒と結合してどんどん下へと流れていく。

楽しいのに泣きそうな、変な気持ち。

いつの間にか眠ってしまったようだ。

「着いたよ」という両親の声で私は目を開ける。

コンクリートで覆われた駐車場の景色が、私を現実へ引き戻そうとする。

もう少し、夢をみさせて。

私はふたたび目を閉じる。

「もう、しょうがないな」

父と母の少し煩わしそうな声とともに私はその胸に抱かれる。

明日起きたら、雨は止んでいるだろうか。

あのキラキラした雨粒は、もう消えてしまうだろうか。

**

車内に流れるサザンの曲を聴きながら、窓に打ちつける雨粒をぼんやりと眺めていた。

楽しい時間はあっという間に終わる。

それは大人になっても同じだ。

「着いたよ」

運転席に座る夫の声にうんと頷き、私は後部座席にまわって、ぐっすりと眠る娘を抱きかかえて家に入る。

「お風呂は」

「もう無理、明日の朝入る」

夫と短い言葉をかわし、ベッドへと倒れこむ。

明日の仕事を休みにしておけば良かったという後悔も今はもう遅い。

布団がふかふかで気持ちがいい。

もう数秒で私は眠りにおちてしまうだろう。

楽しいのに泣きそうな、変な気持ち。

これをうまく表す言葉を、大人になった今でも見つけられずにいる。

あのキラキラした雨粒も、きっとすぐに消えてしまうだろう。

だけど、

だけど...

**

仕事からの帰り道。

車のタイヤが道路にたまった水を弾くシャーっという音がする。

街灯の白、信号の青、テールランプの赤、それぞれが雨に映りキラキラと輝いている。

私は夜の雨が好きだ。きっとこの先もずっと。

冷たい雨に肩を濡らし、胸に抱えた小さな命のぬくもりを感じながら、そんなことを思った。

*1:かつて横浜にあった、年間を通して営業する大型屋内温水プール施設。2001年に閉館。

(2014年7月18日「はなこのブログ」より転載)