アベノミクスでタマゴも高騰?

これまでほとんど価格が変化しない、物価の優等生ともいわれていた鶏卵価格が昨年の夏から高騰しはじめ、今年になっても高止まりしています。

これまでほとんど価格が変化しない、物価の優等生ともいわれていた鶏卵価格が昨年の夏から高騰しはじめ、今年になっても高止まりしています。全農東京市場の卸売価格で見ると、昨年までの春は、1キロあたり170円から190円ぐらいでしたが、今年は220円から240円ぐらいになり、およそ30%近く値上がりしています。

この鶏卵の価格の高騰が、昨年の猛暑で鶏が大量に死亡し、卵を生む鶏が不足したからとか、鶏卵の価格下落を防ぐために計画的に生産量を減らしたからといった理由がマスコミで報道されていましたが、ほんとうでしょうか。

それが農水省の見解だとさらに怪しくなります。なにせ、「カロリーベースの食料自給率」という摩訶不思議な大発明で危機を煽った前科があるのですから。ちなみに、たとえば卵の自給率は金額ベースでは96%でほとんど国内で生産されていますが、鶏の飼料の9割以上は輸入なので、カロリーベースの自給率は9%となってしまうのです。いくら国産の食料を買っても自給率はあがりません。

猛暑で被害を受けたとしても、鶏は産まれてから約5ヶ月ほどで卵を産み始めるので、もうその影響は終わっているはずです。

いずれにしても生産量の推移を見ればわかることです。農水省のサイトの「鶏卵流通統計調査」を見ると、価格が上昇し始めた8月と9月は生産量がわずかに対前年を割っていますが、10月以降はむしろ生産量が前年より増えています。ほんとうに報道はあてになりませんね。

にわかにみんなが卵を食べはじめ、卵の需要が増え、需給が逼迫したとは考えられません。そうなると原因は別だということになります。もっとも考えられるのは、アベノミクスによる異次元の金融緩和によって起こった円安です。

鶏卵価格があがったのは、コストがあがったからでしょう。飼料価格が円安で高騰し、さらに鶏舎を維持するための電気代などの燃料費があがりました。飼育に使う魚粉も、漁船の燃料費が高騰したために価格があがりました。

生産者の方のナマの声が書かれたブログがありました。

アベノミクスで円安になり、輸入飼料が値上がりしています。そしてまだまだ値が上がるようです。輸入飼料だけでなく、日本で生産される国産の魚粉も漁業に使うガソリンや軽油の価格の高騰で値が上がっています。

仲間の農家と話をしますと「肥料代が(殆どが輸入品です)倍になった」「施設園芸の燃料費が倍かかる」と苦しみの声を聞きます。

円安は、消費者や国内産業にとっては負担増となり、輸出企業にとっては利益があがります。消費者や国内産業には厳しく、輸出産業には優しいのです。卵の価格がそれを物語っているように感じます。

つまり、円安で、輸出産業は国民に、あるいは国内産業に借りをつくったことになります。ぜひ、恩恵を受けた企業は、それに見合う積極的な成長戦略にチャレンジして、国内経済の活性化に貢献していただきたいものです。

ところで、日本の卵は物価だけでなく、品質でも優等生です。生で卵を食べることができる国はほとんどありません。昨今は、産地で売られているブランド卵も価格は少し高くとも人気があります。卵かけご飯のお店も行列ができるほど卵好きが多いのも、そういった高い品質を実現し、維持してきた結果ではないでしょうか。生で食べることができるおいしい卵も、もしかすると輸出する時代がやってくるかもしれません。

(2014年4月16日「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載)

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