徘徊老人こそモバイルで守るという発想を

今でもそれだけの徘徊による行方不明が起こっているですから、2025年を考えるとぞっとします。
足成

介護施設を抜け出し徘徊していた70代の男性が、いったん警察署員に保護されたものの、認知症とは気付かず警察官が東京都板橋区内の公園に置き去りにし、その後通行人にうずくまっているところを発見され保護されたという事件が報導されていました。

警視庁、認知症男性を公園に放置 施設抜け出し保護 - 産経ニュース

たまたま見ていた朝のテレビ番組で、施設と通報を受けた警察署といったん保護した警察署が異なり、その3つの組織で連携がとれていなかったことが老人の特定を遅らせた原因で、どうすれば連携できるかが 話しあわれていました。

聞いていて、それでは互いに連絡しあいましょう、情報を共有しましょうという精神論に終わってしまい、解決にはほど遠いと感じました。

このケースでは運良く発見、保護されましたが、保護されずに死亡するという事故も起こっています。

物事を解決するには、問題の立て方の筋の良さが求められます。「互いに連絡しあい情報共有」するにはどうするかを考えるのもいいのですが、それよりは「徘徊した老人の居場所がいつでもわかる」方法を見つけるほうがいいに決まっています。コストや具体的な方法は別にして、GPSと通信機能でいくらでも徘徊している人の正確な位置を特定できます。時計など身につけるものを嫌がるということであれば靴に仕掛けておけばいいのです。

折しも、創生会議が、2025年には、団塊の世代が後期高齢者となり、要介護者が急増し、東京圏では対応できなくなると発表していましたが、徘徊老人の通知を受けて、警察署が動くということでは対策に多くの人員が必要になってしまいます。

NHKサイトの記事によると、おととし1年で認知症で行方不明となり、警察に届けがあったのが全国でのべ9706人に上り、そのうち死亡が確認された人が351人、おととしの年末時点でも行方不明のままという人が208人だったというのです。今でもそれだけの徘徊による行方不明が起こっているですから、2025年を考えるとぞっとします。

兵庫県の小野市は、6月中旬から、認知症などで、登録した高齢者にQRコード入りのシールを配布するそうです。徘徊に気がついたときに、スマートフォンなどでコードを読み取ると、市の連絡先が表示される仕組みで、シールに書かれた番号を伝えてもらうことで、市や警察による迅速な身元確認、保護が可能になるというものです。

できるだけコストをかけずに、老人の安全を守るという発想がないと、高齢者人口が増えてくる10年後には対応できなくなってしまいそうです。

(2015年6月5日「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載)

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