「スウィート17モンスター」は多くの人が共感できる映画だろう。自分に自信がなく、彼氏を作ったこともない、イケメンの兄とよく比較されて劣等感を感じているが、唯一の親友が心の拠り所。そんな親友が兄と恋に落ちてしまい、自分はひとりぼっちになったと感じて2人の妨害をするようになる。
文字にするとなんて自分勝手なんだろうと思わされる主人公なのだが、なぜか不思議と共感させてしまう力がこの映画にはある。自分は世界一不幸だと勝手に思い込んでなんでも周囲のせいにしてしまうようなタイプの主人公なのに、この共感はどこから生まれるのだろう。
映画は、主人公が教師に向かって自殺宣言をするところから始まる。もちろん本気ではない。ただ気を引きたいだけで、そういう発言を軽はずみにしてしまう。理由もたわいないないことでもあり、自分の思い込みが半分以上を締めている。自分の妄想で周囲の人間を判断して勝手に暴走して勝手に失敗するタイプ。そういう思春期の女の子を適度な距離感で捉えている。
この距離感を一歩間違えれば、とても暑苦しくてイライラさせる映画になってしまっただろう。なにせ、物語の中に起きるトラブルのほとんど全てが主人公が思い込みで暴走して引き起こしているのだから。
しかしまあ、だれでもそういう時期はある。だから共感できるのだけど、自分もこういう失敗してくきたのだろうなあ、と心のかさぶたをちょっと引っ掻いてくるような、そんな映画なのである。振り返ってみると恥ずかしさで顔から火が出るような、青春時代のそんな思い出が甦る作品だ。素直に笑えるというよりも笑った後我が身を振り返って顔が引きつるような、そんな作品である。
原題は「The Edge of Seventeen」。まさに17歳という青春真っ只中を端っこ(エッジ)一人で勝手に尖っている(これもエッジ)ような、そんな作品だ。
主演は、コーエン兄弟の「トゥルー・グリット」で注目され、オスカー候補にもなったヘイリー・スタインフェルド。最近ではジョン・カーニーの「はじまりのうた」や「ピッチ・パーフェクト2」などにも出演している。最近の出演作をみてもわかるとおり、演技だけでなく歌も上手い若手女優だ。
教師役のウディ・ハレルソンがとても良い味を出している。主人公をからかいながらも理解ある教師を飄々と演じている。
イケメンの兄を演じるのは「Glee/グリー」でブレイクしたブレイク・ジェナー。彼の動画インタビューがあるのだが、作品の深みを的確に読み込んでいる。脚本の理解力が高い役者なのだなと感じさせる。そう、完璧超人リア充に見える兄も苦労してるんですよ、この映画。
監督は、これがデビュー作のケリー・フレモン・クレイグ。デビュー作でゴールデングローブ賞の作品賞にもノミネートされる快挙を成し遂げたがまだ36歳と若くまだまだ伸びしろがありそうだ。監督よりも脚本が本業のようだが、きちんとした本が書ける監督は頼もしい。
どちらかと言えば、女性受けしやすいタイプの作品だろうと思うが、本作の主人公は女の子らしく生きようともがいて上手く生きられないといったタイプのはみ出し系なので、男性でも共感できる部分がたくさんあるだろう。