(この記事は、「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のサイトで7月25日に公開された記事の転載です)
(ベイルート)- イラン司法権は、不公正な裁判で有罪とされ、2013年7月に判決を通知された、スーフィー教団の11人に対する容疑を取り消し、判決を撤回すべきだ。現在収容中の人々は即時無条件に釈放されるべきである。
証拠によれば、11人の被告全員が、イラン最大のスーフィー教団「ネッマトッラーヒー・ゴナーバーディー・スーフィー教団」のために行った非暴力活動、または教団メンバーへの人権侵害を明らかにするニュース・サイトの投稿に関与したことだけを理由に、起訴され、有罪判決を受けている。
「今回のスーフィー教徒への裁判は、古典的な魔女狩りの特徴をすべて兼ね備えている」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチの中東アドボカシー・ディレクターのタマラ・アル=リファーイーは指摘する。「当局は、イランで最も弱い立場に置かれた少数者集団のメンバーを、スーフィー教徒の権利擁護を表明しようとしたために標的にしたと思われる。」
7月18日、被告のうち4人は、シーラーズの革命裁判所第2支部により、自らが1年から3年の刑を宣告されたことを知った。また、刑期の前に国内追放期間が定められ、出身州への立入が禁じられた。4人は現在仮釈放中だ。
7月10日、テヘランの革命裁判所は、スーフィー教団メンバー7人に7年6ヵ月から10年6ヵ月の刑を宣告した。7人は釈放後15年間、スーフィー教団にかかわる社会的・法的活動と、ジャーナリスト活動を禁じられた。7人は現在エヴィーン刑務所に収容中だ。
被告数人が記事を寄稿した、教団関係のニュース・サイト「マジュズーバネ・ヌール」によれば、テヘランで裁判を受けた被告全員が、情報省職員による裁判前の数々の不正行為や収容中の度重なる虐待に抗議して、控訴を拒否した。なおシーラーズの4人は控訴の方向だ。
シーラーズの革命裁判所第2支部は、被告4人について、国家の安全を脅かそうとする「反体制」組織に属しているとし、このサイトに言及して「反体制プロパガンダ」を行った罪で有罪判決を下した。判決は、サーレフ・モラーディー氏に3年の刑とホルモズガーン州からの3年の追放、ファルザーネ・ヌーリー氏に2年の刑とフーゼスターン州からの3年の追放、ベフザード・ヌーリー氏に2年の刑とブーシェフル州からの3年の追放、ファルザード・ダルヴィーシュ氏に1年の刑とスィースターン・バルーチェスターン州からの3年の追放をそれぞれ宣告した。
テヘラン革命裁判所第15支部は、判決文によれば、7人を「国家の安全を脅かす宗派への参加」「反体制プロパガンダ」「最高指導者の侮辱」「人心の撹乱」「逸脱集団の設立と加入」「公安を脅かす行為」で有罪とした。ハミード・レザー・モラーディー氏に10年6ヶ月、レザー・エンテサーリー氏に8年6ヵ月の刑、またアミール・エスラーミー氏、アフシーン・キャラムプール氏、ファルシード・ヤドッラーヒー氏、オーミド・ベフルーズィー氏、モスタファー・ダーネシュジュー氏には7年6ヵ月の刑が宣告された。
エスラーミー氏、ヤドッラーヒー氏、ダーネシュジュー氏、ベフルーズィー氏は、同サイトに寄稿し、弁護士として、教団メンバーの代理人を務めていた。
ネッマトッラーヒー・ゴナーバーディー・スーフィー教団は、イランの国教である12イマーム派(シーア派の最大教派)に従うと自認する。しかしイラン政府からは「逸脱集団」と規定され、嫌がらせや逮捕、起訴を受ける場面が増えている。教団メンバーでは他に少なくとも7人が、同教団のサイトに関わったことが理由で、政治的動機に基づき国家安全を脅かした容疑により、エヴィーン刑務所と、シーラーズのアーデラーバード刑務所に収容されている。
ファルザーネ・ヌーリー氏の息子で、このサイトを管理するファルハード・ヌーリー氏はヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、シーラーズの4人のうち、サイトに寄稿したのはモラーディー氏とベフザード・ヌーリー氏だけで、あとの2人は教団関係者であることを理由に弾圧を受けたようだ、と述べた。
被告の家族によれば、テヘランの7人は審理拒否を行い、出廷しなかったという。その理由として、裁判所が弁護士の面会を許可しなかったこと、また、情報省が裁判前と裁判中に行った主張と、起訴前の勾留で情報省職員が行った身体的・心理的虐待を検討しなかったことが挙げられた。
7月に、被告7人はテヘラン革命裁判所第15法廷のサラヴァーティー裁判長に書簡を送り、裁判に正統性がないとした上で、出廷または被告側の弁論を拒否した理由を列挙した。ある被告の母と被告2人の妻は、ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、被告は裁判自体に正統性がないと考えているので、控訴はしないと述べた。
ある被告の妻によれば、夫やほかの被告は、身柄拘束中に経験した不当な扱いや虐待について裁判官に抗議を行った。すると裁判官は家族の面会を拒否し、被告の身柄を情報省の管轄下にある、エヴィーン刑務所第209区画に移した。被告は約3か月にわたり独房拘禁され、嫌がらせや殴打を受けた。家族によれば、被告は4月半ばに第350区画に戻され、それ以降は家族の面会が可能になった。
この教団関係のサイトによれば、判事は、医師団が命令したダーネシュジュー氏とハミード・レザー・モラーディー氏のエヴィーン刑務所外での動脈の詰まりと喘息の緊急治療を許可しなかった。
イラン国内法と国際法は共に、刑務所当局に対して、すべての囚人に必需品を提供し、尊厳と敬意を持って取り扱うことを義務づけている。イランも締約国である、市民的及び政治的権利に関する国際規約(自由権規約)は、非人道的な、もしくは品位を傷つける取扱いや刑罰を禁止している(第7条)。2004年に、国連の恣意的拘禁に関する作業部会はイランが独房拘禁を体系的に用いていると批判し、「このような完全な独房拘禁は、長期にわたることにより、拷問等禁止条約の非人道的取扱いにつながる可能性がある」と記した。国連の被拘禁者取扱いの基本原則には「刑罰としての独房拘禁の廃止、あるいは使用制限への努力が実施され、かつ推奨されるべきである」とある。
自由権規約第14条はイランに対して、刑事上の罪に問われたすべての人に、公正な裁判を受ける権利を保障することを義務づけている。「防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ並びに自ら選任する弁護人と連絡する」権利も含まれる(第14条3b項)。第18条は、良心及び宗教の自由を、法律の定める範囲で全員に保障することを、また第27条は、宗教的少数派の全構成員に、己の宗教を信仰かつ実践する権利を保障することを、イランに対してそれぞれ義務づけている。
「多くの証拠から、司法権当局が、これらの被告を、スーフィー教団のために非暴力行動を行ったというだけで起訴したことが示唆される」と、前出のアル=リファーイーは述べた。「こうした重大な不法行為があることを踏まえれば、被告たちを裁判にかけ続ける合理的な理由は存在しない。」