ウクライナ:増える一般市民の死者数 人口密集地域における無誘導ロケット弾の不法攻撃で

最近ウクライナ東部で起きた無誘導ロケット弾による2件の不法攻撃は、分離独立派の反政府勢力によるものである可能性が高く、子ども2人を含む少なくとも41人の一般市民が死亡、100人超が負傷した、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。
2015 Human Rights Watch

一般市民の死傷者が最も多かった最近の攻撃のうち2件では、ロシアが後ろ盾の反政府勢力が、無誘導ロケット弾を不法使用していた。全陣営は、人口密集地域でのこうした兵器の使用を止めるべきだ。

(ベルリン)― 最近ウクライナ東部で起きた無誘導ロケット弾による2件の不法攻撃は、分離独立派の反政府勢力によるものである可能性が高く、子ども2人を含む少なくとも41人の一般市民が死亡、100人超が負傷した、と本日ヒューマン・ライツ・ウォッチは述べた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチは最近現地調査を行い、ウクライナ政府軍とロシアが後ろ盾になっている反政府勢力の双方が、不必要な危険に一般市民を陥れていることを明らかにした。両陣営とも人口密集地域に軍事目標を設置したり、爆発が広範囲に及ぶ兵器を使用している。校舎の周辺も含まれており、国際人道法に抵触する行為だ。

ヒューマン・ライツ・ウォッチ緊急対応部門の上級調査員ウレ・ソルバンは、「一般市民の死傷者が最も多かった最近の攻撃のうち2件では、ロシアが後ろ盾の反政府勢力が、無誘導ロケット弾を不法使用していた」と指摘する。「全陣営は、人口密集地域でのこうした兵器の使用を止めるべきだ。」

比較的平穏といえる2カ月がすぎた2015年1月10日ごろ、ドネツク空港をめぐるウクライナ政府と反政府勢力の攻防でウクライナ東部の戦闘が一気に激化し、複数の地域に飛び火。死傷者の数も劇的に増加した。

政府軍および反政府勢力がそれぞれ支配する地域にて医療関係者が収集した情報によると、女性71人、子ども6人を含む、少なくとも341人が1月にドネツク州で死亡。わずか2歳の子どもを含む死傷者の多くが一般市民だったことも、ヒューマン・ライツ・ウォッチの調べで明らかになった。

こうした最近の一般市民の犠牲は、武力紛争法の違反行為が原因で、特に人口密集地域における無誘導ロケット弾の違法な使用が問題だ。1月24日に反政府勢力の支配地域から発射されたとみられる無誘導ロケット弾により、マリウポリの市民30人と兵士1人が死亡、市民90人超が負傷した。うち1弾は学校校庭に着弾している。同月13日にも同様にボルノバーハ付近の検問所で市民12人が死亡、18人が負傷。また、同日にドネツクで一般の犠牲者2人を出した無誘導ロケット弾攻撃は、その状況からウクライナ政府軍によるものとみられている。

ドネツクでは1月22日にも、一般市民の死傷者を出した第3の大規模攻撃があり、地元当局によると13人が犠牲になった。本件でもヒューマン・ライツ・ウォッチは攻撃現場の調査を敢行したが、加害陣営を特定することはできなかった。

更なる一般市民犠牲の報告は、政府支配地域および反政府勢力支配地域双方で数多くなされており、特に1月13日以降に顕著となっている。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれらについてまだ直接の調査を行っていない。

紛争の両陣営とも、人口密集地域における無誘導ロケット弾と爆発が広範囲に及ぶ兵器の使用を中止すべきだ。また、人口密集地域に軍事目標を設置せず、一般市民の保護のため実行可能な全ての措置をとり、市民に対する危険の回避という義務を果すため細心の注意を払うべきだろう。

本リリース内で言及した攻撃の起きた期間中、ウクライナ当局および各国政府は、ウクライナ東部に展開するロシア軍の規模がかなり拡大したと主張している。ヒューマン・ライツ・ウォッチは、これら攻撃のいずれかにロシア軍がなんらかの役割を果たしていたのかについて、見解を示す立場にない。しかし、ロシアからの兵器、有志、あるいは兵士が不法な攻撃に関係していなかったかの捜査を、ロシア政府に強く求めた。

この紛争が始まって以来、国際人権法・人道法の重大な違反行為に対する法の裁きは実現されておらず、一般市民が引き続き、繰り返される違反行為の犠牲になっている。

1月26日にウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は、同国関係当局が(反政府勢力による)マリウポリの攻撃ほか諸事件についての情報を、国際刑事裁判所(以下ICC)に提出すると述べた。ウクライナは、2014年4月にICCの管轄権を受け入れると宣言した際の、対象期間の制約を解除し、ICCローマ規程に加わるべきだ。そうすることで、更に幅広い事件がICCの捜査対象となる可能性が生まれる。

前出のソルバン上級調査員は、「政府が選りすぐった事件のみの捜査を、ICC検察官に求めるべきではない」と述べる。「もしウクライナ政府が、国際的な法の裁きを真剣に求めているのならば、ICCの管轄権行使を紛争中のすべての行為に対し求めるべきだ。たとえそれが反政府勢力によるものであろうとも、政府軍によるものであろうとも。」

ヒューマン・ライツ・ウォッチが調査した攻撃の詳細は以下をご覧下さい。

(2015年2月3日「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」より転載)

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