あなたは何かをコレクションしているだろうか? 職業柄、何かを収集している人にたくさん出会う。その対象はたとえば、大正浪漫の着物だったり、袱紗だったり、戦争柄の着物だったり、襤褸(ボロ布)だったりする。
margolove

 あなたは何かをコレクションしているだろうか?

 職業柄、何かを収集している人にたくさん出会う。

 その対象はたとえば、大正浪漫の着物だったり、袱紗だったり、戦争柄の着物だったり、襤褸(ボロ布)だったりする。

 様々な人がいるが、気合の入ったコレクターの方は、ほんとうに集めている対象物を愛している。長く収集を続けていると、珍しいもの、良いものが欲しくなるので、金銭的にも大変になってくると思うのだが、たとえば、その時に持っているもっともレベルの低いものを売ったりしてお金を用立てて、また買う。もちろん、そのたびに、コレクションのレベルは上がっていく。

 そして、そういうコレクターの中には、そうやって苦労して集めたコレクションを、最終的にはどこかの博物館に寄贈したりする人もいる。

 彼らは「お金」のために収集したのではなく、本当にそれが好きで集めてきたから、そういうことが可能になるのである。

 ホンモノのコレクターは、それが将来お金になると言うようなことは、微塵も考えない。

 だから、世の中には、千差万別のコレクターが存在し、一般的に高価なもの(コレクター間でやりとりが活発なもの)を集めている人もいれば、世間的には誰も価値をおかないものを集めている人もいる。

 たとえば、ある人のお母さんは、娘についての膨大なコレクションがある。子供の頃の写真、手紙、絵、学級新聞に書いた作文・・・それは金銭的には一銭の価値もないし、誰かがそのコレクションを褒めてくれるわけでもない。娘が大きくなって結婚式の余興に使えるかもしれないし、いつかは母になる娘がそのコレクションに感謝する時がくるかもしれない。それだけのことだ。

 ライターのNick Biltonさんが子供の頃、飛行機で知り合った人は、世界の都市の「空気」を集めていた。(Mediumの記事「Collecting Air」) 旅が多く裕福そうでない彼は、出張で出向く世界の各地の都市で小瓶に空気を詰めて持って帰り、奥さんにプレゼントするのである。

 最近になって飛行機で隣になった人は、「砂」を集めていた。「空気」を集めていた人と同じく、彼は出張が多く、息子さんの頼みにしたがって、訪れた世界各地のビーチの砂を集めていたのだ。

 さて、そう言われれば僕も、小学校5、6年生の時に切手を集めていた。

 切手集めが流行った頃、古い切手の値段が上がり、投機的なムードが出ていた。だから、僕らも、コレクションの中から切手を交換する時、カタログでその切手の流通価格を調べてから交換したものだ。

 当時、先生が、そんな僕らに、「切手が好きなら、純粋に好きな切手を集めなさい、お金のやりとりはやめなさい!」とおっしゃっていたことを思い出すが、小学生の分際ながら、「流通価格の高いものを低いものと交換したら損をするじゃないか!」と思ったものだ。

 でも、たしかに、先生のおっしゃるとおりだった。

 あの頃切手を集めていた少年少女は、ほとんどみんな、切手のコレクションをやめてしまった。切手を心のそこから愛しておらず、下心と見栄と同調の産物であったことは明らかだ。

 Nickさんも「空気」を集めている人に会った時、感動して、「自分も空気を集めよう!」と言った。だが、それを聞いた「空気」のコレクターは、「空気を集めちゃだめだよ。自分にとって本当に意味のあるものを集めなさい」とたしなめられている。

 その後、Nickさんはマッチボックス、ボタン、黄色にアヒルのラバーの人形や、僕と同じく切手も集めてみたそうだ。

 しかし、どのコレクションも、コレクションのためのコレクションになってしまい、ついに諦めて、自分はコレクションには向かないと匙を投げた。 

 あなたは何かのコレクターだろうか?

 あなたは何かに執着して、人知れず集めているだろうか?

 そして、そのコレクションが世間的には一文の価値もないものになったしまっても、そのコレクションを変わらず愛することができるだろうか?

 ひょっとして、あなたが何のコレクションもしていないと思ったら、NickさんのMediumの記事「Collecting Air」の記事の最後の数行を読んでみて欲しい。

 きっとあなたも、何か大切なものを、自分では気づかずに、集めているに違いない。

 彼は「砂」のコレクターに、何かを集めているかと聞かれて、こう答えたのだ。

 最初、私はどう答えてよいかわからなかった。そんな風に考えてみたことがなかったからだ。そして、自然とこんなセリフが口をついて出た。

 私は「ストーリー」を集めています。人々のこと、イベントのこと、場所のこと、会社のことや、それぞれの大切な瞬間のことを。そんな「ストーリー」を集めて言葉と写真で保存しています。それを自分のためにとっておくこともありますが、たいていはそれを人々とシェアします。ニューヨーク・タイムズの記事として、私の本の中に、あるいはオンラインで。

 いわば、「空気」を集めているようなものです。

PS 読みやすい英語です。原文「Collecting Air」をぜひ。

(2014年9月30日「ICHIROYAのブログ」より転載)