先日、自分の本棚を何気なく見ていたら、『凡人起業』という本をみつけた。
てっきり、会社を辞めようかどうしようかと悩んでいる時に読んだものかと思ったら、2009年の出版で会社を辞めてすでに数年してから読んだものらしい。
どちらにせよ、その内容が結構腑に落ちた覚えがあり、パラパラと読みだして結局全部再読してしまった。
作者: 多田正幸
出版社/メーカー: 新潮社
発売日: 2009/06
メディア: 新書
多くの中小企業の経営者を見てきたという著者は、「サラリーマンにはバランスの取れた感性を持った人物が結構いるのに、中小企業の社長の場合、少し変わった 人(誤解を恐れずに言うならば、人間的に少しバランスの欠けた人)が多い」と感じている。そして、「バランスの欠けた少し変わった人なのに社長が務まっているのではなく、バランスの欠けた少し変わった人だから社長が務まっている」とまでおっしゃっている。
一般的には、自ら会社を起こした中小企業のトップにもさまざまなタイプがあり、特定の性格や特徴を持った人たちではないと言われることが多い。
学者でない僕たちは、自分が会った幾人かのサンプルからそれを類推するしかない。
が、一応、みずから事業を興して14年間中小企業の社長を務める僕は、今になってあらためて「お前は、バランスの欠けた少し変わった人間なのだ」と言われたようで、すこし納得した。
僕の本を読んでくださった方は、僕が組織人としてどのようにバランスを欠いていたかということは、よくわかってくださると思う。
もし、著者のおっしゃるように、組織人として「バランスを欠いている」が故に起業することができて自分のビジネスを興し経営していけるのであれば、「バランスを欠いている」ために組織で報われない人たちにとっては、このうえない朗報ではないか。
だが、僕自身がバランスを欠いていることは事実であるけれど、僕のまわりにたくさんおられる中小企業の経営者の皆さんが、等しくバランスを欠いた人間かというと、それも違うような気もする。
組織の中で生きていこうとすると、たしかにずっとバランスをとり続けなけれならないけれど、自営業になって商売が回りだすと、ある種のバランスは不要になり、自分らしさを押し通しても生きていけるようになる。その結果として、「バランス感覚のない少し変わった人間である」ように見える人が多いという、原因と結果が反対になっている可能性もある。
そのことが一般的に言えることなのかどうかの判断は、読者にお任せするとして、この本にも出てくるように、自分のビジネスをみつけて立ち上げるまでに必要な行動特徴があり、それは僕の周囲を見ても共通しているので、自分の言葉でまとめておく。
1.やってみる
考えてみてやれそうかなと思ったら、とにかくやってみる。売れそうかなと思ったら、売ってみる。充分な知識がない、充分に用意できていないから、まだ販売はできないなどとは考えない。とにかく、不完全でも、やってしまう。売ってしまう。
しかし、そこからお客様の声を真摯に聞いたり、工夫を重ねて、商売を磨いていく。
2.行動が早い
すぐにやる。いいアイディアと思ったら、何日も寝かさない。組織人なら上司の承認が必要だが、商売人には不要だ。
とにかく、すぐにやりたくなり、やれないとウズウズする。
3.熱中する
ひとつのことをやり始めると熱中する。ほかのことは上の空になり、そのことばかり考える。そのため、アポイントをすっ飛ばしたり、記念日を忘れたり、朝食をとるのを忘れたりする。
4.独学の方法を知っている
その人のキャリアからは想像できない、意外なスキルを持っている人もいる。不思議に思って聞いてみると、趣味でやっていたからとか、まったくの独学だとか、あるいは、それを知っている人に話を聞きに行って何回も断られたけど最終的に教えてくれる人をみつけたとか、そんな答えが帰ってくる。
必要なスキルは働きながら身につける術を知っている。
5.無駄に頭を下げることを嫌う
だいたい、オレが一番と思っている。納得できない相手には、頭を下げたくない。あるいは、ほんとうに頭を下げることができない。そのせいで、会社を飛び出したり、自分の事業の拡大(アイツより大きくなる!)に精を出したりする。
photo by Caleb George
(2015年6月8日「ICHIROYAのブログ」より転載)