歌詞を感情的に表示できるIoTスピーカー「Lyric Speaker」国内販売が決定

クリエイティブエージェンシーSIXが手掛ける、再生する音楽を同期し歌詞をモーショングラフィックで生成するIoTスピーカー。国内で販売が決定しました。

クリエイティブエージェンシーSIXが手掛ける、再生する音楽を同期し歌詞をモーショングラフィックで生成するIoTスピーカー「Lyric Speaker」が、国内で販売が決定しました。

このAmazarashiの「自虐家のアリー」MVに登場するのが、稼働しているLyric Speaker。

Lyric Speakerは、モバイル・デバイスが再生する楽曲を同期して、スピーカー独自の解析機能で曲の雰囲気や構成を分析、データベースから歌詞を取得し、スピーカー前面に内蔵された透過型スクリーンに表示するという「IoTスピーカー」として2014年に発表されました。

発表後もLyric Speakerは音楽を目と耳で楽しむ体験を推進するデバイスとして注目を集め、テキサス州オースティンで開催する音楽、インタラクティブ、映画のフェスティバル「SXSW」で2015年にSXSWアクセラレーター・コンペティションのエンターテインメント・コンテンツテクノロジー部門ファイナリストに日本企業として初めて選出され、アジア企業では初めて「Best Bootstrap Company」を受賞しています。

国内では三越伊勢丹が世界に先行して発売します。6月の伊勢丹新宿店、三越日本橋本店、三越銀座店の3店舗さらにECでプレオーダー受付を開始、9月以降に製品出荷が始まります。

今後はアメリカでも提携先を探していくとのことです。

デジタル化とモバイル化が進んだ現代の音楽体験において、音楽を聴く行動は、今まで以上に簡単になりました。音楽にアクセスしやすくプラットフォーム化した一方で、目にすることが減ったのは「歌詞」です。以前であれば、CDやアナログレコードの歌詞カードを見ながら、アルバムを最初から最後まで聴いていた体験を通ってきた人は多いはずです。

Lyric Speakerは、リスナーと曲を本来つないでいた要素の一つでもある歌詞に再注目することによって、音楽で動かした心の振れ幅を増幅させ、リアルタイムの音楽体験を視覚と聴覚でアップデートする、野心的なスピーカーと言えます。

聴こえてくる曲とリアルタイムでどう繋がり音楽への熱を生み出すかは、ライブやフェスにも共通するであろう音楽シーンにおける重要な議論だと感じています。

歌詞サイトが普及したおかげで、好きな曲の歌詞を検索することは、簡単になりました。ですが、これらのサイトはリアルタイムでコンテンツとのつながりを作ることはできず、あくまでも検索ツールとして存在するのみです(唯一「Genius」だけがこのジレンマから抜け出し始めています)。

Lyric Speakerが意欲的なのは、どんどんリアルタイム性が重要視されていく現代の音楽コンテンツ社会で、心を動かす音楽体験を、ライブやフェスでもなくスピーカーで実現しようとする点な気がします。

今後Lyric Speakerは、SpotifyやApple Musicなど音楽ストリーミングサービスにも対応したり、聴いている音楽の歌詞を共有できたりと、外部との連携も進んでいくのではないかと考えています。あとスピーカーというオーディオ機器も良いですね。何かドクター・ドレーとジミー・アイオヴィンと同じ流れを感じます。

以前、開発されてきたSIXの齊藤迅さんと沼田耕平さんにLyric Speakerを長時間見せていただく機会を頂きました。クリエイティブエージェンシーのSIXからIoTそれも音楽に特化したデバイスが生まれた点も、注目に値すると考えています。

「クリエイティブエージェンシーが作ったスピーカーをデパートで販売する」なんて、全く音楽業界らしくないと思いませんか? ですが、今の音楽業界が求めているのは、新しい体験を生み出す手法と、飛躍した発想だと思います。SIXの斎藤さんと沼田さんの活動は、音楽業界だけに縛られない、今後の日本におけるクリエイターと音楽シーンの関係を象徴しているようにも見えて、今後にも注目していきたいです。

ソース

(2016年3月17日「デジタル音楽ブログ All Digital Music」より転載)

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