レイプ犯の父親に送る手紙

あなたの息子は同情されるべきだというシナリオは存在しません。

(編集部注)アメリカの名門スタンフォード大学の水泳チームに所属していたブロック・ターナーは2015年1月18日、酒に酔って意識を失っていた当時22歳の女性をレイプした罪で逮捕されたが、裁判所は禁錮6カ月の「温情判決」を下した。

ターナーの父は、量刑審査で減刑を嘆願する陳述書を発表し、刑務所で服役するほどの罪は犯していないと主張し、息子は「わずか20分の行為」で高い代償を支払うと述べている。 このブログは、牧師でブロガーのジョン・パブロヴィッツ氏が、ターナーの父に当てた公開書簡の形をとっている。

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ターナーさんへ

息子のブロック君が起こしたレイプ事件で、あなたが寛大な判決を求めて判事に書いた手紙を読みました。

あなたに理解してほしいことがあります。そしてこれは、あなたと同様に自分の息子を心から愛する、一人の父親として言いたいのです。

息子のブロック君は被害者ではありません。

被害者は、あなたの息子にレイプされた女性です。

彼女が、傷つけられた側なのです。

あなたの息子は、彼女を傷つけた側なのです。

人の人生を台なしにしたことで、もし自身の人生が「一変して」しまったとしても、それはあなたの息子が自身の快楽のために他人を傷つけるという、非難を受けるべき選択をしたからなのです。被害者の若い女性は、あなたの息子さんが罰を受ける、6カ月という呆れるほど短い期間よりもずっと長い間、今回の事件に向き合っていことになるのです。被害者の女性はこれからの人生で想像もつかないほど辛い、あなたの息子さんの「20分間の行為」のトラウマに耐えていかなければならないのです。そして、あなたがこれを問題だと気付いていないように見えるのが、一番の問題なのです。

このようにして、若い男性は女性をレイプし続けていくのです。

このようにして、多くの男性は承諾なしに女性の体を自分の思い通りにしていいと考えてしまっているのです。

このようにして、レイプされた多くの女性は、声を上げることができないのです。

このようにして、白人の特権というものが狡猾に実在し、特権を持っている人間はそれに対して無自覚なのです。

あなたの息子は同情されるべきだというシナリオは存在しません。

あなたが判事に書いた手紙の中では、息子の好きなお菓子や水泳の練習、父親であるあなたとの楽しい思い出などが書かれ、あなたが息子を人間性豊かな人物に見せようとしているのは分かります。しかし正直なところ、そんな話は本当にどうでもいいのです。もし今回の被害者があなたの娘だったら、間違いなくあなたも、そんな話はどうでもよくなるだろうと思います。

被害者の女性にも、好きなお菓子やスポーツはあったことでしょう。彼女のご両親も、今回の痛ましい事件が起きるなんて想像すらせず、素晴らしい将来を彼女のために考えていたことでしょう。

今回、あなたの息子が同情されるべきだというシナリオは存在しません。息子さんは加害者であり、レイプ犯なのです。1人の父親として、私はこの現実があなたにとってどれだけ胸が張り裂けるようなものなのかは想像もできません。しかし、これは現実なのです。

息子のブロック君は性犯罪者として登録されることになります。彼は力の弱い若い女性に性的暴行をはたらいたからです。そのために、社会にはこうした要求があるのです。私たちが口に出せないような酷い行いをした時はやり直すことはできないので、他人に不当な行為をはたらく人間とは、社会の中では望ましくない存在なのです。私たちは、著しく他人の尊厳を踏みにじった人間と一緒に暮らす中で、他人と情報を共有して自分を守る必要があります。

「自分の息子は、ゴミ箱の横に横たわっている女性を暴行するようなことは絶対しない」なんて訴えたところで、あなたの息子の評価が高まるようなことはありません。私たちは人生の中で1 回でも女性をレイプするようなことがあれば、称賛されることはないのです。あなたの息子が人の道を外れたケダモノだとは思いませんが、彼の行った行為はケダモノそのもので、説明責任を果たす必要があります。確かに、今回の判断はブロック君の人生の総計になるわけではありません。しかし、彼の人生の方程式の重要な部分であり、非常に深刻な問題なのです。

確かに、今回の判断はブロック君の人生の総計になるわけではありません。しかし、彼の人生の方程式の重要な部分であり、非常に深刻な問題なのです。

そしてはっきりと言いますが、ターナーさん、「アルコールが入って乱交状態だった」なんていうことは、ここでは問題になっていません。今ここで問題になっているのは、若い男性が女性を犯すことを選択し、その選択に責任を負うということなのです。たとえ、その選択が誘惑にかられたもので、機会が豊富にある時に行われたとしてもです。実際、こういったものと直面する時が、私たちの人間性が最も良く現れる場面なのです。私たちは楽ではあるが間違った選択を避けることができれば、誠実で良識ある選択をするのです。

親である私たちは、子供たちをコントロールすることはできません。多くの親はそのことを分かっています。親の努力とは正反対に、子供たちはどんどん道を踏み外していき、親が絶対に許さないようなこともしてしまうのです。今回の事件がそのようなケースであることを願いますが、あなたの手紙を読むとどうも違うようです。どうもこの手紙を読むと、あなたは被害者の女性よりも、息子に対して多くの同情と好意を集めたいかのように思えます。そしてこのことは、被害者の女性と、他の若い人たちにとっても良いことではないのです。

ここに、被害者の女性の言葉が掲載されています。

あなたは息子さんのことを愛しているでしょうし、そうするべきだと思います。しかし、息子さんが今回の自分の選択に責任を持ち、ルールに従って社会に対してけじめをつけ、そして償いの道を探し、社会の中の正しい行動でそれを示せるような愛し方をしてください。

ひとまず、ある父親から、もう一人の父親への手紙は終わりにしましょう。まず親である私たちが正しいことをしている姿を見せれば、子供たちにも正しいことを教えられるはずです。

ハフポストUS版より翻訳・加筆しました。

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