(ELLE /2017年)
アメリカ映画のハッピーな雰囲気とは違い"フランス映画"らしくエロテッィクで、影があって、過激な作品。『ピアニスト』(2001年)などの、薄幸で被虐的な雰囲気を持つフランスの名女優イザベル・ユペールと、『氷の微笑』(1992年)などの過激な演出がウリのオランダ出身のポール・ヴァーホーヴェン監督(現在79歳!)が組んだ、衝撃的なエロテッィク・サスペンス。これも衝撃的だった『ベティ・ブルー/愛と激情の日々』(1986年)の原作者フィリップ・ディジャンの小説が原作なのである程度、連想できると思う。
ユペール演じる複雑な背景を持つひとりの女性の主人公が自宅でレイプされ、その犯人を探していくのがメインのストーリーである。彼女はコンピュータ・グラフィック会社の女社長。しかし、レイプに遭ったことをきっかけに、複雑系な周りの人々を巻き込んで、自分の内にある性的な欲望や衝動など本能的なものを解き放っていく、まったく新しくて過激な女性賛歌。ちなみに出てくる男性はダメ男が多い(笑)。
女性賛歌と書いたが、まさに女性中心の映画である。女性の社会進出については、以前、"007"の多数の作品が女性の社会進出を描いている、と書いたこともあった。この作品では、女性社長である。欧米では、女性の社会進出が著しい。政治家でも、ドイツのメルケル首相、イギリスのメイ首相、IMF(国際通貨基金)のラガルド常任理事などなど、また経営者でも、IBM、GMなど大企業でも暇がない。またアジアでも商店などでは女性の方が働いているイメージが強い。
日本でも、10年前の米国のように共稼ぎが当たり前になってきているし、法律によって男女の雇用機会も均等になってきた。ちなみに筆者がF(都市)銀行に87年に入行したとき、総合職女子を初めて採用した年で、3人が採用された。
その後、日本でも女性の社会進出が進んできているが、国会をみてもそうであるが政治の世界や、大企業の経営者にはまだまた少ない。日本では先進国と比べて、まだまだ性別やさまざまな出身母体や派閥などでバイアスがかかる様な気がする。社会的地位でも女性にはやや偏見があるようである。女性が様々な組織でトップになる国というのは、織田信長で良くいわれているが、出身を問わない「実力主義」の考え方が浸透していることで、結果的に成長率も高くなるのではないか。
しかし、ここで強制的な数値目標によって女子の管理職登用を進めるのは、実力主義ではなく、逆差別のような状態になり組織に不満を残し望ましくない。"平等の機会"を与えることを徹底すべきで、結果を目標にすべきではない。実力を付けて、平等の評価によって自然に増えてくることが望ましいのである。
筆者は、最初は東大大学院(非常勤講師)であったが、2003年から大学で教え始めて(15年に大学に奉職)、若い方々を何年も見てきているが、最近はとくに女性の方がガッツがあるし、勉強もしていると感じる機会が多い。最近、思うのは、日本では「男らしくしろ」「女らしくしろ」とよく言うが、逆にそもそも"そうじゃない"からではないか。
素敵なフランスの街やお店もふんだんに出てくるので、フランスの雰囲気が好きな人にもおすすめ。ただし、結構、性的・暴力的に過激なので、そこは心してご覧になってください。
【「シネマ経済学」商標登録のお知らせ】
筆者が2003年から様々な媒体で書き、テレビでも解説してきた「シネマ経済学」ですが、平成28日12月18日付で特許庁(小宮義則長官)により、商標登録して頂き、商標登録証も届きました。以前、共著者が共著を英訳し単著として勝手に出版した事件(現在も係争中)が発生し、皆様からのアドバイスも多数頂戴し、以降、著作権や商標権に真剣に対応するようになりました。今後「シネマ経済学」に興味がある方は、筆者までまずご連絡ください。今後「シネマ経済学」(単語)にも®(Registered Trademark)を付けます。
【「宿輪ゼミ」のご案内】
博士(経済学)・帝京大学経済学部経済学科教授・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生達がもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かりやすいと、経済学博士の講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。いよいよ4月で11周年、開催回数は230回、そして会員は1.2万人を"超えて"、日本一の私塾とも言われています。原則、毎月第1と第3の水曜日に開催。今後の予定は8月23日(水)、9月7日(木)変則、20日(水)に開催。Facebook経由の活動が中心となっており、以下からご参加下さい。
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尚、2017年4月より文化放送「The News Masters TOKYO」に、火曜日朝7時から経済・金融担当でレギュラー出演中。