工場などのものづくり現場で人とともに働くロボット、足腰が弱い高齢者の体力向上やリハビリをサポートするロボット、地下鉄から目的地まで気軽に乗れる移動ロボットーー。
そんな、産業や社会の場で使えるロボットの実現に向けて、さまざまなステークホルダーの橋渡しをするロボットイノベーションコンソーシアムが今年4月に発足し、12日、初会合が開かれた。
コンソーシアムは、産業技術総合研究所に設置されたロボットイノベーション研究センターが中心となって進める。12日時点で、ロボットの開発・販売を手掛ける企業、ロボットを使うサービス事業者や自治体、資金面でサポートをする金融機関など約20社・団体が参加。情報交換や開発・事業化のフェーズごとに部会に分かれてビジネスマッチングが行われる。
また、国の動きとも足並みをそろえる。ロボット革命の実現のために政府が今年1月に公表した「ロボット新戦略」を推進する「ロボット革命イニシアティブ協議会」と連携する。
ロボットはこれまでも研究が続けられてきたが、産業用ロボット以外で生活や医療の現場で活用できるロボットはなかなか実用化が進んでいない。
実用化を加速する企業環境について、コンソーシアム会長でロボットイノベーション研究センターの比留川博久センター長は言う。
「トヨタなどの大企業でもロボット開発をやっているが、事業としてはなかなか難しいようです。実用化を進めるのに一番良いのは、大企業からロボットベンチャーがスピンアウトして開発していくことです」
たとえば、船井電機の研究者らが設立したRTワークスは、歩行アシストカートなどの生活支援ロボットの開発・販売を手かける。
ただ、そのような企業発ベンチャーが増えにくい背景として、「スピンアウトする際に、『うまくいかなかったら研究者は戻ってきてもいい』とするとよいが、現状はなかなかそうなっていない」とも指摘する。
大企業からのスピンアウトが難しいとなると、次に期待できるのが、サイバーダインのような技術を持った研究者が設立するベンチャー企業だ。これまでは資金面で課題が大きかったが、比留川センター長は最近、流れが変わってきていると言う。
「メガバンクなどの金融機関やベンチャーキャピタルは、ロボットベンチャーでの融資先を探していて、最近よく相談に来ます。私たちはよい技術を見分ける『技術の目利き』として連携します」(比留川センター長)
コンソーシアムにはすでに大手金融機関も加入している。
政府は、今後5年でロボットの市場規模を年間2.4兆円に拡大するとしている。なお、現状の市場規模は製造現場向けのロボットが約6000億円、その他は数百億円程度だが、それぞれ、1.2兆円ずつに増やす計算だ。
「ロボット革命」実現に向け、ステークホルダー同士の連携が始まりつつある。