セブ北部バンタヤン島から現地レポート フィリピン台風の爪痕

フィリピン・セブシティは普段の生活を取り戻している。食料品や生活インフラで、特に問題は感じない。ただ、セブ本島は南北に細長く、台風30号の直撃コースにより近い北部は被害が大きかったという。そこで、11月13日にセブ北部のリゾート地の一つ・バンタヤン島へ訪れてきたので、現地の状況をレポートしたい。

フィリピン・セブシティ(前回記事参照)は普段の生活を取り戻している。食料品や生活インフラで、特に問題は感じない。ただ、セブ本島は南北に細長く、台風30号の直撃コースにより近い北部は被害が大きかったという。そこで、11月13日にセブ北部のリゾート地の一つ・バンタヤン島へ訪れてきたので、現地の状況をレポートしたい。

筆者が、国際ボランティア団体Daredemo Heroや語学学校Bayside English Cebuと共に、セブシティを出発したのは早朝5時。まだ人通りの少ない時間帯だが、近隣のガソリンスタンドには、同じく北方へ向かう警官隊を見かけた。最初の目的地は、セブ北部の都市・ボゴシティ。途中、山道では「NEED FOOD」「NEED WATER」と書かれたプラカードを掲げる人々を見かけた。しかし、周辺を見回すと売店が営業し、道路脇にはウォーターサーバーも設置されているため、「巨大台風の影響で、本当に困っている人々か?」の判断が難しいところだ。

ボゴシティへ近付くに連れて、樹木が倒れ、損壊している建物を多く目にする。だが、所々に警官がおり、市内に大きな混乱は見られない。その近くの街・サンレミジオの教会を訪れてみると、屋根が吹き飛び、教会内は水浸しだ。比較的強固な建物に見えたが、それでも台風による被害は免れなかった。

セブシティから片道3〜4時間程でハグナヤ港に到着する。そこからフェリーに1時間ほど乗船すれば、リゾート地・バンタヤン島である。両港では、生活物資を抱えた人々や燃料を搭載したタンクローリーが行き交っていたが、食堂は普段通り営業している。沈没している船も数艘見かけたが、湾岸内で際立つ異変は感じられない。地元住民に尋ねてみると、台風が通過した翌9日、漁網が海に散らばった影響で、ハグナヤ港〜バンタヤン島の船の往来は一回に制限された。だが、それらも一日掛かりの清掃作業で取り除かれ、10日以降は通常通りフェリーが運航している。

バンタヤン島は南から順に、サンタフェ、バンタヤン、マドリデジョスの3つのエリアで構成されている。約5kmずつ離れた各エリア内には、救援所が一つずつ設置された。その中で、観光地として最も賑わい、高級住宅街や旅行者向けの繁華街が立ち並んでいたのが港町サンタフェである。しかし、ほぼ全ての建物が損壊しており、美しい観光地として名を馳せた景観は見る影もない。それでも、同地域は島内南部に位置している分、最も被害が少なくて済んだ。ロウソクを灯しながら営業中のレストランへ入ってみると、ビールを飲む先客もいた。

サンタフェの救援所で陣頭指揮を執るAlbert G. Camayは「救援物資、サプリメント、心のケア、ボランティア、とにかく全てが足りていない。ただ、我々が最も必要としているのはテント、食料、衣服、水、照明だ。我々はこの1週間で既に、今年度の予算を全て使い切っており、次の一手が取れない状況にある。家屋の約95%が損壊しており、地域全体の被害総額は12億ペソ(約25億円)に達するだろう」と語った。

バンタヤン島の収入源は主に3つ。上から順に、観光・鶏卵・干物で構成されていたが、これら全てが壊滅的な被害を受けた。なお、サンタフェで確認されている死者は4名、津波の被害がなかったため路上は乾燥し、異臭を感じることもない。バンタヤン島出身で、現在セブシティで暮らすJessicca.G.Gulane (28歳)はこう話す。

「バンタヤン島には井戸もあるが、長年使われておらず、飲み水としては使えない。停電・断水が続いており、物資も自ら運ぶ必要がある。島内はトライシクルで移動するのが一般的だが、サンタフェ〜バンタヤン間の交通費25ペソ(約60円)が、現在では200ペソ(約460円)まで高騰している。というのも、ガソリンが足りておらず、トライシクル業者も現在使用しているモーターが壊れたら収入源がなくなるからだ」

実際、我々の自動車のタイヤにもネジが刺さり、一度立ち往生した。幸いスペアタイヤを持っていたが、"移動手段"が奪われる恐怖を痛感した。そして、島内で最も大打撃を受けたのが島北部のマドリデホスである。台風の強風を物語るように、道路脇の家屋、樹木、電柱は軒並み倒れていた。この地域は元々、島内の貧困層が生活していた上、港から最も離れているため物資が届いていない。しかし、そんな中でも住民からは笑顔が消えていなかった。フィリピン人は陽気な性格で知られているが、この状況下でもその魅力的な国民性を垣間見れた。

一方、台風30号による被害がフィリピン国内で最も大きかったレイテ島・タクロバンへは、各国報道陣が次々と現地入りしている。しかし、想定以上に悪化した状況へ直面し、現在では「レイテ島からの脱出方法」の情報収集へ注力するチームも少なくないという。現地では食料が不足し、略奪が多発。軍も治安維持に務めているが、飢えた武装集団との銃撃戦も発生している。移動希望者が膨大なため、空路・海路の往復便が全く間に合っていない。伝染病の危険性も高まってきている。

今回の巨大台風による被害状況は、各地域で大きな差が出ている。しかし、フィリピンは島国である上、停電により通信が確保できていない地域も多いため、全ての被害状況を未だに把握できていない。

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