ドラフト1位 今井達也の"人間力"

10月20日開催されたドラフト会議。今夏の甲子園優勝投手である作新学院高等学校3年今井達也が西武ライオンズから1位指名をいただきました。

10月20日開催されたドラフト会議。今夏の甲子園優勝投手である作新学院高等学校3年 今井達也が西武ライオンズから1位指名をいただきました。

また今ドラフトでは、4年前に春夏連続で作新が甲子園出場した際の主将で、現在早稲田大学野球部の主将を務める石井一成も、日本ハムファイターズから2位指名をいただくことができました。

ご支援、ご声援をいただきました皆様方には、心から御礼申し上げます。

本学はもちろん栃木県としても、高校生で1位指名を受けたのは「怪物」と呼ばれた作新OBの江川卓さん以来43年ぶり。その江川さんからも「田中将大投手(ニューヨークヤンキース)や松井裕樹投手(楽天)と遜色ないものを感じる」と期待される今井達也選手ですが、その人となりの一端をドラフト会議中の横顔とともにご紹介します。

夕方5時、ドラフト会議がスタート。当日はTBSが特別番組を放送している関係で、中継カメラの前で今井とともに学院代表としてモニター画面を見守りました。放送前はいつもと少しも変わらず穏やかで淡々とした今井でしたが、オンエア画面を見つめる表情はさすがにちょっと緊張した様子。

でもそうした中、張りつめた空気を緩めたいと私が発する唐突でくだらない質問にも今井はその度、笑顔でしっかり即答してくれます。人生最大とも言える大勝負が決まるモニターをしっかり見つめながらも、一瞬たりともうわの空でカラ返事をしたり、適当に相槌を打ったりはしません。

これだから、甲子園の大舞台で絶妙のタイミングで牽制ができ、グランドの隅々にまで神経を行き届かせた上で、逐次ベストの球が投げ続けられるのだと納得しました。

球団名が呼び上げられ、指名選手の名前が会場の電光掲示板に映し出されて行きます。大学生や社会人選手の指名が先行して行く中、初めは笑顔ものぞいていましたが、

報道で1位指名が有力視されていた中日が他選手を指名した辺りから、表情が険しくなっていきます。マウンドでもそうですが、緊張し力が入ってくると顎が上がるのが彼の特徴ですね。

ただ今回すぐ隣に座っていて感じたのは、これだけ本人は緊張が高まっているはずなのに、呼吸や心拍数にほとんど乱れがないということです。

もちろん血圧計で測っていたわけではありませんが、息が上がり心臓が高鳴ると体温が上がり汗をかくのが常です。特に新陳代謝が良い若いスポーツ選手ならなおのことですが、当日は半袖シャツでも暑い室温で冬服の学ランを着ていながら、彼は汗をあまりかいていませんでした。ため息をつくこともなく、足や肩も微動だにせず、きわめて冷静にモニターに見入っていました。

そして運命の西武ライオンズ指名直前、この表情が

「今井達也」の名がドラフト会場で読み上げられると、こうなります!

ともに見守っていた硬式野球部の岩嶋部長からも、やっと笑顔がこぼれました。

今回のドラフトでは、関東大会直前ということで監督がグランドにいることもあり、記者会見場ではなく控室で指名結果を待ちました。席を立つ際に今井は、自分の椅子だけでなく監督を呼びに控室を飛び出した岩嶋部長の席まで机の下にきっちり戻して、記者会見場に向かいました。

「一球一打に日頃の"人間力"が表れる」と礼儀や言葉遣い、身だしなみや整理整頓など、人格形成の一から指導育成して行く小針監督の薫陶を実感した瞬間でした。

記者会見場には33社、110名を超える報道各社の方々が、全国から駆けつけて下さっていました。そうした皆さんから矢継ぎ早に繰り出される質問にも、今井は一度として言いよどむことなく的確に即答し続け、そのクレバーでスマートな受け答えには我が校の生徒ながら舌を巻きました。

甲子園に出発する宇都宮駅のホームでは、修学旅行に出かけるごく普通の高校生のようにいたずらそうな目をクルクルさせていた今井が、甲子園で優勝、台湾で開催されたU-18でも優勝と大舞台を経験するたび、雄々しく逞しく成長して行きました。

特に、国体が終って現役を引退しプロ志望届を出したその頃から、高校生の今井はすっかり姿を消し、代わってプロとして生きることを決意した大人の今井達也が新たに誕生していました。著しい成長ぶりを頼もしく思う一方で、自分たちの元から既に巣立ってしまったような、どこか淋しさを感じる今日この頃でした。

それでも、記者会見が終わり校庭で待ち受けていたチームの仲間に囲まれると、やはりその笑顔は無邪気ないつもの今井に戻ります。祝福と願いを込めて、作新時代の江川投手の写真をチームの仲間が持たせてくれました。

プロとしての道のりには数々の苦難が待ち受けていることと思いますが、良き仲間、良き師、良きファンに支えられて、納得の行く選手生活を一日でも長く送れることを心の底から祈っています。

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