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2018年07月24日 13時48分 JST | 更新 2018年07月24日 13時48分 JST

反戦地主だった又吉イエス、素顔は「沖縄の普通のおじいちゃん」だった。

冷笑主義に陥る日本で、私が彼から感じ取ったこと

「腹を切って死ぬべき」「地獄の火の海に投げ込む」

インパクトが強い政策を訴える"泡沫候補"として知られる又吉光雄(又吉イエス)さんが亡くなった。

木内慧
又吉光雄さん=2013年7月7日、東京都新宿区で撮影

私は、生前の又吉さんに何度かお話を伺ったことがある。故人を偲んで、政見放送やポスターの強烈な印象とは少し違った、又吉さんの人柄を紹介したい。

  

「普通の沖縄のおじいちゃん」だった

趣味で候補者のおっかけのような事をしていた私は、2013年の参院選の際、東京・高田馬場にある世界経済共同体党の本部を訪ねた。古い雑居ビルの一室、8畳ほどの冷房が効いていないワンルームに、雑然とノボリやビラが置かれている。

突然訪ねたのにも関わらず、年配の女性が丁寧にもてなしてくれた。運動員の方かと思ったが、聞くとお連れ合いとのこと。

「唯一神はそろそろ戻ると思いますので、お待ちください」

聞きなれない三人称を使っている事を除けば、いたって普通の方だ。聞けば、選挙運動中はアルバイトを雇っているが、普段は基本的に夫婦で政治活動をしているという。

「なんとしても、唯一神を当選させたいんです」

と熱く語るお連れ合い。その言葉の浮世離れ感と、真剣さのギャップが奇妙だった。参院選の東京都選挙区は、都内全域が選挙区となるため、公設掲示板のポスターも満足に貼りきれず困っているという。

ぜひ手伝って欲しいと頼まれ、何枚かポスターを預かってきたものが今も残っている。(当時は未成年で、選挙運動を行なうと違法になるため、掲示板には貼れなかった)

木内慧
2013年参院選のポスター。仮にこの時当選していれば、来年改選を迎えていた。

しばらくして、選挙運動の合間に休憩で本部に戻ってきた又吉さんが現れた。お連れ合いが私を紹介してくれる。政見放送のイメージしか無い私は身構えたが、口を開くと沖縄なまりで喋る物腰の柔らかいおじいちゃんだった。

又吉さんは沖縄県出身で、2002年の沖縄県知事選で「県知事にしないのならば東京に行く」と公約し、翌年に拠点を東京に移している。

  

「国連事務総長になる」

休憩の間、私は又吉さんにいくつか質問をした。嫌な顔一つせず、真剣に答えてくれたのが印象に残っている。

選挙資金はどこから出ているのかと問うと、普天間飛行場の中に土地を持っていて、補償金が入るのでそれを活用しているとのことだった。

米軍の沖縄駐留には反対しているので、反戦地主(国との土地の賃貸契約を拒否している地主)だそうだ。世界経済共同体党のウェブサイトを見ても、詳しい補償金収入について書かれている。

しかし、ここで別の疑問が生まれた。又吉さんが唯一神なのであれば、沖縄から米軍を追い出すくらいの力はあるだろうし、そもそも選挙の結果くらい簡単に操れるのではないだろうか、と。

そのことを問うと、少し戸惑った感じで「私が創った世界が複雑になってしまって、当初考えたものと違う動きをしてしまっている。だから選挙に出て、正そうとしているのです」と答えた。神になっても一筋縄にはいかないのだ。

唯一神と自称する又吉さんの目標は何なのか問うと、「まずは首相になって日本を立て直し、ゆくゆくはニューヨークに渡って国連事務総長になります」と笑顔で語ってくれた。

ちなみに、政見放送での独特な喋り口は「沖縄出身なので、なまりが出ているのでしょう」とのことだった。私は大学で沖縄近現代史を専攻しており、しばしば現地の方のお話を聞く機会を持っているが、沖縄の人でああいう喋り方をしている人に出会ったことはない。そもそも、この質問をしている時は普通に喋っているのだけども、それ以上は突っ込まなかった。

  

勝てない選挙をたたかう人々

"泡沫候補"と呼ばれる、当選の可能性が極めて少ない候補者たち。又吉さんもそのひとりだった。

激戦の東京都選挙区で、「再誕のキリスト」を自称して選挙戦をたたかうなど、側から見ると、荒唐無稽な行動に見えるが、彼には彼なりの思いがあったのだろう。

常に訴えていたのは「自分を大切にするように、他人も大切にするべき」という博愛精神のような話で、自身が反戦地主であるということもあってか、基地問題についても熱心に語っていた。

私の周りには「どうせ政治じゃ何もかわらない」というようなことを言う人が多い。しかし、そんな冷笑主義的な態度よりも、勝てない選挙で自分の主張を剥き出しにして語る"泡沫候補"の方が、私にはマトモな主権者に見えた。やり方が王道から少しズレていただけで。

国連事務総長になる野望は果たせなかったが、又吉さんのインパクトによって政治に興味を持った人が、世界をよりよくしていくかもしれないな、などと考えた。お悔やみ申し上げます。