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2015年09月04日 15時56分 JST | 更新 2016年09月03日 18時12分 JST

安保法制の致命的な欠陥~政府も認めた以上、法案は撤回・出直しを~

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◆国外犯処罰規定の新設


現在参議院で審議中の安保法制の中では自衛隊法を改正して国外犯処罰規定を新設することにしている。この規定を設けることについては私も一定の評価をしている。それどころかこうした規定を作るべきだと主張してきたのはこの私である。

自衛隊員であっても犯罪を起こす可能性はある。当然、海外派遣中に犯罪をおかす可能性もあるのである。海外でおかした犯罪は不問に付すというわけにはいかない。それだけに、これまでのように自衛隊が海外に派遣されているにもかかわらず国外犯処罰規定がなかったことの方がおかしかったといえる(自衛隊法が制定された頃は海外派遣などは想定していなかったため国外犯処罰規定が無かったと考えられる)。

◆不当な武器使用がなぜ裁かれないのか


ところが今回新設の国外犯処罰の条項には決定的に重要なものが抜け落ちている。自衛隊法の罰則には「武器の不当使用」(118条1項4号)の規定がある。そのため国内で「武器の不当使用」をすれば当然罰則がかかってくる。ところが新設の国外犯処罰の規定からこの部分はすっぽりと抜け落ちている。その結果、海外で武器を不当に使用しても、罰則はまったくかかってこないのだ。

自衛隊の武器使用というのは細心の注意を払うべき問題である。だからこそ「こういう場合には武器が使用できる」、「こういう場合は正当防衛や緊急避難の時だけ使用できる」といった規定が細かく定められている。しかしどんなに規定をきちんと定めてもこれでは無駄と言わざるを得ない。その規定を破ったとしても何の罰則もないのだから。

◆仏作って魂入れず


では政府は自衛隊法に国外犯処罰規定を新設していったい何を罰しようとしているのか。法案をよく読むと自衛隊員が海外でストライキやサボタージュをした時に処罰するといった話が出てくる。他にも睡眠や酩酊で職務を怠った者なども刑事罰の対象にしている。確かにそうした自衛官は処罰の対象にすべきだろう。そのことには私も異存はない。

しかしこの問題の本質は、海外(国内でも当然だが)で自衛隊が勝手に部隊を動かしたり、勝手に武器を使用するようなことは絶対に許さないということにあるはずである。こうした勝手な行動を容認してしまえば満州事変のような戦前の軍の暴走につながりかねないからである。この一番肝心な部分に触れないまま国外犯処罰規定だけを新設しても「仏作って魂入れず」と言わざるを得ない(部隊の不法指揮は国外犯の対象になっている。これは一定の評価はできるが罰則が軽すぎるという問題は残っている)。

◆欠陥があるなら法案撤回を


本日(7月29日)の委員会質疑でこの問題について安倍総理、中谷防衛大臣に質問をした。二人とも「確かにこれは問題がある」とは思ったのだろう。それはそうだろう。海外派遣中の自衛隊が勝手に発砲しても、命令以外の武器を使用しても罰則は何もかかってこないという法案に対しては問題だと思う方が常識である。

そこで二人ともこの課題は別途考えていく、別途対策を講じるという趣旨の答弁をした。「別途」というのは現在審議中の安保法制とは「別途」ということである。分かりやすく言えば、水野賢一の指摘は確かにもっともな指摘なので対応策は取らなくてはいけないが、それは安保法制の成立後に追い追い実施するということである。

しかしそんな逃げ口上は許されない。総理や担当大臣が「別途」対策を講じる必要があると認めたということは法案には欠陥があるということである。それならば欠陥法案は撤回すべきである。そしてどうしても国会審議をしたいというならば欠陥や不備を直してから国会に出直すのが筋ではないだろうか。

(2015年7月29日ブログより)