みなさまこんにちは。お腹を空かせてお待ちでしょうか。KitchHike編集部のスズキです。
KitchHikeインタビュー企画第3弾・『簡単なのに美味い!家めしこそ最高のごちそうである。』の著者、佐々木俊尚さんインタビュー後編。インタビュー前編では、台所に颯爽と立って調理をしていただきながら、家めしに至るまでのストーリーを聞かせていただきました。
いよいよ佐々木さんの家めし実食&佐々木さんの奥さまも加わり、初夏にふさわしいワイワイの後編スタートです!
完成した食卓を前にパチリと一枚、撮らせてもらいました。
■本日の家めし献立
・夏みかんとゴーヤの冷やし中華
・ピーマン肉炒め
・キャベツのタイ風 塩もみ
・炒めないにら玉
・ごちそうおひたし
夏みかんとゴーヤの冷やし中華
ゴーヤと夏みかんのコントラストが美しい!
佐々木さんの著書『いつもの献立がごちそうになる!新・家めしスタイル』にも登場。
「ゴーヤはワタを取れば、他の下処理をしなくても苦くない」という佐々木さん技で、本当に苦くなくバクバクいけちゃいました。夏みかん×冷やし中華も斬新ですが、とても合うのです!見た目もとっても鮮やか。
ピーマン肉炒め
ピーマンも生き生きしているように見えます。
味付けは、醤油とみりんだけで昔から作っている定番料理だそう。
「ピーマンは普通は繊維に沿って切るけど、この方が見た目もキレイだし美味しい」とまたまた佐々木流家めしワンポイント。定番料理でもアップデートして、やっぱり家めし歴16年の先輩はすごいっす。
キャベツのタイ風 塩もみ
料理をさらに引き立てる素敵なお皿たち。「和食器が料理を美味しく見せる」と佐々木さん。
ナンプラーとレモンで、ひと工夫された塩もみ。とてもさっぱりしていて、夏にピッタリ!ほのかに香るタイの薫り。
炒めないにら玉
ポイントは巣のような盛り付け。卵もツヤツヤして見えます。
「あっと驚く、驚異のにら玉」と、家めしスタイルでコメントされていますが、まさに驚きの一品。実は、私事ですが定番のにら玉がニガテ......が、しかし!!こちらを頂いて、「......!!!美味しい!」と声を上げてしまいました。騒がしくてすいません、佐々木さん。にら玉を好きになりました。
ごちそうおひたし
鰹節など余計な物はいらず、醤油だけで十分美味しい。
佐々木さんの代表的家めし!
- 事前に水に生けて葉をパリッとさせる。
- 湯温が下がらないように1株ずつ茹でる。
- わずか10秒だけ茹でる。
これが普通のおひたしをごちそうにするポイントだそう。野菜だけでも十分にごちそうになる、ということを実感、体感。
■断食を経て味覚が鋭敏に
これぞ家めしの完成形。まさに「最高のごちそう」です!
奥さまは、ずっと佐々木さんの料理を食べているんですねぇ...
-奥さま (以下、松尾、佐々木さんの奥さまはイラストレーターの松尾たいこさん)
料理が苦手だったからすごいラッキー♪と思いました (笑) 私お湯沸かすのも、ちょっと億劫なんですね。だから毎朝彼がポットに紅茶やらハーブティーやら作ってくれて、それを仕事の合間に飲みます。コーヒーも自分で淹れないので、いつも作ってくれます。
(本気でうらやましい......) ......佐々木さんモテますよね?!
-佐々木
いや、どうですかね (笑)
(笑)。初めて作ってもらった料理は覚えていますか?
和服がとても似合うイラストレーターの奥さま。
-松尾
バターたっぷりのオムレツと具だくさんスープだった気がする。昔はこってり系が多かったので、彼の作る料理もだんだん変わりました。
-佐々木
断食行くようになってから食も変わりましたね。
断食は......したことが無いのですが、やっぱり癖になるんですか?
-奥さま
癖というか、時々リセットしないと忘れちゃうので。
-佐々木
自分の立脚点を再確認する感じなんですよね。東京で日々暮らしていると、体重も微増していくし、澱が溜まるというか。それが落ちる感じですね。
味覚も変わるんですね。
断食未体験の編集部に、断食とは何なのかを語る佐々木さん。
-佐々木
舌が鋭敏になるんですよね。なので作る料理もだんだん変わりましたね。少食にもなって最初の一年で9kgぐらい落ちましたね。今でも年に1回行きますが、3kgぐらい落ちます。みんなにお勧めするんだけど、ハマる人はすごいハマりますね。
断食というと道場のようなストイックなイメージがありますが......
-松尾
そんなにストイックではないんですよ。私は断食はしなくて、普通食コースで参加してます (笑)。
1日1,000キロカロリーぐらいの食事で、それだけでも2kgぐらい落ちますね。岩盤浴と温泉も入り放題なので。
行ってみたくなりましたね (笑)。
■"こだわらない"ことでわかったこと
奥さま作の食器!食事をするのが楽しくなりますね!
好きな食べ物とか、ビールの銘柄とか (笑) 食で何かこだわりはありますか?
-佐々木
こだわらないですね、何も。こだわると面倒くさいし。調味料は料理の味に影響するのでこだわりますが。
キリがないですよね。
佐々木さんの愛車、FUJIのピストバイク。遠征に行かれることも。
-佐々木
こだわるとそれが無い時に対処出来ないんですよね。例えば山に行くと、ちっちゃなストーヴが1個と、小型の鍋でぐらいで作らないといけないし。友達の家で料理することもたまにありますが、手ぶらで行って、行った先のスーパーで買い出しして、そこにあるモノだけで作りますね。
この前も福井の古民家をリノベーションした家 (現在、東京・軽井沢・福井の3拠点生活中) に行った時に、ものすごい巨大な炊き出しみたいな鍋と、本当に小っちゃい鍋しかなくて (笑)。
その巨大な鍋で肉じゃがを作りましたけど (笑)。でもなんとかなるんですよね。
限られた物で良い仕上がりにする、工夫が凄いですよね。普通の人は「アレがないコレがない」に陥って、苦手だと思います。
-佐々木
山とか行くと、例えば箸を忘れた!とかありますが、木の枝で作ったりとか。なければなんとかなる、っていう世界なんですよね。
■家めしこそカッコいい時代
最近、家飲みや家めしが流行っていますよね。
-佐々木
近代が終わっていろんな感覚が中世に戻っていくっていうことは起きるんじゃないかと思います。
近代は成長する時代で、産業革命があって、工業化して、お金が入って豊かになる時代。
そういうのがなくなった現代は、飢え死にするのは嫌だけど、お金もそんなに無くていいやという感覚になってきてるでしょ。この緩い感じが長く続けば良いというような。
ほんの20年ぐらいまでは、良い会社に入って、結婚して子供産んで、マイホーム持って......っていうのがあったけど、最近は無いし、高いフレンチに行って、良いスーツ着てメシを食べるっていうのにふさわしい人間になろうっていう向上心があったけど、もはやそれは恰好良くない。それよりも自分でTシャツ作ったり、家でメシ作っている方がカッコいいですよね。
確かに、今はそういう感覚を持っている人が多いですよね。そういう人こそ生きる知恵がありますよね。
家めしの哲学から、社会の在り方まで、話題は尽きません。
では最後にどうしても聞きたいことが......
佐々木さんが地球最期の日に食べたいごはんは何ですか?
-佐々木
誰もいなくてもいいけど、自分で炊いた白いご飯で作ったわさび飯かな。
わさび飯......??
-佐々木
昔住んでた神楽坂の、老舗の居酒屋のメニューですが、釜戸炊きご飯に蝦夷わさびをどさっと乗っけて、のりと醤油をかける。これが死ぬほどうまい (笑)。 家でも作ります。
シンプルだけど究極ですね!
インタビューはここまで!「シンプルだけど美味い!」な名回答で締めて頂きました。
佐々木さんもKitchHikeもフォーカスする家めし。各個人や各家庭が創意工夫することによって、変幻自在に魅力を増して変化していく家庭の料理。同じ素材でも、調理方法や工夫、考え方、それに盛りつけで、料理にも本当にいろいろな個性が宿っていきます。読者の皆さんも是非、オリジナルの家めし作りに挑戦してみては?
『簡単なのに美味い!家めしこそ、最高のごちそうである。』に続く第2弾。詳細のレシピも載っています。
それでは、最後に佐々木さんの著書からのメッセージを。
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珍しくて高い食材を使い、お金がかかり、ブランド志向な「美食」ではなく。
お金はかからないけど、不健康で太ってしまうコンビニ食のような「ファスト食」ではなく。
健康的かもしれないけれど、意外とお金はかかるし、つくるのに手間がかかる「自然食」でもなく。
そうじゃない中間のあたりに、もっと健康的でもっと美味しくて、お金もかからず、そしてかんたんで「シンプル食」があるということを提案したいのです。
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佐々木さん、ご協力ありがとうございました!ごちそうさまでした!
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(2015年6月18日「KitchHike マガジン」より転載)