スティーブ・ジョブズ最後(?)の発明:その意外な中味

アメリカのQAサイトQuora で知りましたがスティーブ・ジョブズを発明者とする特許出願がつい最近の9月18日に公開(20140277850 )されています(公開されただけでまだ権利化はされていません)。

アメリカのQAサイトQuoraで知りましたがスティーブ・ジョブズを発明者とする特許出願がつい最近の9月18日に公開(20140277850)されています(公開されただけでまだ権利化はされていません)。

(出典:USPTO)

スティーブ・ジョブズは生涯で300件以上の特許を取得しています(その多くはデザイン特許(日本でいう意匠権)ですが、技術的な特許も数多く取得しています)。今回公開になった特許もデザイン特許ではなく、日本でいういわゆる特許に相当する技術的なものです。実質出願日は2013年3月15日です。ジョブズの命日は2011年10月5日なので、ジョブズの死後、共同発明者たちが改良を続けて特許出願にまで持ってきたということでしょう。おそらく、ジョブズの発明による最後の特許出願といってよいのではないかと思います(これ以降は絶対にないという保証はないですが)。

さて、中味も意外なんですが、まず意外なのは出願人(正確に言えば譲受人)が、Appleではないということです。Savant SystemsというiPhoneやiPadを使ったホームオートメーションを行なう会社です。

一瞬、これは同姓同名のSteven P Jobsさんなのではと思いました。米国公報は発明者の住所が市レベル(カリフォルニア州パロアルト市)までしか載ってないので同姓同名の可能性はなくもないと思いましたが、公報とは別の審査資料を見るとSteven P Jobsは既に亡くなったと描いてあります。パロアルトに住んでiPhone関連の発明をして既に亡くなっているSteven P Jobsさんと言えば、あのスティーブ・ジョブズしかあり得ないでしょうね。

(出典:USPTO)

さて、特許出願の中味なんですが、これもちょっと意外で、ヨットなどの乗り物をタブレット機器で無線でコントロールするというアイデアです(上図は操作画面のイメージです)。ジョブズがヨットを趣味としており、ビーナス号という豪華ハイテクヨットを作っていたのは知られています(参照記事)。この時にSavant Systemsに制御関係を依頼し、そこでジョブズが思いついたアイデアをSavant Systemsが特許化しようとしているということなのかもしれません(もちろん、ジョブズあるいは遺族の許可をもらってです)。要するに、完全にジョブズの趣味の世界の話ということです。

しかしその一方で、HomeKitでホームオートメーション戦略を推進していくAppleが、Savant Systemsと単なるアプリデベロッパー以上の関係を築こうとしている(していた)ということも考えられなくはありません。ちょっと気になることころです。

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(2014年9月26日「栗原潔のIT弁理士日記」より転載)

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