習近平主席訪米に対する米国側の受け止め方と米中関係の課題<米国出張報告(2015年9月21日~10月1日)>

安倍総理の訪米は米国側から大成功だったと高く評価されたが、習近平主席の訪米は…

◇ 9月22日から28日まで、習近平主席が米国を公式訪問した。4月下旬の安倍総理の訪米が米国側から大成功だったと高く評価されたが、今回の習近平主席の訪米に対する米国側の見方は対照的とも言える低調な評価だった。

◇ 経済界との交流では一定の成果を収めたが、両国政府が共同で声明を発表できたのは唯一気候変動に関する合意だけで、サイバー攻撃、南シナ海問題など、その他の重要テーマについては実質的に中身のある合意はなかったと見られている。

◇ 本年5、6月以降、米国内で中国を批判する声がますます強まってきていた中での訪米だったため、米国の有識者・専門家は、こうした結果になることを予め想定していたことから、ほぼ予想通りの結果だったと受け止めている。

◇ 今回の訪米が最近の米中関係悪化の方向を改善するような成果を生まなかったことは明らかである。現在の大統領選挙キャンペーンにおける厳しい中国批判のトーンを考慮すれば、米中関係を改善することの難しさが改めて認識されたと言えよう。

◇ 米国の対中外交姿勢にはサイクルがあり、次期政権が発足すれば、現在のような厳しい対中批判はトーンダウンし、より現実的な融和路線に移行するとの見方が多い。

◇ 最近になって、中国によるサイバー攻撃の対象が米国政府機関のみならず、米国の民間企業にまで拡大され、重要な機密情報が流出したことから、経済界が中国に対する反感を強めた。これにより米国経済界が米中間の緩衝材として機能しなくなったことが、最近の米中関係悪化の主因であると指摘されている。

◇ 米中両国とも相手国の経済を過小評価し、双方が互いに相手国に対して強気の姿勢で臨んでいる。これも現在の米中関係悪化の一因となっている。こうした米中間のミスマッチが生まれる構造的な問題は両国間の円滑な意思疎通を図る仲介役の不足にあると見られている。

◇ 米中両国とも世界のグレートパワー(超大国)ではあるが、以前の米国のような圧倒的に強い一極覇権国家になることができない以上、他国に対して協調的な融和姿勢を示す必要が生じつつあるように見える。ここに米国中心の一極覇権国家体制から多極化へと向かう中での新たな世界秩序形成の姿が現れ始めていると考えられる。

◇ 日本の安保関連法の成立に対して、米国有識者・専門家はこれを高く評価し、今がオバマ政権発足以来、日米関係が最高にいい状態にあるとしている。しかし、安保関連法に対する多くの日本国民による反対運動が展開されたことから、日本政府が米国との防衛協力強化のための具体的施策の実施に動き出す際に、多くの日本国民が反発する可能性が高まったのではないかと不安視する見方もある。

全文はキヤノングローバル戦略研究所のHPよりご覧ください。

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