自分らしく働き続けたい...... それは、誰もが願う姿、かもしれません。しかしママになった途端、それを制約とみなされて(みなして)しまう現実もあります。
昨年設立された、全員ママによるデザイナー集団 mom.entの皆さんも、葛藤と挑戦を日々、続けていらっしゃいます。(詳しくは前回記事「緊急座談会 クリエイティブは効率化だけじゃない! ママクリエイターたちのアイデンティティー」を参照)
そんな彼女たちが主催する初のセミナーイベント「WORK-RE PARTY(ワークリパーティ)」が5月19日、GOBLIN.代官山で開催されました。社会・企業・個人のそれぞれの視点から学び、ママクリエイターだからこその悩みや課題を、仲間たちと共に学び共有。自分らしく "働く"ということについて向き合うきっかけに、と企画され今回が記念すべき第一回目となりました。当日はキーノートスピーチ、トークセッション、交流会という3部構成。それぞれどんな気づきが得られたのでしょうか? イベントレポート前編では、働き方改革が世間から注目され続けている企業にてクリエイティブディレクターをつとめる
長濱孝広氏のキーノートスピーチの様子をお届けします。
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第1部 キーノートスピーチ
「MOM IS WOW♪ ママは制約? とんでもない、飛躍人材です」
●長濱 孝広氏(クリエイティブディレクター)
自社商品ブランドのプロモーション、企業ブランディング、インナーコミュニケーション、働き方改革、ダイバーシティ、採用コミュニケーションなどコンセプトワークを中心に担当。
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「生き方」と「産み出し方」のパラダイムシフトについて
長濱 孝広氏(以下、敬称略。長濱):働き方改革のコミュニケーションデザインを担当しています。テーマを探求していくにつれて「なぜ働くのか」「なぜ生きるのか」という深い問いになっていきました。これは子育てや教育などにも広げられると思い、今日お話しさせていただきます。僕自身、小6と高1の娘がいて、妻も教員という共働き家庭なので、自らの気づきも交えてお話ししますね。
僕は「働き方改革」を「生き方」「産み出し方」の話と捉えました。
ここにパラダイムシフト(価値観の劇的変化)が起きると、すごいブレイクスルーが起こるのではないか......! と考えているのです。では詳しくご紹介します。
「生き方のパラダイムシフト」が起こる時—子どもができた時
長濱:人それぞれタイミングは違うと思いますが、私が"生き方のパラダイムシフト" を起こした時は、やはり子どもができた時でした。物事のあらゆる優先順位がガラガラと変わりました。
若手独身の頃は、ほぼ世界の全てが仕事中心で。しかし、結婚・子育てが始まると仕事だけじゃ成り立たなくなってきています。ワークライフバランスを取るために、仕事と人生を天秤にかける...... これだけでは股裂状態で苦しんでしまいます。そこで、「仕事は人生のうちの一つで、育児や介護、地域、複業など、いろいろな要素が惑星のように取り囲んで "幸せ" が照らされるのだ」、という考え方にもう一歩、進みました。
「産み出し方のパラダイムシフト」すべては好奇心からはじまる
長濱:次は産み出し方についてのメカニズムを説明します。以前は、「時間をかけただけ仕事の質が上がる」という風潮がありました。しかし、時間が限られてくると、やはり発想を変えないといけない。
こちらの図は「産み出し方のパラダイムシフト」が起こるメカニズムを、植物のサイクルにあてはめて描いてみました。見てもらうとわかるように、幸せのはじまり(種)となるのは、とにかく好奇心です。
- 好奇心(CURIOSITY)
...とにかく小さな種でもまいてみることから始まります。
毎日子どものように気づきや、驚きはありますか?
常識や先入観、無理な働き方が好奇心を枯れさせます。
- 受容性(INCLUSION)
...芽が出るかもわからないけど、土を耕し、水をやり続けること。
そんな自分自身への、子どもへの、周りの人への、失敗や挑戦を見守る
優しさはありますか? 受容性は人を進化させる愛ですから!
- 多様性(DIVERSITY)
...受粉するためにアピールする花はまさにデザイン。
いろんな花を咲かせて。みんな違う! みんな素敵!
短所も長所の精神で100人100色の考え方を。
- 社会性/利他性(SOCIALITY)
...植物は自分では動けませんが、虫に受粉され、動物に食されて移動します。
世のため、人のため。その利他性が進化を加速させます。
- 共創性(CO-CREATION)
...そしてまた種が生まれます。個人戦ではなく団体戦へ。
感動の品質を目指して、いつも刺激ある仲間とともに。
- 革新性(INNOVATION)
...偶然を楽しむ心で、今の自分を追い越していきましょう。
次なる新しい好奇心が待っています。
このサイクルを頭に置いておくと、今、自分がどの状況にいるのかがわかると思います。
産み出し方のパラダイムシフトは、とにかく好奇心が起点。それは直線ではなく、円のように回って循環してゆくサイクルなのです。その起点となる好奇心が妨げられることは、クリエイターとしてだけでなく、ビジネスマンとしても由々しきこと。学ぶ意欲もなくなるし進化もありません。しかしママもパパもやることが多すぎて、大人は好奇心を失いやすい条件が整っているのです。
そんな中、子どもたちは好奇心の先生。毎日先生の隣にいられる子育ては素晴らしい成長機会なのです。スタートさせるために不可欠な好奇心を、もう一度復活させるチャンス。そこに時間を投じるのは全く惜しくないなと、僕自身も子育てしていて思いました。
お伝えしたかったのは ママは足かせではなく「飛躍の瞬間」にいるということ。そこに気づいて欲しいのです。つまり、生き方、産み出し方のパラダイムシフトが同時に起こる可能性のある、奇跡のような瞬間にいるのです。ママはこれからの社会を変えていくと本気で思っています。今日の話がみなさんの勇気になったらいいなと思います。ありがとうございました。
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長濱さんのお人柄か、終始とても和やかな雰囲気で、聞いているこちらがワクワクしてくるような、そんなキーノートスピーチでした。それにしても今の自分が「飛躍の瞬間」にいるだなんて! 「仕事をする上では制約でしかない」と思い込んでいただけなのですね。確かに。思い返せば人生において何事にも代えがたい、素晴らしい時間をもらっているな、と思う瞬間は本当にたくさんあります。そこと仕事を切り離す必要はないのですね。好奇心、受容性、多様性、社会性...このサイクルをいつも心に留めておきたいと思います。とても励まされる講演でした。後編では第二部のトークセッションを中心にお伝えします。
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取材・文/飯田りえ
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