出産後に大きく変わった、仕事と夫婦関係それでも自分の人生を切り開きたい

結婚だけでは何も変わらない。

こんにちは、今西由加です。

前回の記事では今までの私のキャリアに関してお伝えしましたが、第二回目の今回は、「結婚・出産というライフイベントと、それがキャリアや夫婦関係にもたらす影響」について書いてみたいと思います。

結婚や出産は、女性のキャリアに大きなインパクトをもたらします。もちろん男性にもインパクトはあると思いますが、特に出産に関しては、精神的にも肉体的にも女性のほうが影響を受けるのではないでしょうか。今回は結婚・出産を通じて、私自身にどんな変化が起こったのかを振り返ってみます。

結婚だけでは何も変わらない

私が結婚したのは27歳の時でした。

どうしてそのタイミングで結婚したか...... すばりその理由は、当時借りていたアパートの更新タイミングがちょうどやってきたからです(笑) また2年更新するのか、それとも結婚して新居を構えるのか。長年同じアパートに住んでいたので、そろそろ環境変えたいと思っていたこともあり、結局アパートは更新せずに結婚することを選びました。

今思い返しても、比較的カジュアルに決断した結婚だったと思います(笑)

では、結婚して何が変わったかというと、正直とくに生活の変化はありませんでした。

その頃私はソニー・ミュージックエンタテイメントという会社に勤めていて、日々忙しく働いていました。終電前に帰ることの方が珍しく、海外との電話会議やアーティストのマネージャーからの問い合わせなどで、夜中も電話やメールで仕事をすることも少なくありませんでした。海外出張も、多い時は月に3回ありました。

ですから、家事は最初から夫と分担です。食事も作れないことが多かったので、外食で済ませることも多々ありましたし、音楽業界やマスコミ業界の方々との飲み会も多く、ひどく酔っ払って帰宅した夜も数限りなくあります......(苦笑)

このように、私の場合は結婚後も独身時代と変わらないペースで仕事をし、夜も出歩いていました。一方でこの状況は、周りの友人達と比較すると、比較的レアケースのようでした。

なぜ結婚したあとも、独身時代とあまり変わらないスタイルで過ごせたのでしょうか。

そこには我々夫婦ならではの、互いに対するスタンスが大きく関わっています。結婚当初から、それぞれが自立しているからこそ干渉しすぎない関係がありました。

人生は一度きり! と考えて、相手の興味があること、やりたいと思っていることを邪魔しないのが大前提。

もちろん相談事があれば真っ先に話す相手ではありますが、まずは互いに自分の考えをしっかり持つことを心掛けていました。

ですから、私が仕事に夢中になって打ち込んでいる時に、夫は何一つ文句も言わず、常にサポート体制でいてくれました。

例えば、婚姻届を提出しようと思っていた日(結婚記念日)に私に海外出張が入ってしまい、結局彼が1人で婚姻届を出しに行ったり。結婚式を予定していた日に彼に長期滞在出張が入ってしまい、結婚式を3ヶ月間延期したこともありました。

主人と私

夫婦といえどそれぞれ独立した人間です。自分にとって心地よい結婚生活を送るためには、お互いの譲れない部分や価値観の違いを理解すること、相手の邪魔をしないことが重要だと思います。

自らがワーキングマザーのロールモデルになる

変化が訪れるきっかけとなったのは、子どもを持つことについて考え始めたときでした。

30歳を目前にして、ふと「このまま、この会社で家族を持てるのだろうか」と立ち止まったとき、周りを見渡せば、その当時は子育てをしながらソニーミュージックで働いている女性はほとんどいませんでした。社内で女性のロールモデルになかなか出会えなかったのです。

「ここで子どもを持つのは難しいのかもれない......」

そう思い、転職活動を始めました。

そこでご縁をいただいたのが、フランスの化粧品会社クラランスです。

(ちなみに、私は今まで4回転職していますが、転職に関して事前に夫に相談したことはなく、この時も相談せずに自分一人で決めました。それも、私の決断を彼はサポートしてくれるという自信があったからだと思います。)

クラランスに入社して、マーケティング・コミュニケーション担当として働いて2年が過ぎた頃、妊娠が発覚しました。

直属の上司には安定期に入る前に妊娠を伝えました。人数も限られた部署で働いていたので、その時の私は周りに迷惑がかからないよう、仕事を辞めるつもりでいました。

「妊娠しました。出産は8月末なので、7月中旬ごろに退職させてください。それまでに新任の方にちゃんと引継ぎします。」

そう伝えると、上司からは

「子どもが少し大きくなったときにもう一度働きたいと思っても、あなたの条件に合うところに就職するのは難しくなるのでは? 今と同じように働けない可能性が高いと思う。

うちのマーケティング部にはワーキングマザーもいないしロールモデルもいないかも知れない。でもだからこそ、あなたがロールモデルになったらどう? この会社で子どもを産み、育てながら働くというスタイルをあなたが作ればいい。」

というとても嬉しい言葉が返ってきました。

上司にとって私の妊娠はサプライズだったにも関わらず、その場でそこまで言ってもらえるとは予想していませんでした。

その当時はノマドという言葉も存在しておらず、クラウドソーシングのようなサービスも全くなく、今と比較すると、独立するには高い壁がありました。

自分で起業するなど、まだまったく考えていなかった私は、会社員として引き続きキャリアを積むことを選んだのでした。

クラランス時代の私

出産後、女性は必ず大きな変化が

息子が生まれて8ヶ月後、クラランスに復帰しました。

自由に好きなだけ働いていた私にとって、職場に復帰するまでの8ヶ月間は試練の日々でした。

私が世の中で1番嫌いな睡眠不足が何ヶ月も続きます。自分のペースでできることはほぼ皆無。日中、大人と会話をすることもほとんどありません。

家にいると煮詰まるのでとにかく散歩したり外出したりして一日をやり過ごしていました。当時はスマホもなく、SNSもなかったので、社会から取り残されて、追い詰められていたように感じていました。

無事に保育園が決まり、復帰してしばらくは、「ゆっくりランチが食べられる!」「自分のペースで街を歩ける!」「移動時間中に本が読める!」など、たわいのない事実にいちいち感動したのを覚えています(笑)

子どものことはもちろん大切ですし、一番に守らなければいけない存在ですが、私には子育てに専念するという選択肢がないことを悟りました。

子どもがいても、自分の好きなことや、やりたいことを諦めたくない。主導権を持って自分の人生を切り開いていきたい、と感じている自分に改めて気づいたのです。

夫婦間の変化

子どもができてからは、それまで自由を尊重していた夫婦関係にも、色々と制限が出てきます。

歩み寄らなければいけないこと、分担しなければいけないタスク、様々なスケジュール調整など、やることが山積みでした。

金融に勤める夫は朝も早く、夜も遅いため、保育園の送迎ができず、平日はいわゆるワンオペでした (その頃はワンオペということがありませんでしたが......)。

私は時短で働き、子どもの面倒は基本的に私が請け負っていました。

「早く帰っているからには、夕飯作らねば」というプレッシャーを(勝手に)感じていたため、帰宅後は、子どもの面倒を見ながらキッチンに立ち、てんやわんや。

保育園入ってから1年ぐらいは、色々な病気をもらってくる息子の看病があり、まともに1週間仕事に行けたときのほうが少ないかもしれません。

会社に申し訳ない気持ちもありつつ、だからといって他に代わってもらう人もおらず、「私だけが仕事と育児の両立をしなくてはいけない」という理不尽さに腹が立つことがありました。

そしてそれが爆発し、夫を攻撃したこともたくさんあります。

結局は答えが出ない不毛な結果に終わることが多く、お互い疲れてしまったことも。

そんな中、私が気づいたのは、「コミュニケーションスタイルの違い」と、「伝わるように伝えることの大切さ」です。

私の頭に浮かんだことを感情のまま話しても、彼は理解することができません。なぜなら彼には私の話の背景がわからないからです。

大変なことばかり強調されても、なぜそういう状況なのか、どうしたら改善されるのか、それが彼にはわかりませんでした。

伝わらないイライラで私はさらに腹を立て、また喧嘩する、という繰り返しでした

(こういうパターンの夫婦喧嘩は、ジュリー・デルピーとイーサン・ホーク主演の映画「ビフォア・ミッドナイト」に怖いほど的確に描かれていますので、ご興味がある方はぜひご覧ください。我が家の喧嘩風景を見ているのかと思うほどでした!(笑))

「どうしたら伝わるのか、どうしたらわかってもらえるのか」

そんなふうに冷静に考えられるようになったのは、子どもが3歳を過ぎた頃からです。

夫には論理立てて話さないと分かってもらえない。私の希望や要望をはっきり伝えないと理解してもらえない。

今思えば当たり前のことですが、仕事と子育てであまり余裕のなかった時期は、なかなか難しいことでした。

コミュニケーションのスタイルを変え、はっきりと言葉で希望を伝えるようになってからは、夫婦関係はかなり改善されました。

「何をすれば私が助かるのか」「家庭環境をより心地よくするにはどうしたら良いか」を彼も自主的に考えるようになりました。

やはり家族と言えども、時間をかけてお互いに理解していく努力が必要なのだと実感しました。

今は、子どもが小学校高学年になり、友達との遊びや塾などで不在になることも多くなりました。子どもが不在の時は、夫婦でジムに行ったり、散歩に行ったり、互いの時間を少しずつ過ごせるようになってきました。

散歩しながらふと、

「自分たちにしっくりくる、自分たちならではの夫婦・家族の在り方を、夫と試行錯誤しながら、ゼロから一緒に築いてきたのかな」

と思うことがあります。

今後、子どもが思春期に入り、反抗的になったり、壁にぶち当たることもあると思いますが、そんな時にでも、相談しながら一緒に乗り越えていける夫は、同士のような存在になったような気がします。

今まさに、仕事・育児・家事の両立で悩んでいる方へ

出産・育児を経験する中で、女性が抱え込んでしまう事例をたくさん見てきましたし、私自身も自分の殻に閉じこもっていた時期がありました。

今振り返ると、その時は視野が狭くなっていたのだと思います。

私が出産した11年前には、今のように便利なシッターサービスや、家事代行のサービスが少なく、利用するハードルも高かったのですが、現在はリーズナブルで使い勝手の良いサービスが増えています。我が家もたまに家事代行のサービスを利用しますが、美味しい夕飯を作って頂くだけで気持ちも軽くなるし、家族と過ごす時間も長くなります。

ぜひそのようなアウトソーシングも積極的に取り入れて、全部自分でやらなければいけない! という思い込みや呪縛をできる限り取り払ってください。少しでも余裕ができることで、自分、そして家族の笑顔が増えると思います。

また私の場合は、ストレス解消の一つとして、子どもが1歳を過ぎた頃から、自分が興味のある分野の講座やワークショップなどを、夜間や週末に受けたりしていました。そうすることで自分の視野が広がり、仕事や家庭以外の世界を持つこともでき、ストレス解消につながりました。

今はオンラインの講座もたくさんあるので、より気軽に同じ興味を持つ人たちとつながれる機会も増えているのではないでしょうか。

キャリアも結婚も家庭も、時にバランスを崩しながら、試行錯誤を繰り返して、自分にとって最もしっくりくる形を見つけていく。

私もまだ、その形を模索している最中ですが、その過程そのものを楽しんでいければ、と思っています。

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「バリキャリママは悩みだらけ、それでも前に進む」

今西由加

CURIO Japan株式会社代表取締役社長

上智大学外国語学部卒業後、レコード会社で海外アーティストのマーケティング・PRを担当、その後は複数の外資系企業でオフライン/オンラインのマーケティング事業に幅広く携わり、ビジネス経験を積み上げる。

自身の留学・職業経験から、国内外で活躍できる人材育成の必要性を強く感じるものの、日本での英語偏重グローバル教育に疑問を抱くようになる。国内においては、求めるサービスが見当たらないため、グローバル人材のための新しいサービスを自ら始めるべく起業。HP:https://chezmo.jp/family/

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