現存する伝統医学のなかでは最も古いと言われているアーユルヴェーダは「生命の科学」という意味であり、生命に関する知識を集大成した"生き方の知恵"です。私たちは毎日変化する心の状態に大きく影響されます。気持ちが強すぎたり、偏ったりすることは、アーユルヴェーダでは心(メンタルドーシャ)のバランスの崩れと考えます。
まず、【ドーシャ】とは、自然や人間、すべてを作る5元素(空・風・火・水・地)の組み合わせからなる3つの「病素、増えやすいもの」で、この性質のバランスが心や体の状態を常に変化させており、1日の時間や季節、年齢、個人差、食べ物によって影響します。ドーシャを鎮静させる過ごし方や食事、セルフケアで心身を本来の自然な状態に保つことが健康の増進だと考えます。
(1)ヴァータ
「風」と「空」からなるエネルギー。好奇心旺盛で活発で新しいものや変化を好み、順応性も高く想像力が豊かな特徴ですが、増え過ぎると気分が変わりやすく、衝動的で集中力もなくなります。また、心配や不安から冷えや不眠の傾向となります。
(2)ピッタ
「火」と「水」からなるエネルギー。知的で情熱的、チャレンジ精神にあふれ、機転がきくリーダータイプですが、憎悪すると短気で怒りっぽく、批判的で喧嘩っ早い。完璧主義で見栄っ張りのため、ねたみや嫉妬、衝突、攻撃的になり、イライラからの不眠や暴飲暴食を引き起こします。
(3)カパ
「水」と「地」からなるエネルギー。愛情深く、献身的で穏やかさと寛大さにあふれ、平和主義で粘り強い特徴ですが、増えすぎるとこだわり、執着、落ち込み、自責的になり、自己否定から暗くなり活動意欲も失い、うつ傾向になります。
そして、5元素を作るのは、【トリグナ】...サンスクリット語でトリ=3つの、グナ=性質。心の状態のこと。自我(エゴ)を作りだす精神的な原理。食べるものもこの3つの性質に大きく影響します。
(1)サットヴァ(純粋性)
真理・誠実さ、謙譲さ、愛情や優しさ、正しい知性をもたらすため、健康の基礎となります。進歩的選択をし、心がサットヴァで満ちると純粋な状態になり、すべての性質のバランスが良くなります。自然治癒力(免疫力)があがり、活力に満ちてイキイキとして、肌にツヤが出て、澄んだ声になります。
(2)ラジャス(動性、激性)
権力、地位、支配を好み、選択を強いるようになります。ラジャスが増えると願望や欲求が増えるのが特徴です。増えすぎると、注意力が散漫になったり、躁状態になったりすることもあります。ヴァータとピッタのドーシャが増える要因です。
(3)タマス(暗性、重性、鈍性、惰性)
恐怖、従属、無知、破壊的になり、保守的な選択をします。タマスが増えると心が動かなくなるため、やる気や気力がなくなってしまい、うつ傾向になります。カパが増悪する要因です。
ヨガや呼吸法、瞑想を取り入れることは"自分の心を認める・受け入れる・方向づける"といった静慮が心の毒素を流して浄化し、サットヴァの状態にしていくのです。
また、心の状態は食べ物によっても大きな影響を受けます。ラジャス(激性)な辛すぎる食品、肉類、にんにく、玉ねぎなどは火の性質を高め、攻撃的で怒りっぽくさせます。また、タマス(鈍性)な保存食やレトルト食品は、地のエネルギーが強く、人を怠惰にさせてしまいます。食べ物の持つエネルギーが、心の状態に影響するのです。
毎日をより良く生きるための"人生の健康法"であるアーユルヴェーダの知恵を取り入れて、心身の健康につなげてみませんか。
【参考文献】
「これ1冊できちんとわかるアーユルヴェーダ」西川眞知子 株式会社マイナビ
「癒しのアーユルヴェーダ」佐々木薫 BABジャパン
ライター:Akko(ヨガインストラクター)