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2016年02月27日 15時44分 JST | 更新 2017年02月25日 19時12分 JST

共通項は"子どもの教育"ーー岐阜・岩村から各地へ学びを発信する「農村クリエイティブラボ」

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子どもたちが地域で生まれ、育つなかで、自然や歴史に触れながら学び、成長する。

年齢を重ねて大人になり、異なる地域へ旅立った後、その人なりの知識や経験を身につけて地域へ戻り、同じように生まれ育つ子どもたちに得たものを還元していく。

地域と地域、世代と世代が混ざり合う循環が、自然に行われていけば、地域の暮らしは穏やかに持続していくのではないでしょうか。

岐阜県岩村では「教育」を共通項に、地域内外から人が集い、その土地ならではの学びを得ることが出来る取り組みが始まりました。

教育に深い所縁を持つ岐阜・岩村

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岐阜県・東濃地方の恵那市に位置する岩村は、もともとは、岩村「町」でしたが、2004年に近隣の1市4町1村で合併し、恵那市の一部となりました。

坂本龍馬の師匠である佐久間象山が門下生として仕えた佐藤一斎、実践女子学園の創始者である下田歌子など、日本の教育に大きな影響を与えた人々を生んだ地域です。

城下町としての歴史も持つ岩村は、現在も古い町並みや文化財が残り、「日本一の農村景観」と呼ばれています。

その岩村では、農村のライフスタイルから、食やエネルギー、建築、アートを学ぶ取り組み「農村クリエイティブラボ」がスタートしています。

岩村が持つライフスタイルを学びで発信「農村クリエイティブラボ」

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「農村クリエイティブラボ」を中心になって推し進めるのは、NPO法人「農村景観日本一を守る会」。

所属するメンバーのなかには、日本各地に足を運んで仕事を行うメンバーも多く、岩村の魅力を外部で発信してきました。

彼らは、古民家のリノベーションや、茅葺職人とのワークショップなどを行うなかで、名古屋や東京といった岐阜内外から参加者を集め、岩村で学びを広げる取り組みを行ってきました。

学びの機会を重ね、県外の参加者の反応を見るうちに、岩村が持つ建築や食、ライフスタイルをまとめて発信する「農村クリエイティブラボ」が構想されたそうです。

内部の人、外部の人、両者が交わることで生まれる発見

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第1弾のイベントは、岩村に唯一ある茅葺宿で行われた茅葺屋根のワークショップでした。

茅葺の職人さんを呼んで、茅を刈り、茅葺文化を伝授してもらうワークショップには、NPOのメンバーはもちろんのこと、名古屋から参加した人もいたそうです。

岩村が育んできた文化を直接学べる機会ですが、「実は、岩村の人たちの方が学びは多かったんです」と、「農村クリエイティブラボ」運営者の1人、平林悠基さんは話します。

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平林さん「昔からある茅葺屋根の家は、岩村の人々にとって、新鮮なものではなく、当たり前のものになっていましたが、(茅葺屋根が)どういう構造になっていて、どのように作られているか分かっていなかったんですね。

特に、NPOの70代のメンバーが、『とても学びになった』と言っている姿は印象的でした。」

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講師として岩村を訪れた茅葺職人さんも、岩村のオープンな人柄を褒めてくれたそうです。

平林さん「一緒にご飯を食べたり、話したりしながら、外から来た人と開放的に温かく、交流出来るのは当たり前のことではなく、岩村の魅力の一つなんだと気づきました。

新しいものを取り入れていける地域だからこそ、アートやデザインの視点を取り入れ、『伝統』とミックスしていける土壌を固めていきたいですね。」

「子どもの教育」を共通項につながりが生まれた、平林悠基さんインタビュー

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「農村クリエイティブラボ」についてお話を聞かせてくれた平林悠基さんは、恵那市岩村出身で、現在中学校教員として働いています。

大学在学中にインターネットへの関心を機に、東京のIT系企業でインターンを開始した平林さんは、東京やロンドンのITベンチャーで勤務後、オリンピック選手数名と協同で会社を設立するなど、多様な活動を展開。

海外への関心も同時に持っていた平林さんは「東ティモール」への旅を機に、教育への関心を深め、恵那の豊かな自然を生かしたキャンプやワークショップを子どもたちと行っています。

以前マチノコトで取り上げた恵那の多様な働き方を考えるイベントにも登壇していました。

――岩村で生まれ育った平林さんですが、「農村クリエイティブラボ」の構想は昔からあったのでしょうか。

平林さん「大学生、社会人の頃にはありませんでした。ベンチャーや会社を運営するなかで、教育に行き着き、子どもたちが自然体験を得られる機会が実現できれば、意味のある教育が実現できるのではないかと考えて。

たまたま自分が生まれ育った場所が岩村だったので、岩村で活動を行ううちに、歴史や人柄など、地域独自の魅力が見えてきて、繋がりが生まれていったんです。」

――参加者の世代も幅広く、教育のターゲットを子どもたちから全ての世代へ広げようとする意図も感じられます。

平林さん「大人たちも集まって、子どもの手助けをしたり、一緒に関わったりすることで学びを得ているようです。

学校では学べない自然や環境のことを楽しく学ぶ機会を多く作ることがこれまでの活動のモチベーションでしたが、農村から学べることをもっとみんなで学んでいく形に広がってきましたね。」

――農村クリエイティブラボの参加者に、岩村から持って帰ってほしい学びはありますか。

平林さん「子どもたちの教育のためにと動いてきた結果、各地から岩村に人が出入りするようになり、今までに繋がりを持たなかった人たちとつながって、地域に来てもらって、新しいものを生んだり、岩村で消費をしてもらったりすることが出来るようになりました。

『子どもと建築のリノベーションを考えたいんで手伝ってください』と言うと、子どものためだったらと力を貸してくれる。岩村は小さい町ですが、農村と都市の間で「子ども」を共通項に交流が生まれ、新たな繋がり、学びが生まれていく。

『地域活性化』が目的であれば、この流れは生まれなかったと思います。何か目的があって活性が生まれる。学びを大切にする考え方は、持って帰ってもらいたいですね。」

――「農村クリエイティブラボ」の今後のビジョンを教えてください。

平林さん「子どもの教育が目的なので、岩村で終わることなく、全国、そして世界にいる子供たちのために、事例を広めていきたいと思います。

いろんな地域の子どもたちに合った学びのプログラムを展開していきたいです。」

地の歴史を魅力へと変換し発信する循環

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土地に根付く歴史からプロジェクトを立ち上げ、自らの繋がりから地域の未来を作りだしていく。

生まれ育った環境の可能性を引き出すことは、地域で暮らす子供、そしてまだ魅力を探しだせていない大人たちが、その土地の深みを知るきっかけに繋がります。

「何もない」ように見える場所の資源をどう活用すれば、魅力ある地域へと変化し、その情報が地域内外に発信されていくのか。

「農村クリエイティブラボ」の取り組みは、どの地域でも応用可能な先行事例となりそうです。岩村で始まった学びの循環が、全国各地にどのように広がっていくのか、今後の展開が楽しみですね。

自分の町ではどんな資源が魅力として発信できるのか、考えてみることから、始めてみませんか。

(2016年1月14日の「マチノコト」より一部修正して転載)

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カラー加工された写真で蘇る、明治の農村

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