2015年3月期・第3四半期の決算発表が始まった。昨年4月の消費税率引き上げ、円安進行、原油価格の急落など上場企業を取り巻く経営環境が大きく変化する中、業績上方修正の『常連銘柄』に注目したい。
■上方修正には持続性がある
一般に、上場企業は期初(3月決算の場合は5月中旬まで)に売上高や経常利益など今期の業績予想を公表し、その後も四半期ごとの決算発表などに併せて最新の予想を出す。当然、期初時点の予想よりも増額/減額することがある。
ここで、期初予想は控えめに設定されており、中間決算を発表するタイミングで上方修正される傾向がある。加えて、中間決算時点で上方修正した銘柄のうち、3月期末の実績利益が中間予想を更に上回る「2段階アップ」は実に8割にのぼった。
つまり、業績の上方修正にはモメンタム性(持続性)がある。この様子を示したのが昨年10月6日付けレポート『中間決算の業績上方修正は期末に8割の自信-中間決算から半年先を読む(1)』だ(下方修正にも一定の持続性が見られる)。
■2段階アップ常連企業
個別企業を細かく調べていくと、毎年のように2段階アップを繰り返す『常連企業』がある。図2はこれら常連企業のうち今期も中間時点で上方修正した主な企業だ。例えば、新京成電鉄は過去10期のうち中間時点で上方修正した年が10回あり、その全てで期末実績が中間時点の予想を更に上回った2段階アップ達成率100%の実績をもつ。
自動車部品のヨロズ、自動車関連機器のジェコー、映画などの東映、建設関連商社の丸藤シートパイルも2段階アップ達成率100%だ。神戸製鋼所、デンソー、豊田自動織機など大企業も名を連ねる。他にも為替や市況の影響を受けやすい企業や、地方銀行など業績が下振れしにくい企業が目立つが、いずれも15年3月期の中間決算時点でも上方修正しており、2段階アップがあり得る。
■常連企業の株価は特に長期で良好
2段階アップ常連企業の株価推移をみてみよう。図3は常連企業のうち時価総額上位10銘柄(図2で網掛けした企業)が14年3月期の本決算を発表した前後20営業日の株価推移である(対TOPIX超過収益率の累計値、発表前日=0)。
これを見ると、決算発表の直後にTOPIXを大きく上回った銘柄がある一方で、TOPIXよりも大幅に劣後した銘柄も散見される。
20営業日後の時点でTOPIXを大きく引き離した銘柄は一部に限られるものの、10銘柄のうち8銘柄がTOPIXを上回っており、2段階アップ銘柄の短期的な株価推移はまずまずといったところか。
市場が必ずしもプラスに反応しない理由として考えられるのは、企業発表ベースでは上方修正でも市場コンセンサス対比ではサプライズが無かったこと、発表前の観測記事などで既に株価が織り込み済みなこと、実績と同時に発表した今期予想の影響が大きいこと、などが可能性として挙げられる。
一方、過去10年間ではほとんどの銘柄がTOPIXを上回っており常連企業の勝率は高い。中には年率10%ほどTOPIXを上回った銘柄もある(図4)。
前述のように上方修正の期待が既に株価に織り込まれていないか、過去と違って2段階アップできない異変が起きていないか等の点検は欠かせないが、常連企業の特徴を知っておくと株式の長期投資にも役立つのではないか。
関連レポート
(2015年1月22日「研究員の眼」より転載)
株式会社ニッセイ基礎研究所
金融研究部 主任研究員