日本の休暇制度の大きな特徴の一つとして、「国民の祝日」と呼ばれている、週休日以外の休日が多いことが挙げられる。
2014年5月の改正祝日法によって、2016年から8月11日「山の日」が新たに「国民の祝日」に加わり、祝日数は年間16日、祝日のない月は6月のみとなった。世界最多レベルの祝日数といってよい。月曜日を休日とすることによって土日と合わせた3連休を促進しようとするハッピーマンデー制度も導入されている(1月、7月、9月、10月)。日本以外では週休以外の休日は年間10日程度のところが多い。
しかしながら、こうした苦肉の策の展開にもかかわらず、事態の改善は一向に進まない。
相変わらず年次有給休暇の取得率は半分以下で低迷したまま(2014年48・5%)であり、盆暮れとゴールデンウイークなど特定の時期に休暇取得が集中している傾向も変わらない。結局、小型バカンスと週末プチ連休を「みんなで取れば怖くない」式にちりばめているのが日本の休暇の実情なのである。
今年の夏休みの計画を聞いた青山ハッピー研究所のアンケート調査によれば、休暇日数は「4〜7日」が半数を占め、平均5・5日にしかすぎない。夏休みに「1泊以上」の旅行を計画している人は約2割にとどまる(海外2・4%、国内18・3%)。
長期休みは「掃除・洗濯・睡眠」
「夏休みに、旅行以外で計画していること」を見ると、第1に「家の片づけ・掃除・洗濯する」(35・7%)、第2に「とにかく寝る(睡眠)・ゴロゴロする」(28・5%)、第3に「ショッピングに行く」(22・7%)である。
「家の片づけ・掃除・洗濯」に精を出すことが、他を引き離して1位になるのは、平日には家事に十分な時間を割くことが難しく、普段の週末ではその不足分を補えないからだろう。「とにかく寝る(睡眠)・ゴロゴロ」が2位にくるのも、普段の休息が十分取れないことへの対応と考えれば納得がいく。「ショッピング」が3位につけているのは、「まあ、とりあえずショッピングモールにでも出かけるか」ということかもしれない。
青山ハッピー研究所「今年の夏休みの計画を教えて?」(全国の20歳以上の男女を対象に、2015年7月29日〜8月4日の期間にインターネット調査。有効回答数:688人)
休暇取得に罪悪感、仕事が頭から離れない
もちろん、休暇の過ごし方は人それぞれ。何も旅行ばかりが最高とは限らない。
とはいえ、小型バカンスが普段の家事や休息の時間の不足の補充と、休暇明けの仕事への備えの板挟みになっている可能性がちょっと気になる。
エクスペディア(オンライン・トラベル・エージェンシー)「有給休暇国際比較調査2014」(世界25カ国の18歳以上の有職者男女対象のインターネット調査。有効回答数:7855人)
「有給休暇国際比較調査2014」の調査結果はこの懸念を裏付ける。すなわち、「休暇中も仕事のことが頭から離れない」と答えた人の割合は、日本では飛び抜けて高く(13・0%)、世界平均(5・6%)の倍以上、北欧やフランスの4倍以上に達しているのである。
同調査によれば、日本では「有給休暇を取る際に罪悪感を感じてしまう」人も4人に1人(26%)、調査対象国中第1位の高さとなっている。その理由の第1位に挙げられているのは「人手不足」である。
休み方の改革は働き方の改革と密接不可分である。平日における仕事の在り方を見直すことなしに、連休を増発しても、その効果にはおのずと限界がある。日本の休暇の新時代を展望するためには、仕事と余暇の構造改革に向けて、さらなる一歩を踏み出す必要がありそうだ。
※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年10月号」に掲載されたNPO法人働く文化ネット理事 鈴木不二一氏の記事をWeb用に編集したものです。
鈴木不二一