役所や報道の奥にも潜む、亡国の芽

安保法制の報道姿勢にはおおいに疑問を感じます。噴火も船の転覆も伝染病もそれぞれ大事なことは否定しませんが、大事さの質が違うんじゃないでしょうか?

本記事は、日本労働組合総連合会HPの事務局長のコラム(6月10日)をもとに編集してご紹介しております。詳しくはこちら

~天下の悪法が承認されようとしている~

6月6日の土曜日、一部報道で労働者派遣法改正案が維新の党の妥協により衆議院での採決に進むとの報道が流れました。

書きぶりからして相当裏が取れているような内容です。

あしもと、例の漏れた年金情報のとんでもない問題があり、厚生労働委員会はそちらの対応が当面は優先されていますが、政権与党は維新の党を取り込んで着々と採決の準備を進めているということです。

伝えられるところでは、政権与党は、国民に印象の悪い強行採決はできればしたくない。

労働者派遣法と安保法制と二回もしたくないということです。

どうしても二回しなければならないとすればできるだけタイミングは離したい、そしてそのためにも維新の党を取り込んで、その結果少しでも印象をやわらげることができれば一石二鳥ということなのでしょう。

天下の悪法が、今まさに国民不在の駆け引きのなかで、国会で承認されようとしているのです。

~デマを発する役所が日本には存在する~

国会の審議はとにかく一定の時間さえこなしてしまえば、それまでに疑問点が解明されていようがいまいが採決に移行してしまうという悪弊がありますが、この派遣法の審議もまさにその典型です。

内容がそもそも天下の悪法であるのに加えて、こともあろうに法案の責任元の厚生労働省の官僚がデマ文書をまき散らしたという問題、この一連の経緯とその内容の問題性を明らかにすることなしに、しゃにむに法案を成立に持ち込もうという姿勢自体、非常に悪質な隠ぺい体質をうかがわせるものです。

当初、「怪文書」といわれたいわゆる「10.1問題ペーパー i 」、途中途中でほころびを隠すための修正が行われたために、なんとバージョンが5種類も存在するそうです。

大臣が謝ったからといって済まされる問題ではありません。

配りまくった相手の全ての議員に頭を下げて修正の説明に回るべきです。

そして国会で堂々と最終のバージョンを配って説明すべきです。審議以前の問題です。

法案が成立しなければ大量の失業が発生するとか、訴訟が乱発するだとか、

こともあろうに責任元の官僚がデマゴーグを発する...

どこの国にそんな役所があるというのでしょうか?

~亡国の芽がそこかしこに~

民主・維新・生活の三党が共同提出した「同一労働同一賃金法案」、

私もおおいに期待したものでしたが、前述の報道が正しいとすれば、全く残念なことです。

自民党に骨抜きの修正を持ちかけられ、維新の党が取り込まれてしまったということです。

大半の国民はもう、いわゆる野合にはうんざりなのではないでしょうか?

しかもよりによって与党と野党の野合です。

八方美人には国民の信頼はついてこないと思います。

ところで私は今回、野合の現場にくらいついた報道の力自体は称揚したいと思います。

そもそも派遣法に関しては問題点だらけであり、先に述べたデマ文書の問題を含め、

もっと広範にメディアが取り上げてしかるべきではないかと思っているだけに。

安保法制の取り上げ方にしても、何か、

いろいろあるネタのうちの一つというような報道姿勢にはおおいに疑問を感じます。

報道機関によってその比重の置き方は様々ですが、

何かどこかに政権に遠慮をしなければならない事情でもあるのでしょうか?

噴火も船の転覆も伝染病もそれぞれ大事なことは否定しませんが、

大事さの質が違うんじゃないでしょうか?

なにせほとんどの憲法学者が今回の内容は違憲だと言っているのですから。

私たちも、ネットを含めて積極的に情報を取りに行くことが必要になっています。

将来世代が亡国の憂き目に遭遇しないためにも。(神津)

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