穀物の増産につながるような遺伝子がわかった。コメの粒(種子のサイズ)を大きくする遺伝子を、名古屋大学生物機能開発利用研究センターの芦苅基行(あしかり もとゆき)教授らが見つけた。この遺伝子を活用して育種を進めれば、収量増加につながる可能性がある。人口増加で人類が21世紀に直面する食糧不足を解決するのに道を開く成果として注目される。福井県立大学、神戸大学、理化学研究所、農業生物資源研究所、米カリフォルニア大学との共同研究で、12月23日付の米科学アカデミー紀要オンライン版に発表した。
研究グループは、日本人が食べているジャポニカイネの品種「日本晴」と、東南アジアの人々が食べているインディカイネの品種「カサラス」を材料に遺伝子を調べた。日本晴は植物体が小ぶりで、コメ粒も丸みを帯びている。対照的にカサラスは植物体が大きく、コメも細長い粒型をしている。遺伝学的な手法でコメのサイズを決める遺伝子を探索し、イネの12本ある染色体のうち、カサラスの第6染色体にコメのサイズを制御する遺伝子の存在を見いだした。この遺伝子をGrain Weight 6a(GW6a)と名付けた。
実際に、カサラスのGW6aの領域を日本晴に導入すると、種子のサイズが長く、大きくなった。さらにこの領域をポジショナルクローニングという手法で狭め、GW6a遺伝子を突き止めた。DNAの発現を調節するヒストンをアセチル化する酵素の遺伝子だった。このGW6a遺伝子を日本晴に導入して過剰に発現させると、コメ粒と植物体が大きくなり、逆にその発現を抑制するとコメ粒、植物体ともには小さくなった。
芦苅基行教授は「われわれが見つけたGW6a遺伝子を育種に利用すれば、イネ収量を増加させることが期待される。穂の数を上げる遺伝子や、種子の数を増やす遺伝子などと一緒に既存のイネ品種に導入して、収量が高いイネ品種の育成に取り組んでいる。このイネの遺伝子は、同じイネ科のトウモロコシやコムギなどの主要穀物にも応用できるだろう。人類的な課題である食糧安定供給への突破口にしたい」と研究の意義を強調している。
写真1. 研究に使ったジャポニカイネの日本晴とインディカイネのカサラス、その植物体とコメ粒
写真2. 日本晴と、日本晴にGW6a領域を導入したイネ、カサラスのそれぞれのコメ粒
写真3. 日本晴にGW6a遺伝子を過剰発現させた種子と、発現を抑制した種子
(いずれも提供:名古屋大学)
関連リンク
・名古屋大学 プレスリリース
http://scienceportal.jst.go.jp/news/newsflash_review/newsflash/2015/01/20150106_02.html