化石の中で眼球は真っ先に細菌などで分解されてしまうため、眼の進化に関する実証的な研究には、大きな壁が立ちはだかっている。その状況を変えるような発見が日本でもたらされた。

化石の中で眼球は真っ先に細菌などで分解されてしまうため、眼の進化に関する実証的な研究には、大きな壁が立ちはだかっている。その状況を変えるような発見が日本でもたらされた。米カンザス州で産出した古生代石炭紀後期(約3億年前)の棘魚類のアカントーデス(絶滅した古代魚)の化石に、通常の化石では残らない眼の軟組織が例外的に保存されていることを、熊本大学沿岸域環境科学教育研究センターの田中源吾(たなか げんご)特任准教授と九州大学総合研究博物館の前田晴良(まえだ はるよし)教授らが発見した。

網膜がよく保存されており、電子顕微鏡でその微細構造を詳しく解析でき、色覚があったことを確かめた。脊椎動物の眼の化石としては1億年も前にさかのぼる最古の魚類化石で、眼の進化を探る貴重な物証として注目されている。12月24日付の英オンライン科学誌ネイチャーコミュニケーションズに発表した。この化石の実物や研究成果は2月15日(日)、九州大学箱崎キャンパス(福岡市)にある九州大学総合研究博物館で展示され、発見者の田中源吾特任准教授が午前と午後計3回、解説する。このサイエンストークへの事前の申し込みは不要で、入場無料。

眼の獲得が捕食者を生み,それが爆発的な動物進化を起こしたと考えられており、眼の化石記録は重要である。その眼の化石は、古生代の始まりのカンブリア紀前期(約5億2000万年前)の三葉虫の複眼などが知られている。しかし、軟組織からだけなる脊椎動物の眼の化石はすぐに分解されるため、これまでごく少数の例しか知られていなかった。

研究グループは、眼が残っていないかという視点から、国立科学博物館の魚類化石を調べていて、眼が保存されているアカントーデスの標本を探しだした。電子顕微鏡で観察したところ、網膜の微細構造がよく残っており、色を識別する錐体細胞、明暗を識別する桿体細胞、昼夜ふたつの視覚様式を備えていたことを示す色素のユーメラニンが存在していたことを突き止めた。

前田晴良教授は「この化石の眼は、恐竜が出現する前で、色彩をよく見極める鳥類や、ヒトを除いて色を見分けるのが苦手な哺乳類の眼の出発点になったともいえる。眼、筋肉、皮膚などが残された『例外的に保存の良い化石』は化石鉱脈と呼ばれ、過去の生物や生態系に関する高度な情報を含んでいる。これらのごくまれな化石鉱脈の研究は世界的な潮流のひとつだが、日本では立ち遅れていた。九州大学と熊本大学などが連携して、化石鉱脈に関する日本初の研究拠点が形成されつつあり、今回の成果は、その第一歩になった」と意義を強調している。

関連リンク

・熊本大学 プレスリリース

九州大学 プレスリリース

注目記事