アトピー性皮膚炎など慢性的なかゆみに対し、脳に微弱な電気刺激を与えると抑制効果があることを、自然科学研究機構生理学研究所の研究者たちが確認した。慢性的なかゆみに悩む患者は、患部を過度にかく結果、さらに症状を悪化させることが少なくない。今回効果が確認された方法は、副作用の恐れもないとみられ、新たな治療法として期待できる、と研究者たちは言っている。
生理学研究所の柿木隆介(かきぎ りゅうすけ)教授と中川慧(なかがわ けい)研究員(現広島大学大学院医歯薬保健学研究院助教)らは、治験者の皮膚に化学物質ヒスタミンを浸透させてかゆみを誘発した後、大脳皮質に弱い電気刺激を与える方法を試みた。経頭蓋(がい)直流電気刺激法(tDCS) と呼ばれる方法で、治験者は感覚運動野に電気刺激を与えるため25平方センチの大きさの電極二つを頭に取り付けられる。1ミリアンペアという弱い電流を15分流し続けた結果、電流を流し始めた直後からかゆみの軽減が確認できた。
柿木教授によると、かゆみは痛みと類似の経路を通って脳に到達する。ただし、脳の活動は似ているものの明らかに異なることが、同教授らのこれまでの研究で明らかになっている。経頭蓋(がい)直流電気刺激法(tDCS)が痛みを抑制するという報告はこれまでもあったが、かゆみにも効果があることが確かめられたのは今回が初めて、という。
「電気刺激はほとんど感じない程度の強さで、ある程度、長期間用いても副作用は全くないと思われる。刺激部位を変えることで体のどこのかゆみにも効果が期待できる。アトピー性皮膚炎の患者さんのように、慢性的なかゆみに悩まされている方々に、この治療法を適用することを目指したい」と、柿木教授は話している。
関連リンク
・生理学研究所プレスリリース「非侵襲的大脳皮質刺激によりかゆみ知覚が抑制される~経頭蓋直流電気刺激法(tDCS)を用いた検討」
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