若者の過去・現在・未来

グループとして、女性、農民、企業や産業、科学技術、先住民、NGO、労働者と労働組合、地方自治体、そして子どもと若者の9つが設定された。

持続可能な開発目標(SDGs)って知っている?」僕は、教皇がNYにきたときの話です、というとあーっと返事が返ってくるのでよく使うが、多くは中身を知らない。そして国連から連想することは「政府の間で勝手に決まったもの」だと。

(国連サミットの様子)

んー、そうではないんだ。国連において開発=「それぞれの経済、社会、環境をどうしていくか」の議論になると、世界の大半の国における仕組みよりもより市民が参画できる仕組みになっている。今日はその仕組みを紹介した上で、日本ではどんな仕組みができるべきか、ちょっと一緒に考えていきたい。

1992年の地球サミットのことはご存じだろうか。映画にもなったその人、セヴァンスズキさんがスピーチ(「世界を5分間沈黙させたスピーチ」)をした会議だ。その会議において、政府だけでは何ともできない「経済、社会、そして環境の問題」=開発に対し、幅広い社会の構成員に話し合いに参加してもらうため設立されたのが、メジャーグループであった。社会の"メジャー"(主)な構成員によってできるグループ(集団)である。そのグループとして、女性、農民、企業や産業、科学技術、先住民、NGO、労働者と労働組合、地方自治体、そして子どもと若者の9つが設定された。これらは団体ではなく、関係する団体や個人をまとめ、意見を調整するための国連の仕組みである。

(メジャーグループシステムイメージ)

この「メジャーグループ」の原則のひとつは、「自治(self-organised)」だ。国連は給料を出すわけでもなく、その中で行われることに、決して口をださない。各々誰が理事(Organising Partner)となるかを自ら決め、その人がコーディネーションを務める。あらゆる決定、例えばだれが国連交渉で発言者となるかは、そのグループ内の民主的なプロセスを経て決められる(ことが求められている)。

よく考えればその人が若いことと、その人の意見が若者代表の意見になることとは全く別物である。きちんと事前に相談調整されてこそ全体を代表する意見となる。これは「自治」の重要なポイントのひとつだ。

今後、新しくできた「~世界を変革する~2030アジェンダ」に沿って、日本政府は国家計画を策定していくものと思われる。SDGs(持続可能な開発目標)の17つのゴールをいっせーのせと達成することは厳しいため、そのアジェンダを日本の文脈に置き換え、優先順位を見極め、実際の政策として落とし込んでいく必要があるためだ。その過程で懸念されるのは、「その選ばれた政策は本当に僕らに必要とされているか」ということ。17つのゴールは、経済、社会、環境のあらゆる問題に対応している。

その中で例えば経済のことばかりに焦点がいき、教育が忘れられるようなことがあってはならない。それなら、世界中の声でできた「目標」を日本の様々な立場にいる人々の言葉でもって一緒に「翻訳」していこうじゃないか。その中にはきっと、日本の中だけで議論をしては見つからなかった様々な知見がある。

それらを踏まえながら、どう日本社会をよくしていくかを決めるには、「日本のメジャーグループ」は必要ではないか。政府や一部の団体が好きかってにするのは「翻訳」じゃなくてわがままな「超訳」だ。世界と連帯しながら、女性も、若者も、労働組合も、NGOも一緒に政府の計画策定に参加し、監視し、評価をし、またそれを踏まえて再計画していかなければならない。

今様々なところで素晴らしいイニシアティブが動いている。でもこれらが群雄割拠してしまえば、この「2030アジェンダ」のエッセンスである「誰一人取り残さない」や「包括的なアプローチ」は忘れられてしまう。省庁の縦割りの問題を叫ぶ前に、私たち非政府の団体やグループが縦割りを壊し、主導権争いから共有へ、誰もが加われるプラットフォーム作りをすべきなのかもしれない。そしてその際には、最も資金力のない若者の参画が、その「包摂度」(inclusiveness)を図る指標になるのではなかろうか。

(国連交渉におけるチルドレン&ユースの席)

コーディネーター

小池宏隆

<参考資料>

あなたが持続可能な開発目標について知らない10のこと・・・国連が出したものを日本語にするとともに、少し解説を加えてご紹介します!

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