2020年の東京オリンピックの到来や来日外国人観光客の急増などで、日本のグローバル化が急務となっています。
私は過去数十年間、世界を相手にビジネスをしてきました。
その経験から、日本人ビジネスパーソンが世界で活躍するにあたって身につけるべき資質は、次の5つだと考えています。
- 1.英会話
- 2.内的資質
- 3.外的資質
- 4.魅力あるパーソナリティ
- 5.グローバルに通用するビジネス知識、常識、マナー
1.英会話
私は現在、一橋大学で毎週「グローバル・ビジネス」の英語講義を行っています。講義や質疑応答、プレゼン、そして毎週の宿題もすべて英語です。
私のクラスに在籍する学生のうち、4分の3が中国、タイ、オランダ、イタリアといった外国からの留学生です。
こういった外国人留学生たちと比較すると、悲しいことに日本人学生ははるかに英会話力が低いのが現状です。
日本の学校では、外国の英語教育に比べて、明らかに英会話力育成が十分ではないと感じています。
かといって、英語を「聞き流すだけ」で上達するかといえば、そうもいきません。
これは私自身の英語習得の経験から断言できますが、意味もわからずに聞き流すだけでは、BGMのように、中身をまったく理解しないままに音を聞いているだけです。
英会話力を身につけるために重要なのは、「読む、書く、聴く、話す」と「熟慮して自分の意見を構築する」練習を毎日繰り返すことです。
自分の意見を述べるのは、日本人の最も苦手とすることですが、グローバルなシーンでは、頻繁に意見を求められます。
物事に対して自分はどう思うか、賛成か反対かをよく考え、自分の意見を構築するくせをつけましょう。
2.内的資質
私は17歳の時にアメリカのハイスクールに留学し、1年間で英語を相当学んだつもりでした。
しかし、大学卒業後に英国ソニーで働き始めてから、英語力だけでビジネスはできないことを悟りました。
食事の席やパーティでの雑談では、政治、経済、宗教、倫理、文化、美術、音楽、演劇、ミュージカル、ダンス、日本舞踊、スポーツ、料理など多岐にわたるトピックが話題に上ります。
英語が話せても、会話の中身がなければ、つまらない人間だと見なされてしまいます。
文化、歴史、政治、経済についてちゃんと語れる人の話には人間的厚みが感じられますし、気の利いたジョークも交えると、雰囲気が和みます。
3.外的資質
アメリカのUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のメラビアン教授が提唱した「メラビアンの法則」によれば、人の印象に最も残るのは、「表情」「ボディランゲージ」などの視覚的要素です。
「服装」「笑顔」「好ましいジェスチャー」などを戦略的に利用することで、相手に良い印象を与えることができます。
次に印象に残るのは、「声」「印象に残るしゃべり方」などの聴覚的要素です。
相手の耳に心地良く聞こえるような声と、聞き取りやすい発音が、好印象を残します。
これによって人間関係がスムーズにいくのであれば、利用しない手はありません。
4.魅力あるパーソナリティ
上の3つの要素のほかに肝心なのが、魅力あるパーソナリティを持つことです。
「またぜひ会いたい」「一緒に食事をしてみたい」「ぜひビジネスパートナーになりたい」という印象を相手に与える人格を養いましょう。
あらゆる国の人たちから好かれている有名人の1人といえば、私の友人でもあるヴァージン・グループのリチャード・ブランソン会長です。
カリスマ経営者として常に世界の注目を集めているのはもちろん、大らかで人を惹きつけるキャラクターでも有名です。
5.グローバルに通用するビジネス知識、常識、マナー
グローバル・ビジネスでは、知っておくべきビジネス知識、常識、マナーがあります。
・通貨や世界の株式市場の毎日の動き、金や原油の価格推移、主要国のGDPや経済成長率、国際的取引の決済手段と条件などの「ビジネス知識」
・失礼のない振る舞い方、話し方、TPOに合った服装、気の利いたプレゼントの仕方、スマートな接待方法などの「常識」
・食事の食べ方、会話のトピック、エスコートの仕方・され方などの「マナー」
こうした知識を身につけておくと、どの場面においても自然体で振る舞うことができます。
一枚うわてなビジネス術を身につけ、世界を渡っていきましょう。
【近著】
ビジネスで世界を相手にする人の英語(クロスメディア・ランゲージ 刊)
ビジネスで世界を渡り歩いてきた著者による、生きた英語表現が学べる本。電話やミーティング、雑談、トラブル、アポイント、交渉、注文、クレーム、工場見学、プレゼンテーション、接待など、さまざまな場面でのビジネス英語を学ぶことができる。相手や状況に応じた言い換え表現(アメリカ英語・イギリス英語)や、ビジネススキルに関するコラムなども満載。リチャード・ブランソン(ヴァージン・グループ会長)推薦。