築地市場は円滑に移転できるのか?小池都政が抱える「3つのリスク」

どれも、今後の知事の行動で(少なくともある程度は)ヘッジできるものです。

こんばんは、都議会議員(北区選出)のおときた駿です。

いよいよ本日から新年度がスタートしました。新社会人の皆さまは、新生活おめでとうございます。

都政でも先の定例会で可決された予算の執行が開始されるわけですが、残念ながら本会議・予算特別委員会の議論を通じて「市場移転」に関しては明確な前進が見られず、小池知事は極めて大きなリスクを抱えたまま移転に臨むことになりました。

新年度を迎えるにあたりまして、今日はその主な「リスク」を3つに分けて分析・提示しておきたいと思います。

念のため、予め申し上げておきますと、私は小池知事に失政してほしいとか、そのために市場移転の失敗を煽ろうなどという気持ちは一切ありません(当たり前です)。

以下に指摘する・これまでも指摘してきたリスクは、小池知事がその気になれば今からでも対応可能なものばかりであり、リスクを最小限にするために一刻も早い方針転換を期待・要望するものです。

追加対策工事は無事に成功するか(特に地下水位は下がるか)

現在、地下ピット内の床面・換気施設の増強および、地下水管理システムの機能強化を行うための「追加(安全)対策工事」が進められており、7月末までに完了予定となっています。

すでに現状でも豊洲市場地上部の科学的安全性は保障されており、「99点を100点にする工事」などとも指摘されてきました。

一方で、特に地下水管理システムについては地下水位が予定通り下がっていないことも確かで、中長期的な視点から「やった方が良いものではある」ことから、私自身もこの追加対策工事を行うことには一貫して賛成しています。

ただし大きな問題は、小池知事がこの追加対策工事を「安全宣言」と結びつけてしまっていることです。

都議会の一部会派や市場関係者からの要請にもかかわらず、小池知事は安全宣言を「安全面などの条件が整った段階で(=追加対策工事の完了後)」と頑なに先延ばししています。

もし7月末までの追加対策工事に不備が生じたら、特に地下水位の低減などが見られなかったら、果たして安全宣言は出せるのでしょうか?

その状態で無理やり安全宣言をすれば、「それなら、工事完了前でも出せたではないか!」と矛盾を露呈することになり、移転反対派の声が大きくなることは確実です。

小池知事サイドの思惑としては、先に安全性を認めてしまったら、追加対策工事の必要性が揺らぐことから突っ張ってきたのだと思われます。

その先延ばしが、追加安全対策工事の成否を「過剰に重たいもの」にしていまいました。

安全宣言と、「それでもやった方が良い工事」である追加対策工事は、理論的には両立できるはずですし、今からでも安全宣言を出すことは可能です。

なお昨年の臨時会議において、当時「都民ファーストの会」に所属していた私は知事による「早期の安全宣言」を求める議決に反対しました。

以前にも述べた通りこれは政治判断の誤りであり、改めてその事実を認め、謝罪するものです。

誠に申し訳ございませんでした。

豊洲市場に千客万来施設は整備できるのか

豊洲市場に併設される予定の「千客万来施設」。

事業者側の基本方針への反発から、整備が暗礁に乗り上げている本件については、昨年末に副知事が江東区に赴き「今年度内(2018年3月末)までの決着を目指す」と明言していました

ところが新年度を迎え、未だになんら進展はありません

議会サイドからの度重なる要請を無視し、小池知事はいまだに「事務方任せ」の態度を貫いています。

ここまで政治的にこじれた案件で、トップが出ていかずに話をまとめられると考えている神経は信じがたいものがありますが、これこそが小池知事の性格・政治姿勢なのでしょう...。

原計画では、千客万来施設は着工から完成まで約2年7ヶ月が必要とされていました。

仮に今から着工して超特急で進めたとしても、2020五輪に間に合うかどうかは不透明です。

完成が間に合わなければ、ただでさえ宿泊施設の不足が心配される東京五輪に、暗い影を落とすのは間違いないでしょう。

まして撤退が決まるなどということになれば、地元自治体や地域住民からの強い反発は避けられません。

豊洲「にぎわい施設整備」進展なく打ち切り 東京・江東区議会

市場開設後も、円滑な運営のために地元の理解・協力は必要不可欠なものです。

小池知事の政治生命を左右する案件とも言えるのですが、果たしてその自覚が知事にあるのかどうか。。

一刻も早く、知事自ら行動を起こされることを改めて要望したいと思います。

環状2号線暫定道路・五輪輸送拠点は作れるのか

最後にして最大の懸念が、この3つ目です。

予算特別委員会において私が再三指摘したように、小池知事の「築地は守る」の方針は大きく変節し、「築地に戻るお手伝いをする」という約束は事実上反故にされました。

築地再開発検討会議 「意見まとまるのか?」委員が疑問視

懸念されていた百花繚乱な検討会議も、案の定といった展開になりつつあります。

市場関係者の混乱や怒りは大きく、果たしてすべての事業者が実際に豊洲へと移転してくれるのか、極めて不透明な状態です。

で、先日控室に退院のご挨拶にきてくれた中澤さんとお話したことがすでにTweetされているのですが、移転に際して比較の対象となるのが平成元年に閉場した神田市場のケースです。

予算特別委員会を迎えるにあたってその経過を調査し、改めて当局に公的な資料要求を行って

「神田市場を移転した際の不法占拠者に対する法的措置の経緯について」

としてまとめてもらいました。以下がその資料。

結論から言うと、道路建設や再開発のケースと異なり、立ち退きを拒否する事業者を強制的に退かすこと(強制代執行)はできないようです。

民間事業者と契約を結んで建物・土地を貸している市場のケースでは、民事訴訟を起こしながら地道に説得・係争を続けていくしかないとのこと。

そのため、平成元年に閉場した神田市場跡地からすべての事業者が立ち退いたのは平成3年と、最終的に3年以上の月日が経過しています。

立ち退きを拒否する事業者が、環状2号線上にいたらどうなるでしょうか?

あるいは線上にいないとしても、建設工事には多大な影響が生じることになるでしょう。

五輪車両基地も同様です。一坪地主のように事業者たちが点在する中で、無理くりに車両基地をつくって運営することにもなりかねません。

ただでさえ綱渡りのスケジュールで環状2号線・五輪車両基地建設が進められる中で、これが目下のところ最大の懸念・リスクとなりそうです。

繰り返しになりますが、上記3つのリスクはどれも、今後の知事の行動で(少なくともある程度は)ヘッジできるものです。

築地再開発の方針を抜本的に見直し、築地市場業者に誠実に向き合い、千客万来施設へも自ら足を運べば、状況は劇的に変わるのではないでしょうか。

私は市場移転がスムーズになされることを心より願っていますし、それを行うことが政治判断ミスを続けてきた私の「贖罪」でもあると考えています。

これらへの対応が1つでも前に進むよう、引き続き議会内外から小池都政への働きかけを継続して参ります。

それでは、また明日。

(2018年4月2日おときた駿ブログより転載)

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