クリエイティブ業界といえば、華やかで楽しい半面、深夜残業や長時間労働で有名です。
そんな業界で、時短勤務の「パートさん」を雇うことはできるのでしょうか?
kappaさんというユーザーさんが、この課題にチャレンジした記録をShortNoteでまとめてくださっていたので、紹介いたします。
結論から言うと、
- いろいろと問題山積み
- 日本の労働環境そのものの問題も浮き彫りに
- しかし、工夫すれば可能
です。
kappaさんの場合、最終的には、自分や会社の仕事観すら変えてしまうことにつながりました。
短くまとまっていて読みやすい、とても良いレポートです。
ぜひ元の文章を読んでいただきたのですが、ここではいくつかポイントをピックアップします。
「勤務時間が16時半までの人なんて、戦力にならない」
クリエイティブ業界といえば、夜が遅く長時間勤務が当たり前。
だから、柔軟に勤務時間を変えられないパートさんは戦力にならない、という暗黙の了解があったそうです。
でも、雇おうとしたパートさんは、子育ての関係上、勤務時間が「9時半から16時半」でした。少なくとも18時までは大丈夫だろうとたかをくくっていたkappaさんの戦いが、ここからはじまります。
本当に夕方以降も動ける人じゃないと働けないのか?
kappaさんは、逆に自分たちの働き方を見つめ直します。
自分たちが業界慣習で夜に仕事をしてしまっている部分も多いのではないか?
夜頑張る結果、朝が遅くなり、また仕事が夜にズレ込む......という悪循環も生んでいるのではないだろうか?
朝に重心を移して仕事をすることはできないのだろうか?
色んな働き方が受け入れられていいはずだ
女性で働きたい人だって、バリバリとキャリアを目指したい人ばかりではないだろう。
むしろ、家族を優先しつつ、限られた時間の中で頑張りたいという人の方が多いのではないか。
そういう人たちの能力は、この業界では活用することはできないのだろうか? 何かやり方があるのではないか?
夜に仕事が入ってしまったらどうするのか
パートさんは16時半には帰ってしまう。その後クライアントからの要請などで業務が発生したらどうするのか。
専門学校の一年生を「夜だけアルバイト」で雇うというアイディアで、ほぼ解決。
学生にとってもなかなかないチャンスなので、両者ともにお得な提案だったとのこと。ウィンウィンといえば昔は勝間和代さんでしたが今は一般用語になっているのですかね?
他の社員は納得してくれるのか
毎日夜中まで働く同僚をよそに、16時半に帰るパートさん。
他の社員は納得してくれるのか。士気低下につながらないか。kappaさんは社員へ説明して周ります。
最初は「そんな勤務形態の人に大事な仕事は任せられない」といっていた同僚。でもよくよく話をしていくうちに考え方が変わり、「パートさんだから重要なことを任せられないとしたら、パートさんではなく僕自身の問題かもしれない」と言ってくれたそうです。パラダイム・シフト、素敵です。
国は非正規雇用に冷たい
当初は、人事にかかるコストを、国の助成金に頼ろうとしていたkappaさん。
ところがパートでは助成金が出ないことが判明。kappaさんは三すくみに陥ります。
当初の考えでは、パートさんには毎日来てもらうのだから、それなりの時給で、社会保険にも入ってもらって...と思っていた。でもそれでは会社の負担が大きすぎる。
そして、時給を下げて保険にも入れてとなると、パートさん自身の手取りが少なくなりすぎる。
パートさんが夫の扶養のまま働くなら、出勤日を減らすしかなくなる。
女性が働きやすい職場にするため、社内規定を作り直す
パートさんでも、正社員とあまり変わらない権利が得られるように。
さまざまな事情にあわせて、さまざまな雇用形態をとれるように。
なおかつ、会社のコスト的負担が大きくならないように。
こういったことを実現するため、kappaさんたちは、最終的に社内規程そのものを作り直すに至ったそうです。
ダイバーシティ(多様性とその受け入れ)という言葉がキーワードになって、久しいです。
この重要性は多くの人が認識していると思うのですが、しかし、いざ実施しようとすると、さまざまな壁が立ちふさがるのが実情だと思います(その壁は、現実のものだったり、心理的な障壁だったりします)。
だから「多様性が受け入れられるような社会を願ってやみません」といったコメントをしながらも、実際には自分は従来の働き方や生き方に縛られている、といった人や会社が少なくありません。
「クリエイティブ業界でパートさんを雇う」というのは、今の日本にとってですが、ダイバーシティという問題に真正面から取り組むのにちょうどいいテーマだと思います。
みなさまもぜひ、元の文章(ShortNoteでは「ノート」と読んでいます)を読んでみてください。もしかすると、自分や自分の会社の働き方を見つめ直すきっかけになるかもしれません。