ある日、外を歩いていると、一件のお宅から、2歳になったくらいの男の子とお母さんが出てくるのが見えました。
これからお散歩なんでしょう。
ああ、こもたろがこの位の頃は大変だったなぁ。お散歩に出かけるだけでも一苦労。当時は発達障害なんて考えもみなかったものですから、ただただやんちゃで、この落ち着きのなさも男の子特有のものだと思っていました。
ちょっと油断すると、手を振りほどいて走って行ってしまう。危険予測というものができないものですから、車がきていても全力疾走で道路横断をしようとします。川があれば、飛び込んでいきたくて仕方ありません。
空に風船が飛んでいれば、追いかけて行って取る気満々です。目の前に怖いものがあれば、どこまででも逃げて行ってしまいます。突然、何の前触れもなくダッシュするこもたろ。衝動的に動いてしまうのです。
そんなこもたろの命を守るためにも、迷子防止のハーネス付きリュックは必須アイテムでした。
今は少しずつ、発達障害児へのハーネスの必要性が知られるようになってきましたが、こもたろがもっと小さい頃は世間の目も冷たく、「虐待だ」とか「かわいそう」とか言われたりもしました。
もちろん、このハーネスは最終的なお守り。普段はハーネスを私の手首に巻きつけ、その上でこもたろの手首を掴んでいました。なぜ手首を掴むかというと、手を繋ぐということが難しかったから。こもたろは手を繋いでも、スルスルっとうなぎのように抜けてしまうのです。
これはもう能力としか思えないのですが、こもたろは手を振りほどくことがとても上手でした。力の入れ方というのでしょうか。本当に掴みどころがないのです。なので私は、確実にこもたろを把握できるよう、手首を掴むようにしていました。
先に書いた、一軒家から出てきた親子の話に戻ります。お母さんがお子さんに声をかけていました。
「手をつなぐよ。」
お子さんはスッと手を伸ばし、お母さんの手と繋いでいます。そして穏やかな空気の中、ゆっくりと歩き出した親子。ああ、なんて羨ましいひとときなんだろう。私とこもたろにはなかった時間。
やっぱり比べてしまうんですよね。でもこれはなんていうか、嫉妬とかそういうものではなくて……憧れにも近い感情といいますか。
もしも、私とこもたろがこのような空間に居ることができたのなら、もっと違う接し方をしたのかな。お姉ちゃんも気苦労しなくて済んだのかな。でもそれはあくまで、たらればの話。もちろん、今の母子関係に満足しています。
~続く。
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