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2015年10月02日 01時09分 JST | 更新 2015年10月02日 01時09分 JST

遺伝子検査でつながった謎のアメリカ人と、共通の先祖が見つかった!

博報堂生活総合研究所の酒井です。久しぶりのブログ寄稿となりました。

今回は、以前こちらのブログで寄稿した「遺伝子検査を受けたら謎のアメリカ人から連絡がきた」の続編レポートです。

アメリカの遺伝子検査サービスを利用したところ、そのサービスの一つであるDNA Relatives(親戚検索システム)を利用したアメリカ人の若い男性から「お前、俺の親戚らしいよ!」とメッセージが舞い込んだ、というのが前回寄稿したお話でした。今まで親や親族から教えてもらうしか知る術のなかった血縁関係を、自ら主体的に調べることができるようになった、ということに強い衝撃を受けたことを今でも鮮明に憶えています。

血縁など自分のルーツに関する情報をはじめ、今、これまで知ることのできなかった自分に関する膨大なデータが爆発する時代を私たちは迎えようとしています。2015年はウェアラブル元年と言われていますが、心拍などのバイタルデータを取得するウェアラブル端末や、詳細な行動履歴を記録するライフログアプリの浸透によって、私たちの日々の行動や体調、あるいは感情の動きまで、データ化され、可視化される時代がやってくるのです。

そのような「マイビッグデータ」とでも言うべき新しいデータが、生活者の意識や価値観にどのような変化をもたらし得るのか?という未来予測は、『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)にまとめました。

本の中でも、私自身を実験台にしたテクノロジーの試用や、禅僧・山伏など自己対話のプロへのインタビューなど様々なアプローチを基にして未来予測をしているのですが、今回はそこに入りきらなかったお話です。

謎のアメリカ人と、先祖探しを開始

この遺伝子検査サービスを通して連絡をくれたアメリカ人の男性(仮にDavis君としましょう)と私は、なんとか共通の先祖を見つけようと動きだしました。遺伝子検査サービスによると、私とDavis君は、ひいひいお祖父さん・お祖母さんの世代か、その更にひとつ前の世代で、共通しているご先祖様がいるはずでした。

プロフィールの顔写真を見る限り、Davis君の見た目は白人のようです。遺伝子解析上、私の民族由来は97.5%が日本、1.7%が韓国で、ほぼ100%東アジア由来。ヨーロッパ系の血は全く入っていません。そう彼に伝えると、「僕のお祖母さんは日本人なんだ」とのこと。ほぼ確実に、そのお祖母さんの家系で私と彼は繋がっているはずです。

共通のご先祖様探しで手掛かりにしたのは家系上の名字です。養子縁組などがなければ、私と直系でつながっている男性のご先祖様は全員、酒井姓のはずですが、女性の場合、嫁いでくる前の旧姓があります。母親の旧姓、お祖母さんの旧姓、ひいお祖母さんの旧姓、、、と辿っていけば、共通の先祖が見つかるのではないか?と考えたのです。

彼は彼のお祖母さん、私は両親から、ご先祖様の名字に関する情報を片っ端から集め、共通する名字の人物がいないか、SNSでメッセージを交換しながら時間をかけて探っていきました。

鍵になったのは新潟県魚沼

そうはいっても、Davis君と共通しているのは4~5代前のご先祖様です。一世代を仮に25年とすると、5代前は今から100年前。1915年(大正4年)です。明治維新以降、日本の人口は爆発的に増加しており、兄弟姉妹の数も多かったでしょうから、娘の嫁ぎ先も含めると血縁者は様々な家に分散しているはず。共通のご先祖様を突き止めるのは容易なことではありません。

そこで、もう一つ手掛かりになったのがご先祖様の出身地です。幸い、日本人だったDavis君のお祖母さんもこの話に興味を持ってくれて、ご先祖様の名字以外にも様々な情報を教えて貰いました。Davis君のお祖母さんは新潟県出身で、ご親族の方も新潟県内の方が多い、ということでした。そこで私も、父方、母方のご先祖様の中に、新潟県出身の人がいないかを重点的に探っていきました。

この段階になると、これはもう一種の謎解きです。考えてみれば、自分のご先祖様のことをこれほど詳しく知ろうとしたことは今までありませんでした。共通のご先祖様に繋がること以外にも、今まで知らなかった自分のルーツに関する情報をたくさん知ることができました。私もDavis君も、結構楽しみながら「家系の逆探査」をしていたと思います。

そしてついに、古い戸籍情報を辿ったところ、私の父方の曽祖母が、新潟県魚沼の出身であることを突き止めたのです。早速、曽祖母の旧姓をDavis君に伝え、共通する名字の方がいないかお祖母さんに訊いて貰います。

ついに、共通のご先祖様の写真が送られてきた!

それはちょうど、冒頭でご紹介した新書が出版された翌日のことでした。SNSでDavis君から長いメッセージが入っています。ついに共通すると思われるご先祖様が見つかったのです。しかも写真付きで!

silicon valley us

Davis君から送られてきた写真。右側の方が共通のご先祖様と思われる方です。プライバシー保護のため、モザイク処理を施しております。

彼はわざわざ、お祖母さんから日本の親戚に関する様々な写真や資料を取り寄せて、それらを纏めてくれたのです。私たちの共通のご先祖さまと思われる人達のモノクロ写真が彼から送られてきた時、私はとても強く、奇妙な感動を覚えました。これまで存在すら知らなかった自分と血を分けた人々が遠い昔にアメリカに渡り、そこで新たな家族を築いていた。そして、テクノロジーの力によって、離れていた家系同士が、本当に、再び結びつくことができたのです。

世界を拡げる触媒としての遺伝子

この遺伝子検査サービスで見つかり、実際にコンタクトを取ることができた「親戚」は彼だけではありません。遺伝子検査サービスサイトの世界地図上には、彼を含む私の「親戚」達が世界各国に散らばっています。日本国内でも北は青森から南は沖縄まで。アメリカや中国、台湾でも複数の親戚が見つかりました。それだけでなく遠く離れた東欧のスロベニアにまで、私の親戚は散らばっていたのです。一体どういういきさつがあったのかは知る由もありませんが、世界地図上でしか見たことがない、自分が行ったこともない国にまで、私と僅かばかりでも血のつながった人々が暮らしているのです。気が付くと、私は今まで全く関心のなかったスロベニアの観光スポットを調べ始めていました。

遺伝子上で繋がっていると言っても、普通に暮らしている分には、もちろん私たちは完全に他人です。その人との間にすぐ実際のつながりが生まれるわけでもありません。それでも、暮らしている場所も、国籍も、外見も、自分とはまったく異なる人々が、自分とルーツを同じくしている。この事実は、世界に対して興味や関心のきっかけを生むには十分です。

私のように、見つかった親戚たちと自分のルーツ探しを楽しむ人や、実際に彼らに会いに行くために旅に出る人もいるかもしれません。自分の世界観を拡げてくれる触媒として、遺伝子が機能し始める日がやって来ようとしているのです。

「遺伝的な肖像写真」