今日、原油価格(WTI)が一時75ドルを割れました。
これに関し、「世界の景気が悪いから、原油価格が低迷しているのだ」という説明がありますが、それは正しくありません。
原油価格の低迷は、アメリカにおけるシェールオイルの増産が原因です。
そこで順番を追って説明します。
2000年代の半ばからシェールガスの開発が盛んになりました。
しかしリーマンショックの後、天然ガス価格が崩壊しました。
そこで米国の独立系探索生産会社はシェールガスの油井を止め、比較的値崩れしていないシェールオイルに切り替える戦略に出たのです。
ところが今度はシェールオイルのリグが増え過ぎ、増産による供給過多が起きました。それが今回の原油価格崩壊につながったのです。
ここが誤解されている箇所ですが、実は世界全体で見ると原油の需要と供給のバランスはそれほど崩れていません。
ここ数年の実績を見ても、特に消費は落ち込んでいないのです。
ただアメリカが下のグラフのように原油生産をムチャクチャ増やしたので、輸出できない原油が国内で余ってしまったのです。(現在、アメリカでは付加価値をつけずに原油をそのまま輸出することは原則禁止されています=これはいずれ法案改正される見込みです)
サウジアラビアはこれまで節度ある生産を行ってきましたが、米国のシェールオイル業者を虐め、また電気自動車などの代替燃料への消費者の嗜好のシフトを許さないために、敢えて増産することを決めました。
世界の原油生産に占める米国のシェアはずっと漸減してきたのですが、シェールオイルのブーム以降、逆にシェアUPになっています。
今後のシナリオとしては原油価格が下落するにつれて、だんだんシェールオイルの油井が休止すると考えるのが自然です。油井の少なからぬ部分(50%+)は、長期の下請け契約を結んでいるので、おいそれとはキャンセルできません。
また独立系探索生産会社の多くは「うちは70ドルくらいの原油価格でも楽勝で儲かっているので減産するつもりは無い」と、やせ我慢しています。
これはリーマンショック後に天然ガス価格が崩壊したときのコメントと酷似しています。
その実、すぐにキャンセルできる消耗品に関しては、割高なものをキャンセルし、廉価なものへシフトすることが既に起こっています。その典型例は破砕法の際に使用する樹脂です。
下は割高なポリマーを生産しているカーボ・セラミックス社の株価です。既にボロボロです。
業者は中国などの格安サプライヤーの提供する砂にシフトしているのです。
(文責:広瀬隆雄、Editor in Chief、Market Hack)
(2014年11月14日「Market Hack」より転載)