オリンピックは危険なのか? 1

つい最近、施工会社が大成建設と竹中工務店に決まったかのような報道がなされておりますが、実はこれは決まったとは言いがたい。
時事通信社

実は、華々しく打ち上げられた新国立競技場のコンペによる建築計画は、グダグダでメチャクチャなんだよ、とこの1年いろいろと調べたり方々で多くの人々が発言したりしてきたわけなのですが、

つい最近、施工会社が大成建設と竹中工務店に決まったかのような報道がなされておりますが、実はこれは決まったとは言いがたい。

これについても解説いたしますが、

いまでもまだ、計画案そのもののもそうですが、解体工事の入札の問題とからめて施工会社の問題とか、まだまだ問題山積みなんです。

そういったなかで、ちょっとびっくりしたニュースがあります。

これまでも、さまざまな立場の方からもそういったニュースが出てきていますが、現代美術の作家で会田誠さんという方が、発言されています。

という幻冬舎という出版社が運営するWebサイトなのですが、

一部抜粋すると

「何かいろいろと揉めていることが分かりました。~オリンピックにも建築にもさほど興味のない人間だったので、~どのような建造物を新たに作るプランが出ているのか、特に注意を払ってきませんでした。」

「僕はイデオロギーが激しく対立しているような社会問題に関する署名はたいてい躊躇する「政治びびりタイプ」です。けれど建築や公共空間に関することなら、美術家としてそれなりに重ねた経験を踏まえ、何事かのアピールの一翼を担ってもいいかと考えました。」

「僕はザハ案のデザインや機能面などに特別に反発心があるわけではなく、それを選んだ人々――社会的地位の高い中高年の日本人をある意味代表していると思いますが――の精神構造に大いなる疑問や危惧を感じているのです。それが僕の単なる想像ではない証拠には、彼ら――オリンピック招致委員会――が2012年 に発表した公式メッセージを読めば分かります。」

「オリンピック・パラリンピックは夢をくれる。

そして力をくれる。

経済に力をくれる。

仕事をつくる。

それが未来をつくる。

そして世界の意識をニッポンにつれてきてくれる。

今、それがニッポンには必要だ。

2020年までにあらゆるジャンルのニッポンを復活させるために。

(中略)

このままだとこの国は世界から忘れられてしまうかもしれない。

今何かをしなければ、

この国の未来や子供たちの自信を奪うことになるかもしれない。

誇るべきことを誇るために、

勝つべきものを勝ちとろう。」

感性は人それぞれだから、このポエムみたいなものを読んで感動したり奮い立つ人もいるのでしょうが、僕にはその気持ちはさっぱり分かりません。自分の姿を客観的に見れず、ただ焦燥感に駆られた人間の危険性がひたすら目につくだけです。」

正直、、会田さん芸術家の立場からいえば相当踏み込んだ発言されてるな、勇気あるなと思いました。

というのも、これよりちょうど半年ほど前ですが、同じく現代美術では日本を代表する作家の村上隆さんがこれまた、FaceBookというSNS(ソーシャルネットワーク)を通じ非常に勇気ある発言をされています。2014年6月12日付のフェイスブック村上隆

一部抜粋すると(2014年6月11日)

「最近、ザハハデットの新しい国立競技場の事で、施工費高過ぎるとか、実現不可能とか、建築家の別案とか、リベラル系の連中がもてはやしながらやいやいやっ てるけど、建築大国日本の技術でもって、ザハハデットの詐欺紛いと言われている形状、やってやるぜ、と、何故ならんのかね?」

「超高額な建築費、上等じゃんか!やったる!ってならない風潮が、俺は嫌だね!本質的な国際的な、勝負を放棄して何を売り込むって言うんだよ!って、思うね!かっこ悪いな!安くしたらそれがいいのかよ?ってな!」

「大体、後出しジャンケン的な日本の建築家達のザハハデット案へのカウンター案って、つまりは未来の売り込み、次のオリンピックとかの会場がもしかして、貧 しくつましくやろうとするんだったら、使ってよ、的な売り込みでしょ。そんだけなのに、それを担いで、やれ節約だ、金抑えれるだとか、ものづくりの本質論 とは別次元でチヤホヤ担ぐリベラル風情のいい気な感じ、超アホだな!」

「舛添の見直し案とか喜んでるリベラル風情の連中はクソだな!政治家ごときのシナリオにいちいち乗っかってる己の愚かさを知れってね!

未来を創る芸術には才能と狂気と金が必要なんだ!戦後の日本のちんまい感覚、ホントにダメだろ!ザハハデット案、正面からやりゃいいじゃねーか!やって、リアルマクロスフロンティアの世界観、現出させてみろって思うのだ!」

この、村上隆さんの発言も芸術家としての立場からいえば、ひとつの真理です。

このお二人のご意見は共に同じことを言われているのです。

要は、ザハのデザインとか芸術性を認めるなら、もしくは認めているので、そこんとこはちゃんとやれ!

お偉いさん方はいいかげんなことすんな!

この20年くらいの日本のおっさんはズレまくり!

ここ1年間での私の方々での発言をご存知の方はよくご理解いただけているように、私も基本同じなのです。

村上さんは私のことを「反対することだけが目的のリベラル?ザハ反対者?」とあえて誤解プレイされているようでしたので、その辺も含めて返答しておきましたが、、参照:吠えマスター村上隆に吠えられたんだが

脳科学者として有名な茂木健一郎さんもこの件については早い時期から言及されています。2014年5月30日付のフェイスブックに

抜粋します。

「国立競技場は、どうあるべきか」

「国立競技場をどうするのか、今報じられている未来風のやつにするのか、それとも一部補修で済ませるのか。私は建築コミュニティの中にいるわけではないので、以下に述べることはあくまでも素人の印象であるが、要するにこういうことだろう、と思っていることを述べる。」

「日本の建築は今や世界でもトップで、そのことは、建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞を日本人が連続で受けていたり、ベネツィア建築ビエンナーレで日本チームが最高賞に輝いていることでもわかる。では、日本の建築は、どうして世界一になったのか?」

「近代における建築とは、建築家の作家性、いわば「エゴ」の表現でもあった。いかに独創的で、斬新な意匠を生み出すか。建築家は芸術家であり、革新者でもある。しかし、日本の建築が評価されているのは、そのような文脈においてではない。そこが、日本の建築は新しいのだ。」

「隈健吾さんの「負ける建築」は、つまり、建築を設計するときに、環境や歴史性、文脈に根ざし、建築家の自我を過度に主張しないということ。伊東豊雄さんの建築に見られる優美さ、繊細さもまた、自然との共生、自他の調和を重視してきた日本の連続性の中にある。」

「今回、伊東豊雄さん(ベネツィア建築ビエンナーレの最高賞や、プリツカー賞に輝く、日本を代表する建築家のおひとり)が声を上げられたのは、よほどのことで、控えめで温厚な伊東さんが、敢えてあそこまで言われるのだから、黙っていられないと思われたのであろう。」

「国立競技場の建て替え案のコンペで、現行案がどのような経緯で選ばれたのか、その時の選定理由は何なのか、詳細は把握していないが、以上のような、日本の 建築の流れ(そして、その世界の中での卓越さの理由)を踏まえると、現行案は、あまりにも時代錯誤であるように感じられる。」

「現行案を推しているコミッティーの人たちは、神宮外苑のあの空気の中を、どれくらい歩いているのだろうと思う。近くには、重要文化財に指定されている聖徳 記念絵画館もあり、日本の近代の記憶が何重にも詰まっている。あの空間に、いきなり近未来ヘルメットですか、という違和感。」

「公共建築は、決まったからすすめればいい、と言うにはあまりにも重要で、特に、今回のように日本の建築界の中から強烈なメッセージが出て来ている時には、 真摯に耳を傾けた方がよい。文科省は現行案を強行するつもりかもしれないが、その禍根は数十年にわたるeyesoreとなり復讐する。」

茂木さんも言及されているように、建築のデザイン性や新奇性というものを全面的に否定されているものではない、今回はというか今回においては特に、そういった芸術的価値すらが二次的三次的に扱われ、瞬間の短期的利益を周辺敷地の一部にしかもたらさない。同時にこの件を政治的に利用しようとしたものも死に、あるいは失脚し、脱兎のごとく逃げ、選んだ者らは徹底的に保身に走り、その保身せんがはずの己自身の価値すら圧倒的に減衰せしめつつある。

同時に後世に負担を残すだけでなく、今回のプロセスを看過した暁には必ずもっと大きな文化的にも社会工学的にも禍根を残す可能性があるのです。

だから、互いに賛否両論あるにすれ、根性のある日本の文化人はこの件については思い切って発言しているんです!

といった、状況下に最後の悪あがきが始まりました。

(建設通信新聞 11月3日)

日本スポーツ振興センター(JSC)は10月31日、WTO(世界貿易機関)対象となる新国立競技場新営工事の公募型プロポーザルでスタンド工区は大成建 設、屋根工区は竹中工務店を特定した。契約は、技術協力業務と工事施工を分離。近く、基本協定を締結した上で、実施設計に対して施工者の立場から施工方法 などの提案を行う技術協力業務の委託契約を結ぶ。2015年7月までに工事請負契約し、準備工事、生産計画・調達計画を経て、同年10月の着工を予定して いる。

ああ、やっぱりそうきたか、、、。

えっと、この記事の見出しを読んだだけだと、もしくは専門家でないと、施工業者が決まったんだ、どんどん工事やっていくんだと。

賛否両論、よかったよかった、まずいぞまずいぞ、と思いますよね。

ところがですね、この発表を見る限りにおいては、

なんの解決もしていないのか、、としか思えないんです。

槇先生がもっとも心配されていたことでもあり、僕も、たぶんこういった手を打ってくるんだろうな、、と予想していた内容です。

つづく

(2014年11月2日「建築エコノミスト 森山のブログ」より転載)

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