医療・ヘルスケア情報のキュレーションメディア「WELQ(ウェルク)」の不正確な医療情報や制作体制に端を発した「WELQ問題」の一端がこれで解決するのだろうか。ディー・エヌ・エー(DeNA)は3月13日、この騒動の第三者委員会による調査報告書(全文・要約版)を受領したことに加えて、関係者の処分などを含む今後の体制について発表した。
※これまでの経緯は以下の記事を参考してほしい。
代表は南場・守安両氏の2人体制に、村田マリ氏は辞意を表明
まず先に関係者の処分についてお伝えすると、DeNA代表取締役兼CEOの守安功氏はすでに月額報酬の30%を6カ月間減額すると2016年12月時点に発表しているが、これを月額報酬の50%を6カ月間に減給変更。事業を統括していた執行役員メディア統括部長兼Palette事業推進統括部長の村田マリ氏は、就業規則に基づく処分を行ったことに加えて、3月12日付けで執行役員のほか、子会社iemoとFind Travelの代表取締役を辞任する意向を表明しているという。
またMERYを運営していたペロリ代表取締役の中川綾太郎氏も3月12日付けで代表取締役を辞任した。加えて、執行役員で前経営企画本部長の柴田大介氏、執行役員経営企画本部長の小林賢治氏ほか25人に関しても就業規則に基づく処分を行ったとしている。
加えて、3月13日開催の取締役会において、DeNA創業者で取締役会長の南場智子氏が代表取締役会長兼執行役員となり、代表取締役2人体制でコンプライアンスや管理体制の強化をするとしている。
厳しい第三者委員会の調査報告書
さて肝心の調査報告書だが、要約版でも34ページに渡る内容となっているのでさらにまとめると次の通りだ。委員会は2016年12月から合計26回開催。ヒアリング調査は134回97人に対して実施した。
キュレーション事業の法令上の問題について
- サンプルにしたのは10サイト37万6671件の記事。このうち複製権および翻案権侵害の可能性のある記事は1.9〜5.6%。これらの一部の記事については同時に公衆送信権侵害、同一性保持権侵害、氏名表示権侵害の可能性があった。
- 掲載されていた画像472万4571点のうち72万7643点については、個別許諾されたものもあるが、公衆送信権侵害と氏名表示権侵害の可能性がある。
- WELQの記事19件についての調査では、薬機法(8件)、医療法(1件)、健康増進法(1件)に違反する可能性があった。
キュレーション事業の法令上以外の問題について
- WELQの記事の一部にはセンシティブなテーマを扱う記事にアフィリエイト広告を掲載するのに際し不適切である。また医療に関する記事でユーザーに対する配慮を欠いた内容があったほか、医療に関する記事に医師の間でも見解に相違がある内容を安易に記載しているなど、倫理的にも問題があった。
- またキュレーション事業の10サイトには、文章自体には著作物性が認められないものの、他記事のコピー&ペーストがなされていると考えられるものや、出典が不明瞭で、引用方法として不適切であるものなど、倫理的に問題のある記事が掲載されていた。
- DeNAは、掲載していた記事の画像や文章の無断利用に関するクレームがあった場合、プロバイダ責任制限法の適用が受けられない場合であっても、プラットフォーム提供者としてプロバイダ責任制限法の適用が受けられるかのような対応をしていた。
原因・背景分析
- iemoおよびペロリの買収によりキュレーション事業へと新規参入する段階で、事業に関する分析や議論が尽くされず、事業リスクが適切に把握されなかったこと。
- 両社の買収後、キュレーション事業を開始する際において事業の潜在的なリスクに対する予防策が十分に講じられなかったこと。
- 事業拡大においても、リスクに対するチェックや手当てが十分ではなかっために、リスクが顕在化。問題の早期発見が遅れたこと。
- キュレーション事業においては運営に対する「自己修正」を妨げる要因が複数存在していたこと。
DeNAは本日会見を開催し、本件の詳細を説明する予定だ。TechCrunchでも追ってお伝えしたい。
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(2017年3月13日 TechCrunch日本版「「法令上違反の可能性、倫理的にも問題」DeNAがWELQ問題の第三者委員会の調査報告書を公表」より転載)