ロボットが仕事を奪う時代が来る?ハッカーやクリエイターが集まりベーシックインカムについて考える

アメリカは収入の格差問題、ロボットの台頭により仕事がなくなるという問題に直面しつつある。

アメリカは収入の格差問題、ロボットの台頭により仕事がなくなるという問題に直面しつつある。Y CombinatorのSam Altmanを始め、シリコンバレーの著名人の中には、生活ができる報酬の得られる仕事が足りない場合、全員を対象とした一定のベーシックインカムの給付を支持する考えを表明している。

今週末に開催予定のBasic Income Createathon(ベーシックインカム・クリエイトソン)は、テクノロジーに精通した人、そして、政策やクリエイティブに精通した人を集め、ベーシックインカムを促進する大きな流れを創りだそうとしている。

「この国の全員が仕事をするのは理に適わなくなります。コンピューターやロボットは私たちが現在行っている仕事の大半を担うようになるからです」とJim Pughは言う。彼は、2008年の最初のオバマキャンペーンで仕事をする前、分散ロボティクスで博士号を取得した。「この仮説を受け入れた場合、社会に必要なのは小さな変更を行うことではありません。これは劇的な社会の変化であり、ベーシックインカムはそれに対応するための賢い解決法のように思います」。

ベーシックインカムは社会保障システムに似ていると言えるだろう。全ての市民や住民は、得ている給料の上に一定の金額を無条件で支給される。最低限の収入が確保されても、人々は仕事でお金を得るために、働くモチベーションを持ち続け、価値のあるプロジェクトを遂行するだろうという考えが前提にある。

今回の取り組みが「ハッカソン」ではなく「クリエイトソン」という名前を意図的に付けたのは、技術者ではない人達もこの取り組みに歓迎したいからだとPughは言う。

「私たちはライター、アーティスト、音楽家、動画作家、普段はハッカソンに興味を持たない人たちにも積極的に参加してほしいと考えています」と彼は言う。「アプリの製作に関心がある場合でも、テクノロジー関連のプロジェクトが出てくることを期待しています。ただ、コンテンツの取り組みにも期待しています。参加者は動画製作、作曲、絵画の製作を行うこともあるでしょう。この問題への関心を示したり、アイディアへの賛同を表現する方法はいくらでもあります」。

欧州連合の都市ではいくつかの初期段階の実験が行われている。例えば、ユトレヒトでは住民に「無条件」でいくらかの資金を給付している。他にも、GiveDirectlyといったプログラムは、無条件の資金提供をアフリカ、サハラ砂漠の南の地域で行っている。この取り組みには、Facebookの共同ファウンダーDustin Moskovitと彼の妻のCari Tunaがプログラムの初期の検証の後、2500万ドルの投資を実施している。Pughはアメリカでも、1976年にアラスカ州が原油で得る収益を配当という形で市民に再分配するために設立されたAlaska Permanent Fundの事例があると示す。

クリエイトソンの目的は、全員が受け取るベージックインカムのアイディアを提唱し、より大きな政治的な運動のためのエネルギーを創出することだとPughは言う。そして、アメリカでこのアイディアを検証するための小規模なパイロット検証を進めたい考えだ。

テクノロジー業界の著名人の全員が、これから仕事の数が足りなくなるという見解に同意しているのではない。Marc Andreessenは度々Twitterでこのアイディアを批判している。しかし、影響力のある人物の中には、自動運転車が実用化すれば350万人のトラック運転手が職を失うかもしれないことや、ロボットの機能改善で工場で働く何百万人が職を失うことに懸念を表している。

ただ、この問題を解決するのにベージックインカムが正しい解決法でないと考える人もいる。MITの教授であるAndrew McAfeeは、自動化の普及で持ち上がる問題について「The Second Machine Age」に記している。彼はその中で、全員対象のベーシックインカムを設定するのではなく、給付付き勤労所得税額控除を拡張することが望ましいとしている。それもまた仕事をしているかどうかに関連する施策だ。それはMcAfeeは、人が何かしらの活動をすることを促すシステムが望ましいと考えているからだ。人は意義を感じられないと落ち込んだり、健康被害が生じたりするからだと彼は主張している。

政府からしてみれば、一度提供し始めた権利を廃止することは非常に難しい。恩顧主義的な政治が行われ、労働力の大半が公共セクターの収入に頼っている場合、経済的な状況が大きく変化した時、政府がその支出や権利を変更することはさらに難しくなる。

全員に給付するベーシックインカムを主張する動きは、シリコンバレー、さらにはアメリカ全土における仕事と無条件で得る現金報酬の価値観の根本的な変化を表している。30年以上前、カルフォリニア州知事のロナルド・レーガンはアメリカ大統領選挙のキャンペーンのスピーチで社会保障制度を悪用する子供を持つ母親や女性を批判し当選した。クリントン政権の下では、社会保障制度は労働と結び付けられるようになった。

現代の考え方はその時とはかなり異なる。

仕事のために人は仕事をすべきなのだろうか?生活していくだけの報酬の仕事が多く存在しない時代でも?

「私たちが直面する最大のハードルは、人々は仕事をすべきだというだ根深い固定観念を持っていることです」とPughは指摘する。「無条件にお金をもらうというのは、人々の価値観と真っ向から対立するものなのです」。

(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

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