広告会社が“うまく売る”時代の終焉

"うまく売る"という広告会社の役割は、今後変わっていくかもしれません。
Factelier

私は新卒で広告会社に勤めていましたが、すでに出来上がっている商品の見せ方を考えることがミッションでした。興味を喚起するキャッチコピー、インパクトを与えるビジュアル、PVを増やすための導線設計。広告主を客観的に捉えるからこそ表現できることもありますが、"うまく売る"という側面があったことも事実です。

"うまく売る"という広告会社の役割は、今後変わっていくかもしれません。そのきっかけを感じたのが、『株式会社QUANTUM』と『ケイアンドカンパニー株式会社』のパートナーシップ提携です。

『QUANTUM』は、博報堂グループのスタートアップスタジオ。代表の高松氏は、「生活者が気づいていない課題、あるいはあきらめている課題を解決することこそがイノベーションであると説くネスレ日本の高岡社長兼CEOに共鳴し、高岡さんが代表を務められるもう1つの会社、ケイアンドカンパニーとタッグを組ませていただきたいと考えました」とコメントしています。

一方『ケイアンドカンパニー』の高岡氏は、ネスレ日本でキットカットをはじめとした数多くのヒット商品を仕掛け、近代マーケティングの父と称されている世界的に有名な経営学者・コトラー教授からも認められた、日本を代表するマーケッターです。マーケッターと言っても単に市場調査を行っているわけではなく、市場調査からは知り得ない潜在的な問題の発見とその解決に取り組んでおられます。

■商品の内外を一体化させたイノベーション

今回のパートナーシップ提携は、両社の目指すところが合致し、実現に至りました。意図としては、完成品の売り方を考える従来のスタイルから脱却し、開発段階から商品に関わること。

広告会社はこれまで、「商品の外側」をつくってきました。そこに、『QUANTUM』は「商品の内側」でイノベーションを生んできた高岡氏と共同で、「商品の内外」を一体化させたイノベーションを起こすことが狙いです。

広告会社のグループ企業がものづくりに参画し、表層的でも扇動的でもない、文脈に沿った広告やPRを行うことは、購買の健全性を高める上でプラスになることは間違いありません。今回のパートナーシップ提携は、広告会社が"うまく売る"時代の終焉を予感させます。

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