2016年4月12日、WWFジャパンは、「企業の温暖化対策ランキング」プロジェクトにおける第3弾の報告書を発表しました。今回の調査対象となったのは「食料品」の業種に属する日本企業25社。第一位となったのは、キリンホールディングス(80点)で、日本たばこ産業(70点)、味の素(63点)がこれに続きました。2015年12月の国連会議(COP21)で「パリ協定」が成立したことを受け、今後、企業にも戦略的な温暖化防止の取り組みが求められるようになります。WWFはこれからも、こうしたトップランナー企業の先進的な取り組みが業界全体にも広がるよう、調査と提言を続けていきます。
「食料品」関連企業による温暖化防止の取り組み
今、世界の各地で猛暑や干ばつ、豪雨、台風やハリケーンの大型化など、気候変動(地球温暖化)が原因と考えられる異常気象が深刻になっています。
そうした中、国際社会は、2015年12月にフランスで開催された国連の温暖化防止会議(COP21)で「パリ協定」に合意。
「今世紀後半には温室効果ガス(CO2:二酸化炭素など)の排出量を実質ゼロにする」という大きな目標を持つこの協定が成立したことを受け、今後各国では、政府による政策のみならず、産業界による積極的な取り組みの推進が期待されています。
このような企業の取り組みの現状を調べ促進する試みとして、WWFジャパンでは各業界に属する日本企業の発行する環境報告書やCSR報告書などを基に、各社の温暖化対策を調査。
結果を、「企業の温暖化対策ランキング」としてまとめ発表してきました。
2016年4月12日には、その最新版となる報告書を発表。特に、食料品の生産にかかわる業界の取り組みを評価しました。
この調査と報告は、電気機器業界を対象に2014年8月に発表した第1弾、2015年2月に自動車業界を対象に発表した第2弾に続く第3弾の報告書で、25社の取り組みを評価。
2015年に環境CSR報告書類の発行がなかった江崎グリコを除外し、24社が取り組む温暖化防止の取り組みを調査しました。
食料品業界のトップランナーは?
このランキングでは、温暖化対策の「目標」を設定しているか、そしてその実績を評価・分析しているかと、取り組みの状況や進捗が分かるような情報開示を行なっているかについて、21の指標を設け、評価を行なっています。温暖化対策としての実効性を重視している点が大きな特徴です。
その中でも特に重要な指標は次の7つです。
- 長期的なビジョン
- 削減量の単位
- 省エネルギー目標
- 再生可能エネルギー目標
- 総量削減目標の難易度
- ライフサイクル全体での排出量把握・開示
- 第3者による評価
この結果、上位ランキングの3社は次のようになりました。
第1位のキリンホールディングスは、長期的ビジョンやライフサイクル全体での排出量の開示など4つの指標で満点を獲得。
自社の操業による環境への負荷を大幅に軽減し、バリューチェーン全体のCO2排出量を2050年に半減させる、という目標を掲げており、さらにそれに沿った短期的な目標を設定することで、その実現に取り組むなど、2位以下の企業に大きく差をつける結果となりました。
また3位の味の素については、評価を行なった24社の中で唯一、定量的な再生可能エネルギーの導入自社目標を掲げ、その取り組みを着実に進めています。
省エネの推進と共に、企業に期待される再生可能エネルギーの普及拡大において、こうした取り組みが実際に行なわれている点は、高く評価すべきものといえます。
産業界によるさらなる取り組みを求めて
WWFでは、これまでに3回実施した「企業の温暖化対策ランキング」の中で、計96社の取り組みを評価してきました。
全体の傾向としては、味の素のように再生可能エネルギーの導入目標を掲げる企業は7社にとどまっている一方、再生可能エネルギーの活用に関しては50社が定量的なデータを開示しており、企業にとっても温暖化対策としての再生可能エネルギーの重要性が高まりつつあることがうかがわれます。
また、キリングループは、アサヒビールやサッポロビール、サントリーグループなどと共同配送を実施。
競合する側面を持ちつつも、協働と効率化を進め、輸送時の排出を削減するなど、環境負荷の低減にもつながる取り組みを進めている点が「食料品」にかかわる企業の姿勢として評価すべき点となりました。
日本では、政府による温暖化防止政策が、停滞、後退の様相を呈している一方で、長期的な視点と明確な目標のもと、着実に対策を進めるこうした企業の存在は、国際社会に対する日本の貢献を示すものといえます。
WWFはこれからも、こうしたトップランナー企業の先進的な取り組みが業界全体にも広がるよう、調査と提言を続けていきます。
記者発表資料