不定期でブログを投稿させていただきます、西口洋平と申します。
妻と小学生のこどもを持つ、一般的な37歳男性です。
「ステージ4のがん」であることを除いては。
がんだと宣告されたときに、おぼえた孤独感。仲間がいない。家族のこと、仕事のこと、お金のこと...... 相談できる相手がいない。同じ境遇の人が周りにいない。ほんとにいなかった。
それなら自分で仲間を募るサービスをつくろうと、ネット上のピア(仲間)サポートサービス「キャンサーペアレンツ~こどもをもつがん患者でつながろう~」を、2016年4月に立ち上げました。
子どももいて、地元には親もいる。仕事やお金...... 心配は尽きません。
そんな僕みたいな働き盛り世代で、がんと闘う人たちをサポートしたい。そんな思いから、抗がん剤による治療、副作用と付き合いながら、仕事と並行して、地道に活動を続けています。
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これまでのコラム
取材記事
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2016年6月末での子会社の退職を決めて、上司にその旨を正式に報告した。行く先は親会社であるものの、退職という形をとるため、「退職届」が必要とのことで、初めて退職届を書くことに。
今でもこんな形式ばった書類が必要なのかと驚いたり、何の意味があるのかと感じたりしたことも覚えている。
人事部に持っていけば、中身もチェックもせずに「預かります」と言われ、リアクションがなかったことに消化不良感はあったものの、提出した事実をもって、新たなチャレンジが始まることへのリアル感が大きくなった。
それからは、部署内での発表、引き継ぎ業務、そして、治療、空いた時間で活動のアポイントを入れる、といった時間の使い方となった。
6月末の最終出社日。親会社からの出向・転籍とはいえ、4年半を過ごした会社。
ぼく自身もすごく楽しい時間を過ごせたし、入院による長期の休暇、復帰へのサポート、日々の仕事での気遣い、いろんなところで協力をしてもらえたことは、本当にありがたかった。
その日、東京オフィスのメンバー全員の前で、ぼくにマイクが回ってきた。
会社を去る人に対して、会社が感謝の気持ちを表すための儀式としてスピーチの機会がある。その機会が、こんな自分のわがままで会社を去る人にも与えられて、驚きもあったが、正直うれしかった。
■同僚たちから温かく送り出された日
「去年の2月、がんの告知を受けました。そのときの気持ちは、『が~ん』ですよ!」
そんな切り出しから、ぼくのイメージでは爆笑が巻き起こると思っていたものの、みんなから向けられていたのは、真剣なまなざしだった。それもそうだろう。
元気に仕事をしていた、目の前の彼が、がんだなんて受け入れられないだろう。また、そのことを惜しげもなく話をする彼を見て、目をこすって「本当か? うそだろ!?」と確認をしている人もいたのかもしれない。
一回ではウケなかったので、やろうとしている2つの仕事の話を間に挟みながら、ぼくはもう一回言ってやった。「そのときの気持ちは、『が~ん』ですよ!」オフィスは、優しい笑いに包まれ、拍手が沸き起こった。
プレゼントでもらった「Yohei Tシャツ」を着て、挨拶をしました。
■新たな環境で、自分なりの恩返しが始まった
7月、新たな環境での出発となった。4年半ぶりに戻ってきた感覚。でも、当時、一緒にやっていた人よりも、新しい人が増え、入れ替わりもあったため、どこか浦島太郎状態だった。
初日の朝、所属となる部署での朝礼でのコメント。さすがに緊張した。
知っている人もいるけど、知らない人もいる。雰囲気もわからないし、第一印象で決まるとも思っていたし、どうしようかと考えていたら、まとまらないままその瞬間がくる。
何を言ったかは覚えていないが、まぁ、2度ほど笑いがあったから良しとした。そうして、会社への僕なりの恩返しがスタートを切った。
■「ずっと残るもの」を作りたい
一方、キャンサーペアレンツの活動は、やりたいこと、やらなきゃいけないことが多々あり、時間ができたらいろいろ進めようと考えていたので、早速とりかかる。
一つは、事業アイデアやサービスに対するダメ出しがほしかったので、事業コンテストみたいなものへの応募をすること。探しては、エントリーシートに書いて応募する日々。
そして、会員数を増やすために、お金もなく、広告も打てないので、とにもかくにも様々なメディアへの売り込み。
それらと並行して、現時点で考えられる事業案を持って、一緒に進めてもらえそうな企業へも営業をかけていこうと考えていた。
こうして、2つの仕事が動き出した。仕事の持つ意味を考え直したこと、やりたいと思えたことに出会えたこと、人とのつながりの大切さに気づけたこと。
それらはあたりまえのことかもしれないが、ぼくにとっては雲が晴れたような感覚で、仕事が楽しいと心底思えて、素敵な未来に向かっている感覚があった。
娘からの手紙。いろんなことを感じ、考え、支えてくれている。
いつ来るかわからない「死」のそのときまで、生き抜けるために。そして、ぼくの「死」の先にも、残したモノが残り続けるように、ぼくは死ぬまでチャレンジを続けていく。そう、死ぬまで。
(つづく)
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