新生児育児を夫婦で満喫しよう その7 夫が育児に携わるかは「個人のチョイス」と言える時代は終わります

育児は一人でするものではないということを痛感しました。

私は2016年、長男出産後に前妻を亡くしたため、産後の育児を夫婦で楽しむという経験ができませんでした。

翌年に今の妻と再婚し、2018年4月23日、次男が無事に誕生しました。前妻とは成しえなかった、夫婦の共同育児を今度こそ満喫しようと思います。

シングルファザーとして長男が生まれてから育児に携わり、育児は一人でするものではないということを痛感しました。家族でも友人でも、誰でもいいから、もう一人協力者がいれば、運動にいったり、昼寝ができたり、お出かけがしやすくなったり、トイレに行けたり、悩みが相談できたりと、肉体的にも精神的にも何倍も楽になり、育児が「大変」から「楽しい」に変わります。しかし、今の日本ほど、育児を複数でやるのが難しい国はないのではないでしょうか。

考えられる理由は三つです。まず、妊婦の平均年齢がここ30年で5歳上がりました。私の妻の様に30代後半で第一子を産むなんて珍しくありません。これにより、これまで新生児の育児を支えてきた「おばあちゃん(夫か妻の母)」たちが昔ほど頼れる存在ではなくなってきています。私の母は78歳。残念ながら新生児育児をお願いできる年齢ではありません。そして、妻の母親はすでにがんで他界しています。

次に共働き世帯の増加です。「おばあちゃん」代わりになれる人をいくら探しても、みな働いていて忙しいのです。柔軟に時間が使える専業主婦が周りに減ってきているということは、それだけ育児をお願いできる「近所や親せきのおばさん」も減ってきているということです。

つまり、頼れるのは夫しかいないという状況が増えてくるわけですが、残念ながら、男性の育児休業取得率は2パーセントです(これが三つ目の理由です)。育児や家事に費やす時間も女性の2-3割程度です。出産後1か月は、ママはできるだけ体を動かさず、とにかく休み続けることを推奨されます。しかし、その間の育児と家事を誰がするのでしょうか?「おばあちゃん」も「親戚のおばさん」も「近所のおばさん」も夫にも頼れない場合、誰に頼ったらいいのでしょう?

私の様に、生まれた瞬間から育児に携わりたいと思う男性がいても、社会がそうさせてくれません。次男が生まれた24時間後に病院に会いに行っても、助産師さんから面会時間外を理由に、できるだけ控えるように言われました。妻は4人部屋にいたため、他のママさんが知らない男性が部屋内にいると落ち着かないだろうとのことです。(それはそうですね)ネットを検索すると、産婦人科病棟では面会時間内であっても、夫が3時間以上面会するのは同じ部屋にいる方たちに迷惑だとの声が上がっています。つまり、出産後、妻が大部屋に入院した場合、夫は1日最大で2時間しか、子どもとの面会が許されないということになります。面会時間を最大限使ったとしても6時間です。そんな制約があるのに、わざわざ育児休暇を申請する意味があるのでしょうか?

「たったの6日間だけの話じゃないか?」と言われる方もいるかもしれません。しかし、この6日間はとてもとても大事な6日間です。初産の場合、妻は憔悴しきった上に、右も左もわからない状態で育児をスタートしなければなりません。不安だらけです。私の妻の場合、個室に移った後、私が次男を抱えてソファで昼寝をすることもありましたが、それでも「なんか、誰かが常にいてくれるだけで落ち着いた」とのことです。

そして、この6日間で赤ちゃんは大分成長します。出産直後は次男の腕は真っ白で、まるで宇宙人の様でしたが、それがどんどん肌色に変わり、人間らしくなっていきます。私は毎日病室に行き、3時間は抱っこして、その過程に一緒にいることで愛着が湧きました。勿論、泣くこともありますが、泣き止むまで辛抱強く抱っこし続けることで、さらに愛着が生まれます。妻も私に抱かれて次男が泣き止む様子を見て、「これなら一緒に育児ができそう」と心強く思えたそうです。

高齢出産が増え、共働き世帯が増えていく今こそ、夫が育児に携わらなければ、子育てができない時代に入っていきます。「誰が育児をするかはそれぞれのチョイス」と言える時代は終わります。育児休業取得率を上げることも大事ですが、夫が出産前後から育児に関われるよう、医療制度もそれに応じて変わらなければなりません。

産婦人科病棟をすべて個室にするのは難しいかもしれません。日本よりはるかに出生率が高いフィンランドでは、初産の場合は、個室よりさらに大きい「家族ルーム」に入院できるそうです。そこには夫用のベッドも用意され、家族3人で四六時中過ごすことができます。経産婦の場合は、2-3人部屋に入院しますが、夫と子どもだけが入れる交流室があって、そこは面会時間が設定されていないそうです。どうすれば夫婦が協力し合って育児を楽しいものにできるのか考えていきましょう。とりあえず、私は1か月は仕事はあまり入れずに、妻と子どもに寄り添いたいと思います。