これが社会・経済構造を変える「エダノミクス」だ

前回の私の発信に対しては、「ではお前ならどうするのか?」という趣旨のコメントをいくつかいただきました。そこで、私たちがこれまで進めてきたこと、進めようとしてきたことの一端を説明したいと思います。

前回の私の発信に対しては、「ではお前ならどうするのか?」という趣旨のコメントをいくつかいただきました。そこで、私たちがこれまで進めてきたこと、進めようとしてきたことの一端を説明したいと思います。

基本的に踏まえなければならないことは、人口減少や社会の成熟化という100年単位の変化に社会システムや経済システムを対応させるためには、国民意識の変化にもつながるような広範かつ時間のかかる施策を、地道に積み重ねていく必要があるということです。

たとえばモノが豊富にある社会で消費を活性化させようとすれば、潜在的需要があるのに供給が不足している分野を育てなければなりません。

今、日本で供給が不足しているのは、介護や保育に代表される老後と子育ての安心・快適に関連する分野です。民主党政権では、サービス付き高齢者向け住宅や民間学童保育など、民間の活力を生かして先行できる分野について、支援を強化してきましたが、そもそもこれらの分野は、そのコアとなるサービスが公的に供給されるという特徴があります。コアの部分がしっかり確保されることで、将来不安が小さくなり消費性向を強めることにつながりますし、その周辺により質の高い民間サービスが広がっていく余地が大きくなります。こうした視点から、公的介護や公的保育の拡充など、社会保障関連費の抑制方針を改め、公共事業予算などを振り替えてきました(公共事業費を3割強削減し社会保障費を16%増)。

また、公的社会保障については、財源の確保と同時進行で進めなければなりません。この観点から、潜在的需要の大きい社会保障分野を安定的な財源で拡充し、さらに民間の活力を引き出すところまでつなげていく手段として、消費増税は、中長期的には経済の活性化に資すると考えています。

輸出関連では、特に経済産業大臣在任中、中小企業の潜在力を引き出し、海外展開を支援する政策を強化してきました。規格大量生産分野は新興国でも後追いがしやすく、厳しい価格競争にさらされます。圧倒的に人件費の安い新興国と価格競争で勝とうとすれば、賃金デフレはとまりません。しかし、モノづくり分野を含めて、需要に柔軟に対応した少量多品種分野やサービス分野は、日本の潜在力が生かされます。クール・ジャパンに象徴されるサービス分野や少量多品種分野の多くは、中小企業に大きな潜在力があります。そのため、外国語や外国の制度についての知的支援や、海外見本市出展支援などの強化を強力に進めてきましたが、まだまだ緒についたばかりです。

二例だけあげましたが、これだけで経済が劇的に変化するわけではありません。しかし、こうした遠回りに思える施策や、一つひとつの成果は小さくみえる施策を百、千と、三年、五年、十年とかけて、地道に積み重ねていく中で、徐々に社会・経済構造が変化していくのだと思います。

第一次民主党政権の最大の反省・教訓のひとつは、政権が代わればすべてがすぐに劇的に良くなるという過大な期待を、国民の皆さんに与えてしまったことです。だからこそ、今の日本を立ち直させるためには、時間をかけて小さく見えることをコツコツ積み重ねていくことが必要であることを、逃げずにしっかりと伝えていかなければならないと考えています。

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