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2018年10月19日 11時54分 JST | 更新 2018年10月19日 11時54分 JST

なぜ、日本の高齢者施設は「音楽療法」ではなく「音楽レクリエーション」を求めるのか?

アメリカで多くの老人ホームを訪れました。レクセラピストがいないホームを見たことはありません。

person playing upright piano in sephia photography

https://unsplash.com/photos/6JcFz_34qUM
Cristina Gottardi
person playing upright piano in sephia photography https://unsplash.com/photos/6JcFz_34qUM

先日の記事では、「音楽療法」と「音楽レク」の違いについて書きました。国内の高齢者施設で活動している多くの音楽療法士たちは、「音楽療法をしているつもりが、音楽レクリエーションになってしまっている......」という悩みを抱えています。

「大人数のグループだと、クライエント(対象者)に何が起こっているかわからない」

と彼女たち(彼ら)は言います。

中には、小さいグループでセッションができないか施設側に相談した人もいます。例えば、45人のグループセッションを90分行う代わりに、参加者を3つのグループに分け、セッションを30分ずつ行うのはどうか。そうすることで、クライエントセンタード(対象者中心)で治療目的に焦点を置いたセッションができるようになります。ただ、施設側の反応が良くない場合もあるようです。

「これまで通り、大きいグループでやって欲しいと言われた......」

という話も聞きます。

施設側の反応にはさまざまな理由があるでしょう。まず、大きいグループで1回行った方が、小さいグループで何度も行うよりも効率がいい、と考える人もいるでしょう。また、施設側が「音楽療法」と「音楽レク」の違いを理解していない可能性もあります。いずれにしてもこのような場合、施設側に音楽療法について説明することが大切です。

また、もうひとつ考えられることは、施設側が求めていることがそもそも「音楽療法」ではなく「音楽レク」なのかもしれない、ということです。

私がこれまで各地の高齢者施設を訪問した際に感じたことは、レクリエーションがもっと必要だということです。認知症の人たちが、ただただリビングルームに座っている光景を見て驚きました。高齢者の機能レベルを維持し、生活の質を高めるためには、社会的な交流が必要です。

アメリカの老人ホームやデイサービスには、 "レクリエーション・セラピスト(略して「レクセラピスト」"と呼ばれる人がいます。ときには、 "アクティビティ・セラピスト"と呼ばれることもあります。彼らの仕事は、利用者へのレクリエーションを提供することです。レクセラピストは大学で学び、Certified Therapeutic Recreation Specialist(CTRS)という資格を持っています。

私はアメリカで多くの老人ホームを訪れました。高級なホームやそうでない所などいろいろありますが、レクセラピストがいないホームを見たことはありません。レクリエーションは一部の人のための「贅沢」ではなく、高齢者ケアにおいて欠かせないことだと認識されているからです。

日本の場合、レクセラピストのような人がいるケースは稀で、大抵の場合は介護職員が交代でレクを提供している所が多いと思います。しかし、人手もリソースも足りない中で充実したレクを提供するのは困難です。そのため、施設はレクリエーション活動を提供する人を探しているのだと思います。

このような状況を考えたとき、なぜ高齢者施設が「音楽療法」ではなく、「音楽レク」を求めているのか想像できます。高齢者ケアにおいて、音楽療法はレクの代わり(instead of)になるものではなく、レクに加えて(in addition to)行うものだと思います。

皆さんはどう思いますか? 高齢者ケアに携わっている方、音楽療法士の皆さん、ぜひご意見をお聞かせください。

【関連記事】

研究結果からみる「音楽療法」と「音楽レク」の違いとは?

(2018年10月17日「佐藤由美子の音楽療法日記」より転載)

佐藤由美子(さとう・ゆみこ)

ホスピス緩和ケアを専門とする米国認定音楽療法士。バージニア州立ラッドフォード大学大学院を卒業後、アメリカと日本のホスピスで音楽療法を実践。著書に『ラスト・ソング』『死に逝く人は何を想うのか』。 

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