G8サミットが、17日から北アイルランドで開催されている。特に、長引くシリア内戦に対する各国の対応と、不安定な世界経済が重要な議題として注目を浴びているようだ。
主催国の英国は、5月の主要7ヶ国首脳会議(G7)の際には「金融市場が安定し、いくつかの国で経済回復がみられるようになってきたタイミングでG8を開催できる」と述べ、G8ではより安定した世界経済のために「貿易、税、透明性の『3T』(Trade, Tax, Transparancy)」を主要議題とすると語っていた。しかし、わずか1カ月で世界情勢は予想外の変化を見せており、焦点となるポイントも変わってきたようだ。
海外各紙はそれぞれの課題についてまとめている。
【シリア内戦をめぐり米露に軋轢も】
世界的に緊張が高まるシリア内戦への対応に関しては、G8参加国の中でも特に米国とロシアの対立が加熱してきているようだ。
米国が反体制派への武器支援を決定するなどしたことを受け、ロシアが猛烈な非難を浴びせたとウォール・ストリート・ジャーナル紙は取り上げている。ロシアは、反体制派のリーダーが死んだ兵士の内蔵を食べたと報じられたことを暗に指しながら、「こうした連中」を支援することは、欧米が喧伝している人道的な価値と矛盾していると批判しているという。ロシアとしては、アサド政権が正統だと国際的に認知されている限り、彼らを支援することは国際法に違反していないと強調し、その姿勢を貫き通す意向を示している。
一方米国では、武器と弾薬以上の支援でより深い関与をすべきだとする超党派の意見が強まっているという。反体制派を訓練し、装備を提供するために、飛行禁止区域の設定も検討中のようだ。
オバマ大統領とプーチン大統領は、G8とは別途、会談を行っていくという。
【世界経済についての議題が最優先に】
イギリスが本腰を入れようとしていた、「タックスヘイブン」を利用した脱税問題へのテコ入れよりも、まずは低迷する世界経済について話し合う必要があるとフィナンシャル・タイムズ紙は報じている。
中でも、経済に急激な影響を及ぼしている日本の「アベノミクス」が注目されているようだ。安倍首相は14日に閣議決定したばかりの成長戦略「第三の矢」に関する講演などを行った。各国による理解を求めながら、日本経済の回復が世界経済に貢献することを訴求し、投資を呼びかけたい考えだ。
ただし、各国投資家らの関心は、最近の急激な経済回復が、一過性ではなく持続可能なものかどうかだと同紙は報じている。アベノミクスが打ち出した「矢」の1本目(金融政策)と2本目(財政政策)は即効性があったものの、3本目はそうもいかないだろうとの辛口な予測をしている。
一方で、英国が自国領での率先垂範を行うと意気込んでいた脱税・租税回避対策は後回しになりそうだとガーディアン紙は報じている。国際ルールの制定に向けて、G8開催中に、経済協力開発機構(OECD)のモデル租税条約に署名を求める予定だったが、タックスヘイブンが多い自国領の中でさえ署名集めが難航することが予測されている。
決定的な動きは期待できないとされているものの、首脳会議で議題に挙がっただけでも評価に値すると同紙は報じている。
しかし、次回のG8主催国であるロシアの関心は低いため、ドイツが主催する2015年まで先延ばしになりそうだという。
また貿易に関しては、環太平洋経済連携協定(TPP)や各国の自由貿易協定(FTA)、世界貿易機構(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)の進展が注目されている。
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