自民圧勝が逆に制約?TPPなど規制緩和を前に「族議員」の動きはどうなるか?
参院選で自民党が圧勝したことで、規制緩和などに対する利益団体の動きに注目が集まっている。参議院は、さまざまな利益団体の利害を代表した政治家(いわゆる族議員)が多く、今回も多数当選している。これまで自民党は、参院で過半数を取れない、いわゆる「ねじれ」解消を最優先し、抵抗勢力とレッテルを貼られやすい族議員の活動を自制してきた面がある。自民優勢という声が大きくなる中で、選挙後は反TPPなど利益団体の活動が一気に顕在するとの見方が多くなっていた。
だが自民圧勝という今回の選挙結果を受けて、いわゆる族議員が逆に活動しにくくなったという声もある。
前回の衆院選ではTPPに対して慎重、あるいは反対を掲げ、農協などの支援を受けて当選した自民党議員は多い。自民党がTPPへの交渉参加を正式に決定したことから農協はこれに反発、一部ではTPPに反対する候補者であれば、どの政党でも支援する構えを見せた。
選挙の結果は、今回の選挙で自民党は31ある1人区のうち、岩手と沖縄を除く29の選挙区で議席を確保するという圧勝ぶり。TPP交渉参加も含めて自民党は国民から信任されたことになってしまい、逆に利益団体が動きにくい雰囲気を作り出している。
また安倍政権が長期政権となる可能性が高くなってきたことから、利益団体側もあまり強く出られないという側面もある。比例区には、羽生田俊氏(日本医師会)、山田俊男氏(農協)、柘植芳文氏(郵便局)など、多くの族議員が当選している。だが、医師会や特定郵便局長会は民主党への政権交代や郵政民営化をめぐって、必ずしも自民党と一体だったわけではない。あまり強い要望を出しすぎると、政権側から規制緩和を一気に進めるという「脅し」をかけられる可能性もある。
安倍政権はこれまで、無党派層向けには規制緩和を推進する改革派のイメージを強調し、組織票に対しては保守的な方向性を強調するという、二つの顔を使い分けていた。だが今後は首相が本当はどちらを向いているのか明らかにする必要が出てくる。成長戦略で規制緩和を重視するのだとすると、それが進展しない場合の責任はすべて首相自身にかかってくる。
一方利益団体の側も、もし自らの主張が通らないのだとすると、その後は金銭的な面での交渉ということになる。8月には来年度予算編成が始まる。予算をにらみながらの駆け引きがすでに始まっている。
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